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プロローグ

 今、俺がいるのは豪華な装飾がされた大きな部屋。

 そして、俺の周りには多くの人がいる。

 お腹がぽっちゃりしていて豪華な服を着て王冠を被っている男性。

 様々な豪華そうな宝飾品を身に纏っている女性。

 その二人を守るかのように立つ騎士甲冑を身に纏っている人達。


 ここまでどこかで見たことがあるような光景だな……


 そして、俺の隣には制服姿の男子が一人に女子が三人。全員制服だけど制服は三人共、皆バラバラだ。


「おお!よくぞ召喚に応じてくれた!我らが勇者達よ!どうかこの世界を救ってくれ!」


 俺がそんなことを思っていると、突然、王冠を被っている男性が玉座に据わりながらそう言った。


 ……どうしてこうなったんだっけ?




 確か今日は天気がよくて空には雲一つない綺麗な青空が広がっていて強い日差しが照りつけていた。

 そんな日に俺、飛鷹(ひだか)勇人(ゆうと)は憂鬱になりながらもいつもの通学路を使い学校へ向かっていた。


 本当はあるゲームをやりたかったんだけどなぁ……


 それで早く帰ってあのゲームをって思ってたら突然「危ない!」っていう声が後ろから聞こえたと思ったら後頭部に鋭い痛みが走って気を失って気がついたらこの状況だった。


 うん。ダメだ全くわからん。

 何が起きたのか理解できない。

 だけどあの時の後頭部の鋭い痛みは無くなっている。


 まぁいいや。とりあえず状況を把握しよう。

 まず、ここはどこかっていうとまず間違いなく日本じゃない。

 というか地球なのか?


 まず言葉がわかるから日本語で話しているっていうのがわかる。

 対して、ここにいる人達は皆外国人みたいな顔立ちをしているし、とてもじゃないけど日本人には見えない。


 それに、今の現代で王冠被っている人は俺が知らないだけでもしかしたらいるかもしれない。


 だけど、あんな騎士甲冑を着込んで剣を腰に下げている人なんて見たことがない。


 あれって本物なのかな?


 鞘だけしか今は見えないけど、目に見えるもの全てが本物にしか見えないな……それに、俺が今いる場所も映画セットのような作り物なんかには見えないし……てことはこれ、本当の異世界召喚?


