大人気Vtuberの中の人は、隣に住んでる初恋の人でした!?〜身バレから始まる恋の話〜【短編】
『みんな〜こんばんわ!夜空に輝くあなただけの一番星!降星夜空だよ〜』
『今日はね〜ムクドナルドの新作バーガーを3つ食べ比べてみるよ〜!そろそろ届くんだ〜!楽しみ!』
(お、配信始まった……!そろそろ家に着くし、今日はゆっくり見れそうだな……!)
降星夜空は、今人気絶頂の個人系Vtuberであり、そのロリっぽいビジュアルと声で、数々の人を魅了していた。
もちろん、それは俺も例外では無かった。
今まで、Vtuberなんて興味も無かった俺だったが、3ヶ月ほど前に大学の友人に勧められて、そのまま沼にハマってしまった。
そしていつの間にか、俺の部屋は降星夜空のグッズで溢れている。
Vtuber沼というのは恐ろしいものだ。
『お、届いた!今受け取ってくるね〜』
そう言って、降星夜空は離席する。
(ムックの新作バーガーかぁ……どれも美味しそうだったし……配信終わったら、夜空ちゃんがおすすめしてたやつ頼もうかな……)
なんてことを考えながら、マンションのエレベーターのボタンを押す。
自分の階に着くと、そこには大きくて四角いリュックを背負った配達員が立っていた。
俺は、その方と軽く会釈をし、自分の部屋へと急ぐ。
(さ、早くのんびり配信を見るぞ〜!)
そして、隣の部屋のドアを通りすぎた時、丁度そのドアが開いた。
「ふふっ、ムック〜ムック〜!ムックの新作〜って、お!石川くんじゃん!久しぶり〜!」
隣の部屋の主は、高校の頃のクラスメイト……そして、俺の初恋の人でもある、平泉さんだった。
平泉さんとは、一緒に学級委員をやったこともあるが、俺に勇気が無く、事務的なやり取りしかしたことは無かった。
今では、隣に住んでいることはお互いに知っていても、会ったら一言会話をする程度だ。
「お、平泉さん!久しぶり…………ってそのムックの袋…………」
俺は、まさかとは思って、平泉さんに話しかける。
「……って…………!?そのリュックに付いてるキーホルダーは
…………………………!?!?」
そして、平泉さんは慌てた様子で、部屋のドアを閉めた。
『みんな〜ただいま〜…………あのさぁ……身バレ……しちゃった……かも……』
*****
翌日、俺は過去のアーカイブを見ながら大学の課題を進めていると、『ピンポーン』とチャイムが鳴った。
「あ、あの……こんにちわ……石川くん……あの……その……」
「あ、あぁ……降星夜空……のこと?」
「ひゃああああ!!やっぱりバレてたぁあああ!!」
平泉さんは、少し泣きそうな表情でこちらを見てくる。
身長差があり、上目遣いになっているのが、何か良くないことをしているような気分になる。
「いやいや!別に他人に言ったりしないから!!」
「ふぇ……?ほんと……?」
「ほんと、ほんと!ファンとして迷惑になる様なことはしないよ!」
「ふふっ!石川くんは相変わらず優しいなぁ……」
俺は、推しのVtuberで、初恋の人に褒められるのが、恥ずかしくなり赤面してしまう。
「じゃあ、お礼として、何かしてあげるよ!部屋の掃除でも!」
そう言って、平泉さんは俺の部屋へと上がっていった。
「ちょ、ちょっと待った!部屋は恥ずかしいから!!!」
俺の必死の制止も虚しく、平泉さんは俺のリビングのドアを開ける。
「おぉ〜!すごい!綺麗!!ってか……私のグッズばっかりじゃん!」
「だから、恥ずかしいって言ったのに……」
「いやぁ〜!嬉しいね!私のオタク部屋初めて見たよ〜!しっかりファンなんだねぇ〜」
俺は、推しが自分の部屋にいる状況に緊張して、動悸が止まらない。
「う〜ん、しかし部屋が綺麗となると掃除も出来ないし……私、料理は下手だし…………そうだ!!」
「な、何する気だ……?」
「ねぇ、石川くん!油性ペン持ってる?」
「いや、机の上に置いてあるけど……?どうする気?」
「ふふっ、それはねぇ…………」
そう言いながら、平泉さんは油性ペンを手に取り、俺のベットの上に立って、タペストリーにサインし始めた。
