ガンテツの鍛治屋
「それじゃあ次は鍛冶屋と道具屋か」
結局、かなり反対されたがなんとかテイマーを発現してから、鍛冶屋と道具屋に向かっている。
鍛冶屋では当然ながら俺がテイマーとしてのスキルを使うのに必要な武器を買いに行く。道具屋はちょっとしたおまけだ。
「お、あったあった」
しばらくふらふらと露店の魅力に引かれながらもこらえて到着したのは一つの鍛冶屋。
この鍛冶屋は〔エレパト〕でも大変お世話になったガンテツの鍛冶屋だ。
ガンテツの鍛冶屋は王都一の鍛冶屋で、その武器や防具はどれも高品質でありながらも、貴族からの依頼の品以外はどれも平民でも買いやすい値段にしている。
そんな親子が営む鍛冶屋──という設定だったはず。
鍛冶屋の見た目はレンガ造りの家に馬鹿デカイ煙突が着いたようなシンプルな構造だ。
そして、俺は中にいる武器を作っている人物を知っている。
だけど、店の入り口の上にはそんな中にいる武器を作っている人物からは想像できないようなポップな感じでガンテツの鍛冶屋と書かれた看板が設置されている。
「それじゃあ早速。こんにちは~」
──チリンチリンッ
ベルの着いている木製の扉を開いて店の中に入る。
中に入ると、カンッカンッという金属同士を打ちつける音が聞こえてきた。
そして、中に入るとカウンターには中学生ぐらいの赤い髪の女の子がいた。
あの女の子はミリアと言って、この店の名前にもなっているガンテツの娘だ。
鍛冶をするのはガンテツ。店のその他のことはミリアが担当するといった手分けをしている。
それがガンテツの鍛冶屋だ。
ちなみに、このミリアも廃人達のなかではかなりの人気を誇っているキャラの一人である。
あとは胸部装甲もなかなか立派で……正直眼福です。
それに、こうしてミリアが実際に動いてることに興奮する。
だけど、ここで変な挙動でもしてしまったらしたら警備隊。地球で言う警察のお世話になってしまう。
さすがに〔エレパト〕生活一日目で警備隊のお世話になるのは避けたい。
「いらっしゃいお兄さん。なにをお探しかな?」
「そうだな……」
まあ、なんにせよまずは買い物だ。お金はある。
ゲームで同じような行動をした時よりも多くお金をもらえた。
だから最初予定していたよりも良いものを買える可能性がある。
それこそゲームでは最初買えなかったような強い武器もはじめから買えるかもしれないんだ。
考えよう。俺の〔エレパト〕に関する知識をフルに使って。
「片手剣と笛はあるかな」
まあ、まずほしいのはこの二つだな。
理由としては、片手剣は俺自身が戦うために必要で笛はテイマーとしてのスキルを使うのに必要だからだ。
「片手剣はいっぱいあるけど……笛って?演奏とかに使う笛のこと?」
……え?
「いやいや、演奏使うんじゃなくて笛だよ笛。戦闘に使う笛」
「……プッ……アハハハハッ!」
「なんだよそんなに笑って?なにかおかしなことを言ったか?」
笑うようなことを言ったかな?
そんな俺の考えを余所にミリアは笑い続ける。
「ハーッハーッハーッ……いや~久しぶりにこんなに笑ったよ。で、え~っと、なんだったっけ。笛だっけ?」
「そうそう、笛だよ笛。あるだろ?戦闘にも耐えられるように作られた笛が」
これが鍛冶屋で笛を買う理由だ。
笛というだけならこれから向かう道具屋でも買える。それこそ少し値段はするけど、しっかりとした作りをしたものが。
だけど、これには一つ問題がある。
それは耐久力。
〔エレパト〕では武器や防具なんかには耐久力が設定されていて、それが0になると壊れてしまって修理が必要になって使用不可になってしまう。
それが、この〔エレパト〕が現実になった今でもあるかはわからないけどな。
まあここまで言えばお察しだろう。
そう。道具屋なんかで買った笛は耐久力がめちゃくちゃ低いんだ。
具体的に言えば、〔エレパト〕で試しに買った人が戦闘で使って一回のスキルで壊れてしまい、戦闘中のモンスターにボコボコにされるぐらいには。
だからこそ鍛冶屋で戦闘に使う笛を買う必要があるんだけど……
「ないよ」
「……え?」
「いやいやだからないよって。戦闘に使う笛なんてものは」
……戦闘に使う笛なんてものはない?
