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リオンとの出会い

「はじめまして、篠崎 優愛です」


サラ先生とメイド長から合格をもらった、淑女の礼。


優雅なに見えるよう、指先まで気を抜かずにゆったりとした動作で行い顔を上げる。


「はじめまして。リオリース・リオン・フォーレストです」


今度は目の前にいる男性の礼を受け取る。


顔を上げて視線が合うと、どちらからともなく笑いが溢れて


「どうぞお座りください。すぐにお茶のご用意を」

「ありがとうございます」


椅子を勧めると、すぐに給仕の人がお茶を淹れてくれる


今日はレオンさんの弟、リオリース殿下とのお茶会の日だった。







「この世界に来て、まだ三か月程と伺っています。とても綺麗な礼でした。随分と努力なさったのでしょう?」

「先生の教え方が良かったからです」


お互いに一口ずつお茶を飲むと、リオリース殿下が笑いかけてくれる


(レオンさんにそっくり!)


リオリース殿下は夏の空みたいな青い瞳と、レオンさんより明るめの金色の髪。


日焼けしているからか少しやんちゃな感じがするけど、一目見てレオンさんの弟って分かるくらい、顔立ちがよく似ている。


(雰囲気はレオンさんとも陛下とも、あまり似てないけどね)


レオンさんが偉そうってわけじゃないけど、やっぱり年上で大人で、穏やかなのに威厳があるとこなんて王族って感じがするし、陛下は綺麗な顔立ちをしているからか性格もなのか、ちょっと冷たい近寄りがたい雰囲気がある。


その点、リオリース殿下は笑った顔は人懐っこくて末っ子って感じが凄くするけど、偉そうにしてないし親しみやすい


「それもあるでしょうが、一番はあなたが努力なさったからですよ」


にこりと笑って頑張ったことを褒めてもらうと、照れくさくて


(こういうところも似てる)


顔がちょっとだけ赤くなるのを感じながら、「ありがとうございます」と返した。







「リオリース殿下にお尋ねしたいのですが」

「その前に。どうか、リオンと呼んでください。敬語もなしで」

「でしたら、わたしも優愛と呼んでください。敬語もない方が嬉しいです」


まずはお茶とお菓子を楽しんでもらって、リオリース殿下と少し打ち解けたころ


お友達感覚でお話ししたいなってお願いしたら、ちょっと困ったような顔をして


「うーん。レオン兄上、怒らないかな?」


少し迷うように首を傾げたけど、にこっと笑って普通に喋ってくれた。


「ま、いっか。同じクラスになるし、仲よくしよう。それで優愛は何を知りたい?」

「あのね、クラスの雰囲気とか、気を付けておいた方が良いことってある?」


あっさり受け入れてくれたことにほっとして、気になってたことを尋ねる。


(転入生になるわけだし、少しでも情報仕入れとかないと)


どんな人がいるとか知ってるだけでも、心構えが随分違ってくる


ドキドキしながら返事を待つと、リオンは考える素振りもなくすぐに答えてくれた


「うちのクラスは王族・・・・・っていうか、オレと高位貴族しかいないから、宮廷の関係がそのままって部分はあるよ。派閥とかね。ただ、幼い頃からの顔見知りがほとんどだから、そこまでのぎすぎすした雰囲気はないと思う。だいたい高等科の3年間、みんな同じクラスだし」

「そっか。わたし、受け入れてもらえそうかな?」


クラス分けは成績と魔力量によって決められてて、リオンがいるのは最優秀者のAクラス


わたしの場合『成績に関わらずAクラス』って決められてるから、一生懸命に勉強してきた人からしたら、なんの試験も受けずに上位クラスって言うのも苛立つだろうし、王族の後ろ盾があるっていっても反感買う気がする


(一般の人と一緒で良いって言ったけど「警護の関係上、リオリース殿下と同じクラスで」って護衛の人から言われたし、護衛も必要ないって言ったら、それはダメって却下されたしね)


「それは大丈夫だと思うよ?社交界デビューがまだだけど、優愛は『王家の客人』だ。王族に準じた扱いをするようアラン兄上から指示されているし、それは学園の教師だけでなくクラスの者たちにも周知される。それに、『上位の者には逆らわない』って家で徹底して教育されるから、少なくともクラスのなかで浮くことはないよ」

