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便利屋ジン。  作者: マメ電9
序章
2/6

第0話その2 運命?出会いは突然に 後編

連続2話で終わる予定のプロローグだったのですが、もう1話増えそうですw

 こちらに歩み寄ろうとする彼女の額のゴーグルが、太陽の光に反射して僕の顔に当たった後、光の線は一階の男達の視線を横切ってしまった。

 光の元を確認する男達の目線はこちらに向き、彼女の大胆な侵入方法のおかげで僕たちの存在が明らかにされた。

 

 もうバレってしまったらとくダネはもうおしまい。逃げるしかない。



 何とか立ち上がり、「侵入者だ!」と叫び2階に駆け上がってくる男達から逃げるため、どこから逃げようかあたりを見渡すが・・・。


 一人だけ、全く真逆の反応をする人物がいた。


「おーおー来た来た♪ いいのかな〜全員んでこっち来ちゃって・・・下がガラ空きだよっと」



 工場の2階は狭い吹き抜けの通路しかないので、ジャンプすれば一応1階には降りられる。でも衝撃はそれなりにあるだろうし、絶対足首が痛くなるやつ。


 その2階から、彼女は何の躊躇もなく ひょいっと軽々と飛び降りて行ったのだ。

 


「えっ!ちょっと・・・!」



 彼女の身を案じて手摺りに駆け寄り下を覗き込む僕を、彼女はニヤッと笑って僕を見ていた。



「おっさき〜」



 これは挑発だ。

 


 彼女が何者なのかは知らないけど、僕と同業者の可能性もなくはない。

 だとしたら、今ここでとくダネを先越されたら・・・。


 

 モヤモヤとした嫌〜なものが、胸の奥で湧き吐きそうになった。


 無意識に、手摺りを強く握る。



 「逃がさねぇぞ!!」



 気づけば男達はすでに2階に上がってきていた。・・・もう迷う時間なんてない。





 いつも優柔不断で、上司から叱られている僕だけど。

 追い詰められた状況下で、やっと僕は・・・



 何かが吹っ切れた。




 

「ぬあああ!もう!!どうにでもなれー──!!!!」





 捕まるギリギリの瞬間に手摺りに足をかけ、思い切り前へジャンプ!

 捕まえ損ねた男達は一緒に下に落ちて伸びている者や、手摺りにお腹を強打してしゃがみ込む者の唸り声が後ろから聞こえる。


 やった!と喜んだのも束の間

 

 飛ぶ方向が不味かったのか、僕が着地・・・いや、へばり付いたの方が正しいか。

 一階は機械がたくさんあった。だから機械の細い配管の一部に思いっきり抱きつく形で落ちた。



「おおおおおおおお??!!」



 あとはもう重さに耐えきれなくなった配管はドミノ倒しのように、接続部分のネジが折れ単管は次々と機械を破壊していく。



「うわぁ、兄ちゃん意外と大胆・・・」



 既に一階に降りていた彼女はメインの機械である中心に埋め込まれた鉱石の元まで辿り着いていた。



「頑張ってるとこ悪いけど、こっちも仕事なんでね。さっさと帰らさせてもらうぜ」



 手を伸ばして鉱石を土台から外し取る。しかし、予想していたより簡単に取れてしまったことと、持った感じの質感・重量がやけにチープだった。


 すぐに違和感に気づき「ん?」と声を漏らすと、2階にいた男達の中の一人がやけに慌てて逃げようとしている。男の手には全く同じ見た目の鉱石が握られていた。



「くっそ、やられた!・・・逃すかよっ!」



 自分が手にしている物がダミーとわかった途端、持っていたダミーを男めがけて思いっきりぶん投げる。


 それは見事に手元へ命中し男の手から本物の鉱石は落ちた。

 男は手の痛みで怯みすぐに拾いに行かなかったせいで、鉱石はカランコロンと音を立てながら転げていく。


 

 チャンス!っと思って取りに行こうとしたが取り巻きに行手を阻まれ「ちっ」と舌打ちした。


 男が慌てふためいて本物の鉱石を取りに行こうとしたところで、先ほど大胆なジャンプを披露したせいで機械を壊しまくっていた配管は鉱石の方めがけて倒れ込んできた。



「おじさん!逃げてぇぇぇえ!!!!」



 地鳴りと似た音をたてて、ガラガラとなだれ込む配管と共に、僕も地面に放り出されるが、奇跡的に配管の下敷きにならずに済んだ。

 こういったところは、何故か運がいい。


「いててて・・・ん?・・・鉱石!!」



 またまた幸運なことに、転んだ先に鉱石が目の前に落ちているではないか。

 何の工場で、何の機械で、何のための鉱石か全くわからないけど。みんながこれを必死になって取り合っているなら、価値ある貴重な記事材料になること間違いない!


「こら!そいつを返せ!」


 倒れた配管を這い上って追いかけてくる男。

 僕は痛い体を何とか立たせて鉱石を抱え走り出した。



「渡すもんか・・・!絶対に!!」


 これはもしかしたら、僕の命よりももっとずっと大切なものかもしれないんだ・・・!


 とにかく出口へ!


 大事に大事に。鉱石をギュッと持って走る中で視界の端に入ったのは、先ほど取り巻きに囲まれていた彼女。

 すぐそばに落ちていた鉄骨をひょいっと拾い上げる。

 そして弧を描くようにぶん回し、取り巻き達を一掃すると。彼女はそのまま鉄骨を僕たちに向かって投げつけてきた。



「えぇ?!マジ?!」


「逃すかよ!」



 あんな重い鉄骨を女性が軽々と持ち上げるなんて、絶対普通の人じゃないっ!!

