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お勉強とお茶会と

授業が始まってから、レオンさんとのお茶の時間はなしになった。


「勉強の邪魔はしたくない。だが、力になれることがあればいつでも言ってくれ」


お勉強が始まる前日に、またお茶の時間にやってきたレオンさんがそう言ってくれた。


お勉強の予習や復習、それにレオンさんとのお茶会がはいるとどうしてもわたしに負担がかかってしまうからと、気を使ってくれてのこと


気のせいか寂しそうに言われて、「はい。そのときはお願いしますね」とは言ったものの頼りすぎてはいけない気がして


(まだ、レオンさんたちに協力するって決めたわけじゃないし)


お世話になってはいるけれど、これ以上は踏み込まれたくないと言うか、自分のなかの一線を越えて欲しくない思いがあって、毎日のお茶の時間がなくなったことは正直ほっとした。


その代わりに、授業がお休みの日にはレオンさんとお茶の時間を過ごすことが、いつのまにか決まっていて


ルリさんに教えてもらったけれど、この国の暦は日本と似ていて7日で1週間、4週間で1か月、12か月で1年。


平日と休日の感覚も同じで、5日は学校やお仕事に行って週末の2日間が休息日。


わたしは日本の水曜日に当たる日にもお休みを入れてもらって、この日は復習と予習や出された課題をする日にした。


「詰め込んでお勉強するより、わからないところがないように少しずつ学んでいきましょう」


オルレン先生にそう言われて決まったお休みだけれど、サラ先生は


「お作法は毎日の積み重ね。できればお休みなく行った方が良いのですが」


と違う考えのようだったけれど、ルリさんが最初から根を詰めない方が良いって話してくれて、少なくともひと月は水曜日もお休みになった。


だから、レオンさんとお茶会をするのは日本の水曜と土曜と日曜日


それでもずいぶん多いなって思うけれど、レオンさんの残念そうな顔を見たら「週一にしましょう」なんて言えなくて






「授業はどうだろうか?」

「えっと・・・・・・・まだ、はじめたばかりなので・・・・・・・」


たった二日会わなかっただけなのに、お茶の時間にやって来たレオンさんが嬉しそうな笑みを浮かべているから、なんだかどぎまぎして


(うう・・・・・・いたたまれない・・・・・・・)


レオンさんは背も高いし、精悍な顔つきって言うのかな?すごくキリッとした顔つきでかっこいいし、それでいて話し方も雰囲気も穏やか


(緊張する!)


そんな人からまっすぐに見つめられて微笑まれて、緊張しない人なんていない


この世界に来て、レオンさんとお茶するようになってひと月近くたつけれど、どうしたって慣れなくて


(きっと、女性にすごくモテるよね)


王族だなんて偉い人なのに偉ぶったところも威圧的なところもないし、そこがまた人を惹きつけてる気がする


わたしと結婚って話が出るくらいだから結婚してないと思うけれど、こんな男性にどうして相手がいないのかが不思議で




『どうして・・・・・・・・・・・・・・・・』





(え?)




なにかが頭のなかに浮かんだ気がしたけれど、すぐに消えて



「優愛?」

「え?」


レオンさんが覗き込むようにわたしを見つめている


ぱちぱちと瞬きをして見つめ返して


「えっと?」

「いや、具合が悪いのかと思ったが、気のせいなら良いんだ」

「あ!すみません・・・・・・えっと、きっと、まだお勉強がなれなくて」

「ああ。無理をしなくて良い。ゆっくりで良いんだ」


レオンさんは気遣わし気だけど、わたしが何ともないと分かったのかほっとした様子で


「だが、授業中も集中しているし、予習復習も欠かすことなく熱心だとオルレンが褒めていた。もともと勉強は好きなのか?」

「えっと?そんなことはない、ですけど・・・・・」


オルレン先生もサラ先生の授業も、気を抜いたらすぐに分からなくなりそうで、必死になっているだけ


(それに、この国に協力的なところ見せておかないと、いけない気がして)


いま、わたしが親切にしてもらっているのは、この国に協力してもらわないと困るから


その考えは消えることなく、むしろ、強くなってる気がして


(後戻りできない感じしかないんだよね)


まだ、お勉強をはじめて2日しか経ってない


まだ、はじめたばかり


それなのに、心のなかにはざらりとしたものがどんどん広がっている。


(こんなこと考えちゃダメ!)


せっかく熱心に教えてくれているのに、こんなこと考えてら失礼だよね


考えてはいけない方に行きそうになる気持ちを切り替えたくて、カップを持ち上げてお茶を飲む。


ルリさんが淹れてくれるこのお茶は、シスツィーアさんが淹れてくれたお茶程わたしの好きな味ではないけれど


(慣れちゃったな)


この世界に馴染んできている自分に、苦笑したくなるけれど


「この世界を知りたいって言ったのはわたしですから。せっかく教えてもらってるのに、適当になんてできません。それに、先生たちの教え方が良いからですよ」

「謙遜しなくて良い。だが、ありがとう」


レオンさんに向かって笑って見せると、レオンさんは本当に嬉しそうに目を細めて


「この世界を知ろうとしてくれて、感謝する」


そう言って、思わず見惚れるほどの笑みを見せてくれた。




最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話は週末に投稿予定です。

お楽しみいただければ幸いです。

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