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7.2つ目の魔法

 せっかく魔法を覚えたので練習しようかと思ったけど、その必要はないと言われた。

魔法は、一度でも成功させられれば体に定着して、それ以降自由に扱えるようになるらしい。


それより次の魔法を覚えなさい、と母は言ってきたので、そうすることにした。

着火の魔法『ピアフレイ』に続いて教わることになったのは、『ソロファイア』という魔法だ。


 これは火球を撃ち出す魔法で、名前の通り攻撃に使う。

最初に母がやってみせてくれたけど、いかにも「ファイアーボール」という見た目だった。


詠唱と共に、手のひらにすっぽり収まるくらいの大きさの赤い火球が飛び出した。

今回も的は薪だったが、火球が直撃するとキャンプファイヤーのように燃え上がった。



 もちろん、私もやってみる。

さっきのピアフレイと同様、手のひらに魔力を込め、そこに火球を出現させて的に飛ばすイメージで詠唱した。

「『ソロファイア』」


私の手のひらにも火球が現れ、薪に向かってまっすぐに飛んでいった。

薪は大きく燃え上がる・・・かと思いきや、火球が弾けた後に、小さく燃えただけだった。


それは、焚き火の火よりちょっと小さいくらいの火だった。


「ああ・・・」

 母の時とは大きく違う結果に、私は残念な気持ちになった。

でも、母は何も残念じゃない、と言うように、

「上出来よ。ちゃんと火球を飛ばせたんだから、文句ないわ」

と言った。


「やっぱり、母さんはすごい・・・」


「あら、勘違いしてない?私とあなたは同じ魔法を使った。結果として現れた違いは、単なる保有魔力によるもの」


「・・・そっか、そうだった」


 保有魔力とは、個人の現在の魔力上限。

この世界では同じ魔法でも、持っている魔力の上限が高い者が唱えた方が効果が上がるらしい。


それを考えると、母は私より遥かに強大な魔力を持つ「最強」の魔女だから、今の結果は当然と言える。


 ちなみに母の保有魔力は10万だ。

これは私の1000倍であり、現時点でのこの世界の魔法使いの最大値でもあるらしい。


「火球を撃ち出す攻撃魔法はいくつかあるんだけど、今の魔法、『ソロファイア』はその中で最も基本的なもの。

基礎威力は劣るけど、消費する魔力は一番少ない。さっきのピアフレイと同等、50しか使わないわ」


 今の魔法とピアフレイ、同じ消費魔力なのか。

というか、確か私の今の魔力は100。ということは、もう魔力切れか。


実際火球を飛ばしてから、魔力が体からきれいに消えたような感じがする。

さっきまで体を流れていたものが、流れなくなっているのを感じる。


「でも、母さん。わたしもう・・・」


「わかってる。今日はこれで終わりにしましょう」


「・・・はあい」


 基本の魔法1回で魔力の半分を使うとは。

基礎魔力の数値が100、ということの重みが身にしみてきた。


もちろん、これから少しずつ上げていくことは出来るんだろうけど、そこまでがちょっと大変そうだ。




 翌日、私は朝食の前に台所に呼ばれた。

いつもは、私が起きる頃にはすでに母が朝食を作ってくれているのだけど、今日はかまどに火が入ってすらいない。


どうしたの?と聞いたら、昨日教えた魔法のテストをすると言われた。

「この薪に、火を点けてみなさい」

そういうことか。


 私はかまどの中に並べられた薪に手を向け、「ピアフレイ」を唱えた。

すると薪に火がつき、たちまち大きくなった。


「・・・これでいい?」


「ええ、オーケーよ。

昨日教えた『ピアフレイ』は、着火の魔法。日常生活のこういう場面で、使うことができるの。覚えておいてね」


「はい。・・・もしかして、こういう時って火球の魔法でもいいの?」


「よくわかったわね。距離がある時なんかは、『ソロファイア』の方がいいこともある。このことも、覚えておきなさい」


「はい」


 その後、せっかくだから母の手伝いをした。

何気に料理を手伝うのは転生後初めてだった。水汲みや庭掃除なら、やったことがあったが。


出来上がったのは、豆と肉とトマトのスープ。

それと、サラダとバターとパン。

今さらだけど、いかにも異世界っぽい朝食だ。


 そういえば、これらのパンや肉はどこで調達してきているのだろう。


トマトや芋類などの野菜類はなるべく畑で育て、水は近くの川から汲んできているのは知っている。

でも食卓に並ぶのは、それらで取れる食べ物だけではない。


 この際聞いてみたのだが、母は普段パンや魚、肉はマイフの市場というところで買っているらしい。

そして、月に一度、この国の中央王城ことレフェ城に行った時にお金をもらっているらしい。


というのは、母はこの「レフェ」の国全体に特殊な結界を張っており、それで国を守っているのだという。

そしてその見返りとして、毎月お金をもらっているのだそうだ。


「でも、どうして国を守る必要があるの?」


「周りの国の悪い人たちが、レフェに入ろうとしてくるかもしれないからよ」


「入られたことあるの?」

 すると、母は言葉を切った。


「・・・これで終わりにしましょう。この話は、まだあなたには早い。

それより、早く食べてしまって。今日は、回復の魔法を教えるわ」


 魔法、と聞いたら、自然と食べる速度が早くなった。


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