 

 

 鉄骨は勢いよく飛んできたが、幸い僕たちには当たらず工場の内壁に激突した。

 当たりどころが悪かったのか工場全体が崩れ始め、頭上からは鉄の雨が降り出す。


「全員退避だ!退避ー!」


「いいのか?!アレを盗まれたとなると、今後の商売が・・・!」


「今そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ!」



 僕を追ってきていた男達は降ってくる鋼材や木材を避けて外に逃げ出した。

 それに油断していた僕は、落ちてくる鉄の衝撃で転んでしまい鉱石もまた転がっていく。


「しまった!?」


 

 だめだめだめ!止まれ止まれーー!!



 走って追いかけた先で、鉱石は止まりそれを拾うことができた。

 

「よし!取った──!!」



 両手で拾い上げるとそのままバンザイして喜んだ。

 だがよく見ると鉱石が転がってきたこの場所は、一番最初に見つけた蒸気が出ている変な皿状のステージがある機械の上だった。

 

 そしてここはちょうど、鉱石が嵌まっていた場所でもある。



 瓦礫がどんどん降ってくる中、周りにある別の機械を潰していく。当然この蒸気の出ている機械にも直撃し、機械から飛び出ているレバーに当たってしまい。



 ガコッ



 と何かの起動音がした。



「へ?」



 機械のスイッチが入ってしまい、同時に持っていた鉱石が機械に反応して、突然噴き出した白い煙が僕の周りを取り囲む。

 煙は口から肺に入り、身体中を充満していく。


 

「(何だこれ・・・!息が・・・できな・・・)」



 呼吸困難に陥り、膝をついて倒れ込んだ。

 目が霞んで周りがぼんやりとしていくのと、身体がギシギシとして思うように動かせない。





 

 僕は・・・ここで死ぬのか・・・?






 

「あーあーめんどくせぇな〜もう」


 その様子を遠巻きで見ていた彼女は、降ってくる瓦礫をかわし、煙の中に飛び込んで鉱石を持った青年ごと軽々と抱き抱え、そのまま工場から脱出した。

 

 間一髪だった。脱出した直後に工場は倒壊。

 いつの間にか外には野次馬で溢れ、怪しい男達はもう姿を消していた。



「ありゃりゃ、暴れすぎたか。こりゃあとで怒られそうだ」

 



 人はどんどん集まり、次第には警察まで来てしまった。



「あいつらに見つかると面倒だ。ここはさっさと退散するのが正解だな」



 彼女は野次馬達の反対側の建物に飛び移り、そこから屋根を伝ってその場から離れることにした。






 人の声がどんどん遠ざかっていく。



 そして人目がなさそうな、こじんまりとした広場に降りた。


 

 赤煉瓦が地面に敷き詰められ、中央には緑の葉をたくさん茂らせた木が1本凛と立っている。

 

 木の側まで歩み寄ると、彼女は青年を根元に置いて鉱石だけ持ち帰ろうと考えたが・・・・妙に青年にしては軽すぎるなと違和感が走った。



「なっ?!お、お前!!」



 先ほどまでは、逃げるのに必死で特に何も思わなかったし、彼女は人並外れた力の持ち主というのも重なって気づかなかったが・・・


 そこに抱かれていたのは、服の袖やズボンはダボダボになったおそらく6歳くらいの少年だった。


 彼女の大きめの声にビクッとした後、スッと目を覚ます。



「ん・・・んん・・あれ、さっきの人」



 まだぼんやりしている感じで、目がトロンとしてる。これはきっとまだ自分の姿の変化に気づいていない様子。

 


「そっか、僕工場で・・・」


「お、おおぉ・・・それよりその・・・お前大丈夫なのか・・・?その・・・」


「?」



 もっと堂々としてる印象だったけど、妙におどおどしだす彼女に少年は首を傾げる。


 とりあえず下ろしてもらえますか?とお願いすると、はっ、とした表情をしてそっと下ろしてくれた。



 何だ、普通にやっぱりいい人なんだ。



 でも、また違和感が。

 

 下ろされ方が両脇を持たれて下ろされた。この感覚はまるで子供の扱いをされているような・・・?

 足が地面についた後も、妙に視点が低い。



「え?・・・え?え?」



 よく自分の身体を確認すると、着ていた服はダボダボになっていて今にもズボンがずり落ちてシャツのスカートになってしまいそうになっていた。


 彼女を見上げると、顔が「夢じゃない、間違いない」と言っている。サーっと血の気が引いていく。



「う、うううう、嘘・・・・!!僕・・・子供になってるぅぅぅうう??!!!!!!」



 低めだった声も、今では声変わり前の高い声に変わっていて、その可愛らしい声質の叫びが広場に響いた。



「あ〜〜、きっとあの機械のせいか」



 彼女は、やっちまったなと言いながら頭の後ろを掻いている。


 あの機械。多分最後に起動してしまったアレのことだ。


 衝撃に耐えれなかったのか、または寿命だったのか、持っていた鉱石にピキピキとヒビが入りだす。

 そしてそのまま、ぱりんと少年の腕の中で砕け散り破片のみ手元に残った。



「あっ!!おれの依頼物!!!!」


「ああああ!!・・・そんなぁ、僕の命より大事なものが〜っ」



 二人の叫び声は重なって、またしても広場に響いていったのでした・・・。




 

 



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