 今はテレビの企画でドッキリです!って言われた方が信じられるんだけど……


「あの、世界を救えってどう言うことなんですか?それにここはどこなんですか?」


 お、制服の男子が質問したぞ。


 見たこともない制服だし、当たり前だけど知らない人だ。

 なんかキラキラしたオーラが見えるような気がする。

 イケメンだし、クラスでは中心にいるタイプかな?俺とは真逆の存在だろう。


 他の女子二人もイケメンくんとは違う制服だけどどちらも見たことない制服だ。三人とも俺が見たことはない制服だから俺が住んでいる付近の学校ではないと思う。


 そんなことを考えていると王冠を被った男性がイケメンくんの言葉に一回頷く。


「うむ、混乱するのも当然だろう。いきなりこんなところに連れてこられたのだからな」


 男性はそう言うと一度大きく息を吐き、真剣な表情になった。だけど俺は見逃さない。

 今、真剣な表情になる前に一瞬だけ心底めんどくさいといった表情になっていた。


 他の三人は気づいてないけど俺はかなりよく見ていたから簡単に気づけた。

 それに、その事に一回気づいてしまえばもう見間違いようがないほどはっきりとわかる。

 今も顔は真剣な表情になっているが眼の奥にはめんどくさいという感情がありありと浮かんでいる。


 ……これは警戒しておいた方がよさそうだな。


「まずは自己紹介をしておこうか。私はローデリッヒ・フォン・ベルンシュタイン。このアインベルク王国にて「アインベルク王国!?」む?どうかしたのか?」


「い、いえ。なんでもありません……話を遮ってしまいすいませんでした」


 この国の名前を聞いた瞬間、俺は思わず叫んでしまった。

 あの王冠を被った男性……もう王様でいいか。いかにも王様って感じだし。

 その王様はそんな叫んでしまった俺を一回侮蔑を瞳に込めて俺に視線を向けた後、また、直ぐに真剣な表情に戻った。


 ……やっぱり一回気づいたらそこばっかり気にしちゃうな……


 だけどそんな事よりも俺が狂う程やり込んでいたとあるゲームの一場面を思い出していた。


 そのゲームとは〔エレメント・パートナー〕、通称〔エレパト〕と呼ばれるオープンワールド型RPGだ。


 ちなみにこの俺が寝て起きてからやろうと思っていたゲームこそ、この〔エレパト〕である。


 このゲームは自分で操作する主人公プレイヤーキャラクターの数多の職業やステータスの振り方など自由性の高いゲームだった。

 しかし、これだけ主人公に力を注いでいるが、このゲームの魅力はそこではない。


 この〔エレパト〕の魅力、それは眷獣(パートナー)と呼ばれる存在にある。

 この眷獣とは一般的に知られているスライムやゴブリンといったモンスターはもちろん、精霊、悪魔、天使様々な存在を仲間にして共に戦い、育成、進化させていくことができるのだ。


 まあ、そんな眷獣の育て方なんかも普通のゲームとは違うのだが、長くなるから置いておく。


 そして、その多種多様な眷獣の成長を見たい!眷獣、すべての成長を知りたい!眷獣の可能性を見届けたい!と、そんな事を思った廃人(プレイヤー)が後を絶たず、広大なオープンワールドもあり、無限にできると数多の廃人達に言わせてきた超人気オープンワールド型RPGそれが〔エレパト〕だ。


 俺も元々育成ゲームなどが好きだったこともあり、この自由性も高く、無限にやれる〔エレパト〕にのめり込んだ廃人の一人で、中学三年生から今の高校二年生までの約三年間のほとんどの時間を捧げていた。


 ……そのせいで初めの頃は定期テストが一時期壊滅的になったり、本来余裕だった高校の入学試験が自己採点で大変な事になったりもしたけどそれは今は関係ないからこれも置いておこう。


 そして、さっきも言ったとあるゲームのとある一場面とは、この長々と語った〔エレパト〕のプロローグだ。


 このゲームの始まりは主人公が異世界の"アインベルク王国"という国に勇者召喚と呼ばれる儀式によって召喚されるところからスタートする。

 そして、さっきあの王様が言いはなったこの国の名前はアインベルク王国。ついでに名前も完全一致のローデリッヒ・フォン・ベルンシュタイン。


 ……うん、通りでこの王様やその隣に座っている王妃様も見たことがあると思ったよ……


「うむ、そうか。では、話を戻そうか。まず、先程も言った通りここは君達がいた世界とは別の世界のアインベルク王国だ。この世界は今危機に瀕している!そこで!お主達、勇者を召喚させてもらったのだ」


 そう王様は玉座に腰掛けたまま尊大な態度でその立派なお腹をタプンッと揺らしながら言ってきた。


 ……うん……ゲームのセリフそのまんまだよ……

 違う所と言えば召喚されたのが一人じゃなくて複数人だからかお主がお主達と複数形になっているくらいかな……

 まあ、これなら聞いてなくても問題はないな。

 セリフなんてストーリーを何千回、何万回も読んだんだ


 ……やっぱりここは〔エレパト〕の世界なのか……


 それにしてもゲームの世界に召喚なんて本当あるんだなぁ……言葉とかもわかるのはその召還の特典みたいなものかな?

 正直、〔エレパト〕の世界に来れたのはちょっと嬉しい。








 召喚されたのがこのアインベルク王国じゃ無かったらなぁ!!!


 あー!最悪だ!せっかく〔エレパト〕の世界に来れたのになんでよりにもよって、召喚された国がアインベルク王国なんだよ~!

 もっと別の国なら良かったのに!


