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正しい作法を

メイド長さんも作法の授業に同席すると言われて、ルリさんと三人でお勉強のための部屋に向かうと、サラ先生だけでなくキアルさんもそこにいた


キアルさんが「おはよう」とにこっと声を掛けてくれると、隣にいたサラ先生も「おはようございます」と笑ってくれるけれど、サラ先生の顔はいつもより暗いし笑顔もぎこちない


(えっと・・・・・・・・?)


なんだか緊張感のある雰囲気に目をぱちぱちさせると、キアルさんが苦笑して


「昨日、サラの教えた作法がおかしいって話になっただろ?直すのは早い方が良いってことで、オレもしばらくは授業に同席することになった」

「そうなんですね・・・・・・・・・・」

「悪い。事前に知らせておかなくて」

「いえ。それは良いんですけど・・・・・・」


キアルさんが軽く頭を下げると、サラ先生は沈んだ顔のまま一歩進み出て


「申し訳ありません、優愛さま。わたくしが間違った作法をお教えしてしまい、優愛さまにご迷惑をお掛けするところでした」


深く頭を下げての謝罪


「え!?」


思わずサラ先生に駆け寄って、肩を押し上げる。


「え!?顔、あげてください!」

「・・・・・・・・・・・ありがとうございます」


顔を上げたサラ先生は、いまにも泣きそう


「あの!キアルさんが気付いてくれたんですし、もう、いいですから!」


実際、キアルさんとレオンさんが指摘してくれたんだから、わたしになんの被害も出てない


「そうは参りません。優愛さまに恥をかかせるところでした。社交界での評判に関わることですもの」

「でも!まだ社交界には出てませんし!」


助けを求めるようにキアルさんを見上げるけれど、キアルさんも神妙な顔をして


「サラなりの考えがあったとしても、陛下の意向を無視し、優愛に迷惑をかけるところだった。本当にすまない」

「えぇ!?」


まさかキアルさんからも謝罪されるとは思わなくて、どうして良いのか分からなくなる。


助けを求めてメイド長さんたちを見ると、メイド長さんもルリさんも予めこうなることは知っていたみたいで、いつの間にか壁側へと移動して神妙な顔をしている。


そしてその隣には


「オルレン先生!?」

「おはようございます、優愛さま」


にこりと微笑むのはオルレン先生


(って!なんでそんなに平然としてるの!?)


あまりにもいつも通りのオルレン先生に、泣きたくなるけれど


オロオロと視線を彷徨わせても、サラ先生の謝罪は当然と思われているのか、キアルさんも何も言わずに成り行きを見守っている。


「あの・・・・・・・・・・・・・・・・・」


わたしの声に、サラ先生がビクッと肩を震わせて


(・・・・・・・・・・っ!)


これ以上はこの空気に耐えられなくて、泣きそうになるのを堪えて


「・・・・・・・・・・・授業、はじめませんか?」


サラ先生を追い詰めることもしたくなくて、いつもと同じ声を意識して言う。


「いまからなら、キアルさんも協力してくれるんですし、すぐに覚え直しできますよね。それと、オルレン先生はどうして?」

「キアルのお手伝いに呼ばれました」

「せっかくなら、男性からの礼の受け方も覚えた方が良いしな」


わたしの気持ちが伝わったのか、キアルさんからは怒っている様子も見られないし、オルレン先生は変わらずいつも通り


「えっと、じゃあ」

「まずはオルレンから礼を受けてみてくれ、んで、オレが指摘する。サラは・・・・・・・・」












「今日はここまでな」

「ありがとうございました」


サラ先生というよりキアルさんの授業


たしかに昨日レオンさんが言っていた通り、礼を受けたら軽く目を伏せるだけ


(難しくなくて良かった)


反射的にお辞儀しそうになるけれど、それさえ注意していれば難しくはなかった。


「これなら、明日またみっちりやれば問題なさそうだな」

「ええ。やはり、優愛さまは覚えが早いですね」


キアルさんは満足そうに笑っているし、オルレン先生もそう言って褒めてくれる


だけど


「えっと、ちゃんとサラ先生が基礎を教えてくれていたおかげですよ?」


サラ先生はいつもよりぎこちなかったけれど、キアルさんが全体の動きを見てくれているからか、わたしの隣でお手本を見せてくれるだけではなく


「失礼いたしますわ・・・・・・・・・・・ここは、これくらいの角度で」


途中からは腰の高さだとか、綺麗に見る角度だとか身体に直接触れて動かしてくれた。




(そのおかげで、いつもより戸惑うこともなかったし、綺麗に出来たんだよね)


サラ先生もほっとしたのか笑顔を見せてくれているし、メイド長さんはよく分からないけれど、ルリさんも安心したように笑っている。


「ありがとうございます。サラ先生」

「いいえ。優愛さまに恥をかかせるようなことにならず、本当に良かったですわ」

「良かったな、サラ」


キアルさんもサラ先生のことをもう怒っていないのか、寄り添うように隣にいて


(いいな)


なんだか夫婦仲の良い所を見せつけられて、わたしの方が気恥ずかしくなるけれど、それよりも気まずい雰囲気がなくなっていることに、心からほっとした。




最後までお読みいただき、ありがとうございます

投稿が遅くなってすみません。

次話も数日内には投稿予定です。

お楽しみいただけると幸いです。

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