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三題噺もどき2

金縛り

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくごじゅうに。

 


「――――!?」


 バチ―と、目が覚める。

 普段目覚ましを数回鳴らさないと起きないのに。

 なった矢先に止めては寝てを繰り返さないと起きないのに。

「―――??」

 今までにない異常さで目覚めた上に、心臓がバクバクと言っているから混乱が頭を支配する。

 突然激しく動き出したせいで、勢いよく全身に血が巡り、体が熱くなっていくのが分かる。

「―――?」

 何か悪い夢でも見たんだろうか…。

 ならばその断片でも覚えて居そうなものなのに、そんなこともない。

 夢を見ること自体が珍しいので、それが良いモノであっても悪いモノであっても、見たものは割と残るのだ。

 でも今回はそれもない。

「―――」

 少しずつ、混乱が落ち着いてきた。

 とは言え、心臓はまだバクバクしている。

 全く……なんでこんな時間に、こんな思いしないといけないんだ……いや、今何時だ?

「……」

 部屋の中が暗いから、夜中ではあるんだろうけど。

 若干の遮光が入ったカーテンを使っているので、何とも言えない。

 そこまで遮光性は高くないが、この時期は特に何とも言えない。

「……」

 はてさて、一体全体何時なんだろう―と思い、枕元にある携帯を確認することにした。

 少し肌寒かったので全身が布団の中にすっぽりとおさまっている。

 その中から、なんとか腕だけを抜いて―

「―――???」

 身体が、動かない。

「―――???」

 抜こうとしたのに手がびくともしない。

 力は入れているはずなのに、ピクリともしない。

 他を試みてみると、どうやら他も全く動かない。

 腕はガチリと、体に固定されているようだし。

 足はピタリと閉じて、布団に縫い付けられているようだし。

 指先なんて感覚すらないんじゃないかという程だ。

 ―動いているのは心臓だけ。

「―――!?」

 眼は開いているが、眼球が動きそうにない。

 つい数秒前までは動いていたはずなのに。

 天井あたりを見つめたままに、止まっていしまっている。

 苦しくはないから、息はしているはず。

 ―だとしても、体が全く動かないのはおかしい。

 訳が分からない。

 どういう状況なのかまったく理解ができない。

 何が、どうして、こうなって。

「―――!!!!!!?」

 混乱のままに何もできずにいると、何かがズシリと、腹のあたりに乗ってきた。

 意味の分からないままに、訳の分からないものに乗られた感覚に襲われたせいで、思考がろくに働かなくなる。

「「―――?」

 肩口あたりに痛みを覚えた瞬間、腹の重みがふっと軽くなった。

 しかし、それも一瞬で。

 また重みが、上半身にのしかかる。

 ―今度は先のところより、上の方。

 ―私の、顔に、より近い方。

「―――!?!?!?」

 すると、目の前の暗闇がゆれた。

 天井が広がるはずの視界の中にいつの間にかいた暗闇が。

 ぬぅ―と、眼前まで迫ってくる。

「―――???」

 え??

 声こそ漏れなかったものの。

 完全に迫ったそれは、なぜか見知った顔だった。

 ―とはいえ、その顔は酷くボロボロで傷だらけである。

 知った顔でなければ、恐怖で叫んでいたかもしれない。叫ぶことは出来ないが。

「―――?」

 でも、おかしい。

 この人は。

 この間―

「―――!!!!」

 突然喉が絞まりだした。

 くっきりと手形が残ってしまうんじゃないかと思う程の強さで。

 息の根を止めようと。

 私を殺そうと―?

 この人が??どうして??

「―――」

 呼吸ができない。

 藻掻くことも出来ない。

 叫ぶことも出来ない。

 ただひたすらに息が苦しいと言うことだけ。

 全体重をかけているのか、腹部のあたりの重みは消えている。

 いや、そんなことはどうでもいい。

「―――」

 どうして?

 どうして。

 やさしい人…やさしいあなた……どうして?

 どうして私に、こんなことをするの。

 どうして。

 あなたを失って、暮れていたわたしに。

 どうして。

 どうして。

 どうして。

 どうして。

「―――」

 徐々に視界が暗くなる。

 眼前にあるやさしい人の、あの人の顔が歪んでいく。

 ―真っ暗で、何も映していないような瞳が見つめてくる。

「―――」

 あぁ。

 もしかして。

「    」






『本日午前〇時頃、人が死んでいると通報がありました。通報のあったアパート内では、1人の女性の死体を発見しました。死因は窒息とみられています。

 ―なお、この女性は数日前の事故で恋人を失くしたと言われていますが、その事故に関与したのではないかと疑われていました。』






 お題:わからない・叫ぶ・やさしい人

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