ど う い う こ と だ!?
「な、ないってどういうことだよ!?」
「いやいや、だからそのまんまの意味だって。戦闘に使うような笛はないんだってば。むしろどこで戦闘に笛を使うのを聞いたのかを教えてもらいたいんだけど」
「いや、え~……でもそういうことなのか……?」
最初はなんで戦闘用の笛がないんだと思ったけど、冒険者ギルドで聞いたテイマーの現状を考えたら仕方ない……のか?
テイマーの人達の評価はそこまで高くなさそうだし、数も少なそうだ。
そんな状況で、俺が知ってる限りテイマーしか使わない笛を置くか?
〔エレパト〕みたいに無制限に買えるわけもなく、ここは一つの実際に実在する"店"なんだ。
店に置ける物だって有限だ。置くわけがない。
その事実に気づいて思わず頭を抱える。
「え~っと……そんなに笛がほしいなら父ちゃんに注文するっていう手もあるけど?」
そんな俺を哀れに思ったのか知らないけど、ミリアがそんな提案をしてくれた。
その提案はありがたいんだけど……
「ちなみにそれは頼むとしたらどれぐらいで出来上がるかわかるか?」
問題は作り上げる期間。
値段は鉄などの一般的な鉱石を使ってもらえばそこまで高くはならないだろうからそこは問題ない。
だけど、俺の計画は早さがものをいうから、出来ることなら明日までにはこの国を出ておきたいと考えている。
「う~ん……父ちゃんも武器とか防具ならすぐに出来るだろうけど、笛とかってなってくると形にもよるけど最低でも一週間はかかるんじゃないかな?」
うん。それは無理。
「いや、そんなに時間が掛かるなら今回はいいや。片手剣だけ見せてもらってもいいかな?」
さて、笛が買えないってなると予定が色々狂うな。
仕方ないから笛は道具屋でできるだけ買っておいて、今回は俺が戦うための片手剣だけ買っておこう。
「いいよ~片手剣はそっちの棚の方にあるから自由に見ていってね」
「ありがとう。助かるよ」
ミリアに礼を言いつつ、片手剣の置いてある棚を教えてもらった俺は片手剣の置いてある場所に向かう。
そして、そこにあった剣を見てみる。
「おぉ……」
そこには色々な剣。〔エレパト〕の設定資料集やデザイン集なんかで見たことのある片手剣もあれば、見たこともない片手剣があった。
「お?これは初めて見るな」
そんな多数ある片手剣の中でも、最初に目についたのは見ただけでもわかる大きな剣。
一瞬両手剣にも見えるかもしれないけど、この大きな剣が置いてあるのは紛れもなくカテゴリーは片手剣だ。
「おお、お兄さんそれを選ぶとは中々良い目をしてるね」
そんな大きな剣を眺めていたら、近くに来ていたミリアが話しかけてきた。
「これって珍しいのか?」
「そんなことはないよ!だけどそれは私が打った自慢の一品だからね!」
ドヤァ……という効果音が聞こえてきそうな雰囲気を出しながら胸を張る。
ああ、そういうことね。
だけど、ミリアが自信作と言うだけあって輝きも他のやつとも違って……ちが……違うのか?これ?
いや、でも輝きが……
「あれ?」
……あれれ~?
な、なんか剣に映っている俺の顔がいつも見てる、いたって普通のどこにでもいるような黒髪ノーマルフェイスが金髪のイケメンフェイスに見えるような……てかこの顔〔エレパト〕の主人公じゃね?
……いや、なんで?
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