拝啓どなたか
またまた短かったりする。
「すいません、登録お願いします」
俺は王都の冒険者ギルドの中に入って受付の女性に声をかける。
冒険者ギルドは酒場も一緒のようないかにもな場所で俺が入ってもこちらを気にすることもなく、ワイワイガヤガヤと騒いでいたり、クエストが貼ってあるボードを見ている。
俺が話しかけたのは赤毛のショートヘアーの20歳ぐらいのお姉さん。
〔エレパト〕では見なかった人だ。
「はい。新規の登録だよね?え~っと……じゃあ、この紙に年齢と名前を書いてくれるかな?文字は書ける?書けなかったら代筆するけど?」
「いえ、大丈夫です。自分で書けます」
そう言いつながら、用紙を受け取る。
最初は代筆してもらおうかな?と考えたが言葉が通じたみたいになんとなく書けると思えたので書いてみることにする。
受付の女性に言われた通り、年齢と名前を書いていく。
紙に書かれた字は問題無く書けてるみたいだ。
これでいいですか?と言うように俺が書いた字を見せてみると、女性は確認のためにじっくり見たあと、頷く。
「うん。大丈夫よ。えっと……ヒダカユウト……様……でよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですけど……様?」
俺の名前を確認してから急に態度が変わった女性に俺は思わず聞き返す。
「……名字持ちということは貴族様ではないのですか?」
……あ~なるほどね。
どうやらこの世界では苗字を持っている=貴族という考えが一般的らしい。
まあ、確かにそういう考えの方がこの世界の街並みとかを見ると自然だよな。
地球でも昔のヨーロッパなんかは平民は姓を持っていなかったっていう話を聞いたことがあるし。
「いや、そんな事はないですよ?俺の暮らしてた場所は皆、苗字を持ってましたし」
俺の言葉を聞いて安心したのか、受付の女性の表情はほっとしたような感じに変わる。
「な~んだ!そうだったんだ。いや~、ごめんなさいね、勘違いしちゃって。それじゃあ……次は~これ!」
「何ですかこれ?」
受付の女性が謝りながら取り出してきたのは三脚の台座に乗った透明な水晶。
〔エレパト〕ではみたことのないアイテムだった。
「これはね、その人に適性のあるジョブを発現させてステータスカードっていう冒険者ギルドに登録した人達の身分証になるカードを作成出来る魔道具なの。これに手を乗せてくれるだけで大丈夫だから、やってもらえるかしら?」
「分かりました」
受付の女性の説明を聞きつつ、俺は透明の水晶に手を乗せた。
「はい、いいわ。もう手を離しても大丈夫よ」
言われて俺は自分の手をゆっくりと引っ込めていく。
そして、俺の手が離れた瞬間、透明の水晶に変化が現れた。
次々と透明だったはずの水晶に文字が写し出されていく。
ただ、それは俺の見てる方じゃなくて受付の女性の方に向いた状態でだ。
うん!ただでさえ見慣れない字なのに反対にされたら読めねえ!
「えっと、これがきみの発現できるジョブね……剣士に魔法使いに弓使いに冒険者。大抵の初級職になれるわね」
「へぇーそうなんですか……」
まあ、俺は別にジョブなんて興味ないし、最初から何のジョブに就くかは決めてたし。
「どうする?なんのジョブが良いとかわからなかったら説明してあげるけど?」
「いや、大丈夫です。就きたい職業は決まってるんで。それで、確認してほしいんですけどテイマーは発現できますかね?」
俺は〔エレパト〕でプレイしていた時によく使っていたジョブ兼〔エレパト〕の最優秀だったジョブがあるかをを受付の女性に尋ねる。
こればっかりは俺は〔エレパト〕の主人公じゃないしあるかわからないからな。
すると、受付の女性は少し驚いた顔をした。
「えっと……テイマー?本当にテイマーで良いの?」
「そうですけど……何か問題があるんですか?」
「う~んとね、テイマーっていう職業はね、モンスターを使役することが出来るようになるんだけど、その代わり戦闘用のスキルがほとんど覚えられないのよ?だから、あなたみたいな若い人が選ぼうとはしないと思うんだけど……」
あれ?
テイマーのデメリットを聞いた時、ちょっとした疑問が浮かんできた。
「……あの、それじゃあテイマーのジョブに就いてる人っているんですか?」
「いるにはいるんだけどほとんどいないわね。それも大体の人が低いランクで燻ってるって聞くわね」
……拝啓エレパトをプレイしていた同士達のどなたか。
テイマーはこの世界だとそこまで評価されてないらしいです。
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