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しましまのしっぽの君は

作者: 一色 良薬

 こいつ、本当に猫だろうか。

 玲生の掌に顎を擦りつけ、喉を鳴らして愛嬌を振りまく、灰色の毛玉を訝しげに観察する。

 ドロン。齢2歳。雌。中性的な凛々しい顔立ちのせいで、勘違いにより可愛らしくもない名前をつけてしまった。と言いたいが実は違う。

 くるりとカーペットに大人しく寝ているドロンのしっぽ。はっきりと分かるほどにしましま模様が浮かび上がっている。

 ゴーストタビーというらしく基本的には成猫になるにつれ、徐々に消えていくと書いてはあったのだが。

 一向に消える気配がない。それどころかしま模様が濃くなっている気がする。なんならしっぽが膨らんでまるでたぬき──。

 ドロンの名づけの由来。たぬきに似たしっぽだから「ドロン」という、なんとも玲生の安直な発想でつけたものだった。しかし今となっては偶然とも言える正体の暴き方と言ってもいいのではないだろうか。

 猫はこんなにも無防備な姿を飼い主に見せるだろうか。

 そもそも飼い主どころかエサを用意する奴隷と思っているかもしれない。

 なおのこと奴隷に撫でられてご満悦にエンジン全開! と言わんばかりに喉を吹かすだろうか。

 たぬきが猫の姿に化けているといった方が説明つくほどの懐き具合だ。

「アンタにだけよ。お母さんもお父さんも未だに触らせちゃくれないんだから」

「ばあちゃんはこないだ撫でてたみたいだけど」

「おばあちゃんはおやつで釣ってるのよ」

 まったく玲生のことが大好きなのね。母親のからかった物言いにふんとそっぽを向けば、視界いっぱいに「わたしを見て!」と言わんばかりにずいと胸によじ登ってくる。

「おっと! やめろって、ちゃんと見てるって。ったく」

 再度顎から頭へと撫でくり回してると、ドロンは満足気にニャアと返事をした。

 ドロンが猫なのか。器用に化けたタヌキなのか。未だに分からない。

 こいつの正体は「お先にドロン」するまで絶対に暴いてやる。

膨らんだしましまのしっぽの持ち主を玲生は愛おしく抱いた。

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