学園初日
「初めまして、優愛と申します。よろしくお願いいたします」
「正式な発表はまだだが、彼女は王家の客人だ。扱いとしては王族と変わらない。肝に銘じておいてくれ」
学園初日
授業が始まる少し前、ちょっとだけ先生に時間をもらって挨拶をする。
今回は淑女の礼の簡略バージョン
制服とドレスはスカート丈が違うから、お辞儀の角度が微妙に違うのだ。
間違えないように、指先までぴんと伸ばして優雅に見えるように気を付けて顔を上げると、隣にいてくれたリオンが言葉を添えてくれる。
「「かしこまりました」」
それまでは椅子に座っていた、今日からクラスメイトになる人たちが一斉に応えて、ピリッとした緊張が流れるけど
「とは言え、仰々しいのは彼女も望んでいない。節度を持って友人関係を築いてくれ」
ふっとリオンが微笑んで言うと、クラスの空気も緩んでみんなが頷く
挨拶はそれで終わり、リオンに案内されて一番後ろの列の用意された席に着くと、さっそく授業が始まる。
一時間目は座学で、魔道具に関する授業
わたしは途中からだから授業内容がよく分からないけど、ところどころオルレン先生に習った言葉が出てくるからなんとなく理解して、帰ってからの復習と文字の練習を兼ねて教師がボードに書いた文字をノートへせっせと書き写す。
授業時間は高校よりも長くて、終わるころには疲れ果てて、机に突っ伏したくなるくらいだったけど
「優愛、クラスの者たちを紹介しよう」
リオンが「まずは女性から」と、一人一人紹介してくれることになった。
「お初にお目にかかります。ローディス公爵家の次女、アリシアと申します」
簡略バージョンだけど、アリシアさまの礼はとても綺麗で、指先まで完璧なお手本みたいな礼。
顔を上げた彼女も自信に溢れた笑顔で、くっきりとした瞳が印象的な美人さん。
(えっと、わたしは受ける側だから)
教わったことを思い出しながら、アリシアさまに返礼する。
「ご丁寧にありがとうございます。どうぞ優愛とお呼びください」
「ありがとうございます。わたくしのこともアリシアとお呼びください」
「アリシアは私の婚約者候補の一人だ。城にも時々来るから、優愛も会うこともあるだろう。アリシア、優愛のこと気にかけてやって欲しい」
「かしこまりました」
アリシアさまはにっこりと笑ってるんだけど、どことなく圧がある笑顔
(なんだろう?)
まだ挨拶しかしてないのに、ちょっとだけ優越感を持たれてるような感じもして
(仲良くなれるのかな?)
負けないように笑顔を返したつもりだけど、たぶん引きつってるなって自分でもわかった。
その次に紹介してもらったのは。もう一人の婚約者候補
「カティア・ラドリストと申します。お目にかかれて光栄です」
この方は一つ一つの動作に切れがあって凛としていて、どことなく雰囲気が騎士っぽい感じの美人さん。
けれど、笑顔からも圧とか感じないしアリシアさまより親しみやすい
「ご丁寧にありがとうございます。どうぞ優愛とお呼びください」
「ありがとうございます。わたしのこともカティアとお呼びください」
「カティアも婚約者候補だ。領地が魔物の森に隣接している辺境伯家の者で、カティア自身の剣の腕も良い。城の騎士たちとも時折手合わせしているから、優愛も興味があるなら見に行くと良い。カティア、優愛のことも気にかけてやってくれ」
「かしこまりました」
リオンもアリシアさまよりカティアさまの方が話しやすいのか、「次はいつ来る?手合わせしよう」なんて気軽に話を続けている
残りの女の子たちはリオンの言葉を守って、リオンへと同じように丁寧に接してくれたけど、そこまで仲良くしてくれる気はないのか「お困りの際は、遠慮なくお声がけください」とあっさり言われただけ
(えっ・・・・・・・・)
こっちが拍子抜けするくらいあっさりとしているけど、リオンは予想していたのか「頼む」と言うだけで終わった
最後までお読みいただき、ありがとうございます
次話は 12月9日投稿予定です。
お楽しみいただけると幸いです。




