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 武井 清隆、爆誕





「うん……んぅ」



 微睡の中、重たくなった瞼を開こうとし、次の瞬間、その事実に驚愕した。



「!?!?!?え、あれ?なんで……」




 自分の身体をよく見てみる。



 自分は事故を起こしたはずだ。

 運転を舐めて気を緩め、その隙に石油タンクに突撃し車は横転。

 そのまま石油タンクに潰されて轟々と道路を燃やして死んでった、ただの迷惑男だったはずなのに……。







 んぅ?待て。


 有名どころから行くと、ここはどこだ?






 辺りは草の生い茂ったコンクリートばかり。


 何やら高い建造物のような物があるから、人がいる痕跡はある。




 が、今では生活感がない。


 そこらのコンクリートの家には穴が空いているし、見たこともない進化を遂げた動物が闊歩している。




 さっき見た高い壁にも、かなり上の方まで蔓が伸びていた。




 この街が使われなくなったのは、かなり昔だろう。








 ……にしても、かなり昔の技術でさえも、今の日本の技術を凌駕しているぞ。


 あのビルなんて、鉄筋なんかじゃなく、ビルの壁を全て鉄で作ったかのような光沢を出している。





 そんな技術を持った国、現代世界にあるならば社会の教科書にでも乗るし、世界各国が黙ってないだろう。



 それに、ここまで鉄を使えるなら世界の産業は連日休みなしな気もするが…………。






 だが、これほど贅沢に鉄を使える環境、俺が知る限り地球上には無かったはずだ。



 つまり、自分の知らない国だろう。



 まぁ、この惑星がちゃんと地球とは限らないがな。


 なんてったって、二つ目の疑問………。








 なんで俺はこんな()()()()になっているんだ?




 俗に言う『転生』と言うやつだろう。


 小説やアニメでよくある、自分の記憶を保持したまま、並行世界や違う時代など、よくわからないところへ生き返るアレだ。





 転生と言えば宗教的な部分もあるが、最近ではさまざまな物語の分類の一つとされている。




 まぁ、もう簡単に言えば『記憶を持って生まれ変わった』のだ。






 …………いや、にしても。


 もうちょっと……ねぇ?








 誰も助ける人がいないような環境の中、赤ん坊の姿で生まれ変わらせるってのはどういう了見じゃ?




 おかげで腹が減っても何もできねぇぞ?


 ちゃぁんと誰一人として生活していなさそうな街に生まれさせやがって………。






 まず、親はどこだよ、親はぁ!!



 こんなところに籠一つで赤ちゃん置いてく意味がわからねぇよぉ!!





 移動手段としては、ハイハイが一番早くできるだろうが。




 ハイハイは生まれてから8ヶ月くらいは目安でかかるとどこかで聞いた。


(生前調べたのかって?残念だが産んでくれる相手がいないからそんなことはないはずだ)





 まだ喉の筋肉は発達していないのだろう。


 喃語と呼ばれる音しか出ない。






 もうちょっと、どうにかして頑張れるはずだ……!


 生き残るためには、誰か人手が必要なんだが……………。









 そう思っていると、後ろからカサカサと音が聞こえてきた。



(人か!?この籠を見つけてもらえるか!?どうすれば見つけてもらえる!?)




 悩みに悩んだ。


 マジで。かつてないほどの命の危機だから。







 そうして、籠の中で泣き喚くしかできなかったが、それは、最悪の形で報われることとなった。









 物音が近づいてくる。




(やった……!これで助かる……まだ俺は生き残ることが……………)










 希望は、ここまで。


 籠の陰から現れた、一つの生物。







 しかし、それは人のものでは無かった。



(……………まさか)


 遅まきながらも、彼は理解した。





 野生動物。


 さらに厳密にいうと、鋭い牙を覗かせた、灰色の犬型の獣。






 狼であった。



(まずったな……)






 彼は物音に対して、なんでもいいから助けを求めたが、それが自分を害するものであれば話は別だ。








 目の前に居る狼が牙を剥く。



(あぁ、俺、生後1分ぐらいで死ぬのか………)







 人間のいないところに生まれさせられ、生後1分っで生涯を終える異世界転生って、どゆことよ?








 そう考えながら、意識が途絶えるのを待ったが…………。






(………なんだ?まだ食べられてない…?でも、狼だぞ…?)







 おそるおそる目を開けると、世界は揺れていた。





(いやいやいやいやいや、ちょい、待て待て待て待て待て!)




 理解ができず、少しだけ目線を上に動かしてみると。







 そこには、籠を咥えて歩くオオカミさんがいたのでした!




 ワアオ!!











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