お金
ちょっと短かったりします。
〔エレパト〕、いや、だいたいのゲームにある初戦闘時のチュートリアルで
・戦う
・アイテム
・逃げる
の中で戦うを選択しろと言われているのに無視して逃げるを選択した現在。
普通ならあり得ないのだが、それがあり得てしまう〔エレパト〕。
スライムとの戦闘を断ったのには一見、無意味に思えるかもしれないけど、勿論理由がある。
まあ、端的に言ってしまえばこの国から脱出するためにこの国、特に王様の俺に対しての"期待値"を極限まで下げるためだ。
期待値というのは活躍したり、強い力を持っている、あるいは手に入れたといったように他の人に期待されるような度合いのことで、今回はそのレベルが高い程ここから逃げ出すことが難しくなる。
逆に、期待されていない場合は逃げるのが容易になる。
現時点の俺の評価はまず、勇者召喚で現れた勇者と言うことでちょっと高めの期待値。さらにここからは〔エレパト〕にいなかった三人という不明なところもあるけど、召喚した眷獣が無精霊、それも他の召喚した三人の眷獣と見比べたら弱そうという所、召喚に血を使うのを怖いという理由で断ったから勇気がないと判断されたであろう所、そして今のスライムとの戦闘を拒否したことで現状、俺の期待値はかなり下がっているはずだ。
そこでだ。そんな状況で俺達が勇者召喚で召喚した部屋に戻ってきてから王様に自分は役にたてそうにない、そんな自分が世話になるのは申し訳ないからこの城を出ていく、ただ少しのお金は欲しいという感じの事を伝えたとしよう。
何が起こると思う?
答えは簡単。
「これが約束の金貨一枚に銀貨五十枚枚だ」
「お気遣いありがとうございます」
はい、完璧!
この通り、お金を受け取れて、尚且つ安全にこの城を出ることが出きる!
お城の門の前でお金を渡してくれたのはクラウスさんじゃない、一般兵士といった感じの人だった。
その一般兵士は俺にお金の入った布袋を渡したらすぐに振り返って門を通り、城へと戻って行く。
さてと……一応天宮くん達三人にはこの国をあまり信用するな、疑っていけと警告してきたけど……ダメだろうな~三人共、人が良さそうだったからな。
じゃあそろそろ行くかな……っと……その前に……
俺はそんなことを考えながら受け取ったお金が入った布袋を見つめる。
このお金が入った布袋。かなり、いや、結構重い。
まあ、結構厚みのある金貨や銀貨がたくさん入ってるんだから仕方ないんだけど……
ちなみに、これまでゲーム通りだったことを考えるとこの金貨、銀貨もゲームと同じ価値と考えるべきだろう。
ゲームでは金貨や銀貨といったものは使用すると所持金が増えるアイテムだった。
その額はーー
白金貨:100000000トルク
大金貨:1000000トルク
金貨:100000トルク
大銀貨:10000トルク
銀貨:1000トルク
大銅貨:100トルク
銅貨:10トルク
青銅貨:1トルク
ーーといったような感じだった。
トルクというのはこの世界共通のお金の単位のことで、日本の円と同じように使うことが出来る。
だから俺は今金貨一枚に銀貨五十枚で合計して150000トルクあるということになる。
まあ、俺の元の〔エレパト〕のデータからしたらそこまで多くないけど、それでもこの世界の普通人達以上にはあると思う。
だけど、重い。
まあ、この重さはいわゆる嬉しいの重さってやつなんだけど……
「それでも重い事には変わりないんだよなぁ……」
ゲームとかだと手に入れたアイテムやお金は全部異空間収納に自動的に収納されるようになってたんだけど、少なくとも今こうやってお金を手に入れても異空間収納に自動的に収納されないから自動で収納されるってことはないよなぁ……
だけどないとこの先不便だからなんとか使えないかな?
試しに俺は手に持った布袋を収納と頭の中で唱えると、次の瞬間俺の手にあった布袋はそこから消えて、頭の中に『金貨一枚』という情報と『銀貨五十枚』という情報が浮かび上がってきた。
お?これは成功かしたっぽいな。
良かった。異空間収納があるのとないのとじゃ全く違うし、なかったらこの国を脱出してもその後の行動がきつくなるところだった。
さてと、それじゃあ異空間収納もあることがわかったことだし、さっそくこの国から脱出……の前にやることがあるからそれを済ませることにしよう。
まずは冒険者ギルドに行ってジョブの取得だな。