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城下町へ ②

「町でオレの知り合いに会うかもしれません。それで、優愛さまのことを聞かれたら「親戚」と答えても良いでしょうか?」


町へ出る前に、アルツィードさんと軽く打ち合わせをすることになった


お金の使い方は前もって陛下とシスツィーアさんが教えてくれたし、なんならお小遣いだってもらってる。


だから、もしはぐれたらこの家に戻ってくるようにとか、そんな簡単なこと


「大丈夫です。えっと、そのあたりはお任せします」

「ありがとうございます。では、あとは」


今日はお祭りみたいに賑やかだから、まずは屋台をのぞきながら町を案内してもらって、アルツィードさんおススメのお店で、ちょっと遅めのランチを食べようってことになった。


(せっかくだから、シスツィーアさんにお土産買っていこうかな)


お金を入れたお財布と一緒に、可愛いコトリの刺しゅう入りポシェットも貰って、それはシスツィーアさんの手作りって聞いた。


陛下からもらったお金だけどなにかお礼をしたいし、それに、今日すぐに知り合いを作るのは無理でも、お土産選びをしていれば店員さんとも話すきっかけになるしね


(それなら陛下にも買って行かないといけないよね。それに、レオンさんとリオン)


そこまで考えて


(そういえば・・・・・・・・)


「アルツィードさん、レオンさんの護衛は良かったんですか?」


陛下と話をしてからレオンさんと何回か会ったけれど、今日のことを話したのはつい昨日の事


反対されることはないと思ったけれど、レオンさんじゃなくて陛下に相談して決めたことがなんだか後ろめたくて、言い出しにくかったのだ。


レオンさんは当然知っていて、だけど、穏やかに笑いながら「気を付けて楽しんでおいで」としか言われなかった。


いつもと変わらないレオンさんの態度にほっとしながらも、それもそれで、なんだかチクリと心が痛んでしまって


(自分の護衛さんがいなくなるんだから、迷惑かけたよね)


もっと早くに話せばよかったかなと、軽く自己嫌悪しながら尋ねると


「もともとレオリード殿下の護衛というわけではないので、問題ありません」


あっさりとアルツィードさんは首を横に振る。


でも、レオンさんとのお茶のときには必ず一緒にいたけど?と、わたしが首を傾げると


「レオリード殿下には決まった護衛騎士はおりません。ある程度は同じ者が護衛にはつきますが」

「そうなんですか?」

「はい」


アルツィードさんによれば、そもそもレオンさんは護衛を付けたくないタイプで、書類仕事をサポートしてくれる文官さんも、定期的に入れ替えてるそう


「ですので、優愛さまがお気になさる必要はありません」

「わかりました」


ちょっとほっとすると、アルツィードさんも小さく笑って


「他になければ、そろそろ行きましょう」


アルツィードさんが立ち上がるのに合わせて、わたしも立ち上がってポシェットを掛けて


「そうだ!あの、ちょっと聞いても良いですか?」

「なんでしょうか?」

「あの、「優愛」って言いにくいですか?」


(アルツィードさん、なんだか言いにくそうなんだよね)


ルリさんたちは「優愛さま」と自然に呼ぶから気にしたことなかったけれど、アルツィードさんはなんだか言いにくそうにしていたことを思い出す。


アルツィードさんは虚を突かれた顔をしたあと、気まずそうに


「その、オレが・・・・・・申し訳ありません」

「あ!全然気にしないでください!むしろ、これから町へ行くんですから、呼び捨てで大丈夫です。ただ、アルツィードさんたちと名前の系統?が違うし、ここでは珍しいのかなって。その、街に出たとき目立つのもちょっと、だし」


町中で「さま」付けで呼ばれるのは遠慮したいし、「優愛」が目立つ名前なら偽名?を考えた方が良いかもしれない


アルツィードさんはちょっと考えたあと


「たしかに、聞き慣れない名前です。愛称ならいるかもしれませんが」

「やっぱり!えっと、別に偽名?を考えた方が良いでしょうか?」

「そうですね・・・・・・・・」


なるべくなら町の人たちに溶け込みたいというわたしの思いが伝わったのか、アルツィードさんはさっきよりも長い時間考えて


「いえ。下手に偽名を使って、咄嗟のときに判断が遅れてはいけません。本名は別にあって「優愛」は愛称とした方が良いでしょう」

「わかりました。えっと、どんな名前なら大丈夫ですか?」

「・・・・・・・・・・ユスティーアはどうでしょう?それなら愛称が「ユア」でもおかしくはないかと」

「良いですね!それならアルツィードさんとなんとなく似てますし、親戚って感じが出ます。そうしましょう!」


ポンっと手を叩いて賛成すると、アルツィードさんもほっとしたように笑ってくれて


「敬語もやめてくださいね」


アルツィードさんを見上げてお願いすると、少し困ったようにしながらも「わかりました」と頷いて


「では、いきま・・・・・・行くぞ、優愛」


そう言って、わたしたちは町へ繰り出した。


最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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