「よし!かんせー!世界で一つだけの、直筆サイン入りタペストリーだよ〜!!」
ベットの横にかかっている、タペストリーには、大きく降星夜空とサインがしてある。
「や、やばい……ちょっと嬉し過ぎる……」
俺は、予想だにしない出来事に、少し涙ぐんでしまった。
「ちょ、石川くん!こんなことで泣かないでよ〜〜!!!」
*****
こうして、俺と平泉さんの少し変わった隣人関係が始まった。
平泉さんからすれば、面と向かって配信の感想を貰えるのは嬉しいらしく、週に1度家に遊びに来ては、俺に感想を求めてくる。
俺は、推しの降星夜空かつ、初恋の平泉さんと話せるのは至福の時間で、毎日この時間を楽しみして過ごしていた。
こうして、降星夜空のチャンネルはさらに伸びて、今ではVtuber界隈で知らない人はいないほどまで成長した。
しかし、有名になればなるほど、アンチコメントは増えるもので、掲示板では、最近元気なさそうだけど大丈夫かな……というコメントで溢れていた。
*****
この関係が始まって、半年が経ったある日。
平泉さんは、やけに暗い表情をして、俺の家にやってきた。
もう今すぐにでも泣いてしまいそうな顔の平泉さんは見ていられなかった。
俺はいつもの通り、自分のベッドに座り、平泉さんには座布団に座るように促した。
しかし、平泉さんは
「あ、あの……石川くん…………お隣に座っても良いですか……?」
と言って、俺の隣に座ってきた。
なんだか、女の子特有の良い匂いがして、緊張してしまう。
「石川くん……私、もう辛いです……」
俺は、何も言う事が出来ずに、ただ見つめる事しか出来なかった。
「初めは……温かい人たちに囲まれてて、配信するの……すっごい楽しかったんです……」
平泉さんは、今にも消え入りそうな声で続ける。
「でも……最近は……心無いコメントも沢山あって……みんなが……私のこと……嫌いなんじゃないかって……」
平泉さんの目には、涙が溢れ出していた。
俺は、いたたまれなくなり、咄嗟に平泉さんを抱きしめた。
「ふぇ!?石川くん!?」
「平泉さん……嫌だったら離れてね……」
「う、ううん……しばらくこのままでいさせて……」
こうして、10分ほどが経った。
俺のドキドキはもう最高潮に達していた。
「あ、あの……ありがとう……少し落ち着いた……」
「そりゃよかった、他になんか俺に出来る事あるか……?」
「じゃあ……このまま頭撫でてくれませんか……?」
「お、おう……分かった……」
そして、平泉さんの要望のままに、頭を撫でた。
頭を撫でるたびに、耳元で小さな声を漏らす平泉さんに対して、俺は理性を保つのに精一杯だった。
「あの……石川くんは……私のこと……好きですか……?」
「ふぁ!?……そりゃ……まぁ……大好きだよ……」
俺は唐突なド直球な質問に対して、思わず声が裏返ってしまう。
「それは……降星夜空として……?それとも……1人の女の子として……?」
俺は平泉さんを撫でる手を離して、平泉さんの目を見てしっかりと言う。
「俺は、みんなの前で頑張ってる降星夜空のことだって大好きだし、人並みに傷つく平泉さんのことも……どっちも大好きだよ」
「ふふっ、ありがと……私も石川くんのこと、ずっと大好きだよ…………………んっ…………」
俺は、突然のキスに驚いて、目を丸くしてしまう。
「私のファーストキス……石川くんにあげちゃった……」
「お、俺だって男なんだし…………そんなこと言われると、勘違いしちゃうぞ?」
「べ、別に石川くんだったら……私だって、嫌じゃないよ……?」
「う……ど、どうなっても知らないからな!」
こうして俺は、我慢出来ずに平泉さんをベットに押し倒した。
*****
『みんな〜こんばんわ!夜空に輝くあなただけの一番星!降星夜空だよ〜』
『え?元気そうになって良かったって?いや〜みんな心配かけてごめんね〜!』
『私のこと大好きって言ってくれた人がいるからね!気合い入れて頑張らないと!』
今日も俺の彼女の配信は、最高に面白かった。
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