「そっか・・・・。クラスは何人くらい?女性はいるの?」

「うちのクラスはオレを入れて9人で、女生徒は4人」

「結構少ないのね。えっと、女性はどんな人たち?」

「んー。良くも悪くも貴族令嬢?にこやかに嫌味言ったり、ちいさな嫌がらせしたり」

「・・・・・どこでもあるのね、女子の争いって・・・・・」

「まあ、多少はね。優愛にはないと思うけど」

「あるわよ、絶対。だって、まず髪の色とか見た目の違いがあるじゃない」


この国では、貴族は色の濃淡はあっても金髪の人が多い。


それは、この国の信仰の対象である女神セフィリアが、この国に『祝福』を与えた名残とも言われている。


そして女神がこの国に降臨した時、お陽さまが昇る時の、明るい光を集めたような輝きを纏っていて、その時の輝きに近い白っぽい金色の髪は『女神の髪色』・・・・・幸運を呼ぶ色と呼ばれているとか


(シスツィーアさんと陛下の髪色は、正に『女神の髪色』って言ってたっけ)


もちろん、結婚とかで他国から来た方もいるからそれ以外の髪色の人もいるけど、圧倒的に金髪の人が多い。


その代わり、瞳は色合いが薄いけれど赤系や緑色、青色、黒色とか階級に関わらずいろんな色がいる。


わたしの髪は、黒だけど光に当たると茶色っぽく見えて、瞳の色も茶色っぽい。


協力するってはっきり決めて『女神の祝福』を受ける儀式を受けたら、だんだん金色の髪に変化するって言われてるけど


(見た目が変わることにも抵抗あるし)


金髪になったところでシスツィーアさんみたいな美人になるとは思えないし、見た目が変わることでこの国を受け入れたとも思われたくはない。


それに、『篠崎 優愛(わたし)』じゃなくなるって想いだってある。


そんなことをぼんやり考えていると、リオンはちょっとだけ肩を竦めて


「考えすぎだと思うけど。まあ、注意するに越したことはないよね。優愛が特に気を付けるとしたら、二人かな。一人は公爵家で一人は辺境伯家の出身の令嬢なんだけど、なにかと張り合ってるんだよね」


「はぁ」とどこか疲れたような顔でお茶をすするリオン。


貴族間のことはまだよくわからないけど、公爵家と辺境伯家は王家を挟んで遠戚関係にあることは教えてもらった


(王家と公爵家、辺境伯家の関係は悪くないって聞いたけど、公爵家と辺境伯家は仲が悪いのかな?)


「なにか理由があるの?」

「うーん。ふたりがオレの婚約者候補ってことかな?」

「こほっ・・・・・。それはおっきな問題ね」


口に入れたお茶が、変なところに入ってむせてしまう。


(婚約者、婚約者、こんやく・・・・・・・)


同じ年で婚約者だなんて、さらりと言われたけれど


「・・・・学園では、『殿下』って呼んだ方が良さそうね」


物語のなかみたいなことだけど、ここは現実で、リオンの年で婚約者がいてもおかしくないってことで


(余計ないざこざは避けよう)


リオンと仲良くなっても、女の子たちを敵にまわしたくない


そう決心するけど、リオンは「えー」と不満そうにしている。


「気にする必要あるかな?それなら、俺も『優愛嬢』って呼ばないといけない?」

「王族だから、リオンは呼び捨てにして大丈夫よ」


(たぶん)


正式な婚約者なら、自分以外の女性をリオンが呼び捨てにしてたら嫌だろうけど、さすがにそんな人がいたらリオンも呼び捨てにしないと思う


「まあ、好きにして。俺はそのまま優愛って呼ばせてもらうから」

「うん。あとね、話すときは今みたいな感じで話して大丈夫?もっと、こう・・・・敬語使って話した方がいい?」

「うーん。確かに話し方は、敬語の方が良いかも。他の奴ら見てたらわかるだろうけど、親しい相手でもそこまで砕けた話し方はしないんだよね。少なくとも、人のいる所では」

「わかった。注意するね」

「王宮では今みたいな話し方で話そう。あとは・・・・・・」


『王家の客人』といえど、社交界デビューしていないわたしは公には存在を知られていないし、身の安全を守るためにも伝えるのはクラスの者と学園の教師たちだけ


同じクラスにはいないだろうけど、学園には下位の者に強く出る者もいるから、絡まれたらすぐにリオンに言うこと


学園内では他の生徒にわからないように騎士が護衛するけど、できるだけリオンと行動を一緒にすること


「女性しか入れない場所もあるから、できればクラスの女生徒と友だちになって欲しい」


そんなことをリオンから言われて、お茶会は終わった。












(お友達・・・・できるのかしら・・・・?)












そんな不安だけを残して


最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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