 〔エレパト〕はゲームを始める時に召喚される国を選ぶ事ができる。

 選べる国は大国の六カ国。

 大国と呼ばれる国自体は九カ国あるのだが最初に選べるのは六つの国だけなのだ。


 一つ目の国は自然を愛し、森と共に生きる天然の迷宮のエルフの国『アルスト』別名『RTA殺しの国』。


 二つ目の国は山に囲まれた天然の要塞に囲まれ、鍛冶に精通しているドワーフの国『ドワルト』。別名『終わりのない国』。


 三つ目の国は広い国土の大半が平原で、多くの農作物を生産、輸出をしている獣人の国『ベネルギア』。別名『(ストーリー)終わりの国』。


 四つ目の国は海に面し、貿易が盛んで商業国家である商人の集う街『ベルゼブド』。別名『詐欺の国』。


 五つ目の国は荒くれ者が集い、治安は悪いが国力は大国含めたすべての国でトップの力を持つ国『ヘルシャフト帝国』。別名『世紀末』。


 そして、最後の国は俺がいる人間至上主義、選民思想が強く、他の種族を奴隷としてしか見ていない国、アインベルク王国。別名『(開発陣営)歓喜の国』。


 この六つが〔エレパト〕を始める時に選べる大国六カ国だ。

 ……え?どれも別名がひどい?

 ……まあ、実際には全部そんな別名通りとかではなく、ただプレイするだけだったらそれぞれ気を付けなきゃいけないポイントが違うだけでそこまで酷いわけじゃないんだ。


 ……このアインベルク王国以外は。


 このアインベルク王国は最初デフォルトで設定されてるだけあってほとんどの人が最初はアインベルク王国でプレイを始める。

 そして、特に変わったことはなく普通にアインベルク王国のストーリーは進んでいく。

 ストーリーの中でNPCとは思えないほどの感情表現、行動を見せるNPCを見て、絆されていった初心者廃人達は「アインベルク王国以外を選んでたらこんな感動的な出会いはなかっただろう」と思い、アインベルク王国でゲームを続けるのだ。


 だが、ストーリーを進めるといきなり、このアインベルク王国は本当の姿を表していく。

 その本当の姿とは、この王国の腐敗。


 実はこのアインベルク王国は勇者を都合の良い奴隷のようにしか思っておらず、絆を深めたNPCを人質にして自分達が召喚した勇者を戦争の道具として使い潰すつもりでいたのだ。

 そんな事をしている内に勇者はどんどんと心を壊していき最後には大国すべてを敵に回し死亡。

 数々の廃人達を発狂させてきた開発陣営の強制バットエンドの鬼畜シナリオだ。


 かくいう俺もこのシナリオに発狂させられた一人で、何度この結末を回避しようとしてこのシナリオで心を折られ、何度涙を流したことか……


 まあ、そんな諦められなかった廃人達の手によってそんなアインベルク王国を選んでもバッドエンドにならず、むしろ一方的に腐ったアインベルク王国を一掃できるルートを見つけられた。


 ……いや、本当に廃人の執念ってすごいよね。

 そのルートを見つけた後の開発陣営のインタビューを見たけどまさか見つけられるとは……って言ってたもん。


 そんな腐っているアインベルク王国に今、俺はいる。


 ……勘弁してよ……


「――ということなのだ。ぜひお主達の力を貸してもらいたい」


 っと。王様の説明が終わったみたいだ。


 ゲームの時と同じならモンスターが大量発生していて、それを倒すために勇者の力が必要みたいな感じだったと思うんだけど……


「お話は分かりました。しかし、私達にはそのモンスターというものがどのようなものなのかすら分からないのですが」


 お、黒髪ロングの気の強そうな委員長という感じの女子が……うん。委員長さんでいいか。

 その委員長さんが王様に手を挙げて質問をした。


 委員長さんの質問の内容からしてやっぱりモンスターを倒すためって説明したみたいだな。


 正直委員長さんの質問は本当にありがたい。

 考えすぎたのと、多分説明はゲームと同じだろって思ってたから王様の話はなんにも聞いていなかったからな。

 ここで魔王や世界を救う、なんて単語が出てきたりしていたら確実にアウトだった。

 俺の記憶通りの王様っぽいから、話を聞いてませんでしたなんて言ったら絶対に王様の機嫌を損ねて後々処分されてしまう。


 今ここで王様の機嫌を損ねてもすぐには処分される事は他の三人がいるから不信感や恐怖感を与えるわけにはいかないから無いだろう。

 だけど、後で事故に見せかけたり、殺された事にされて処分されてちゃうだろうな。


「うむ、それもそうか。では、実際に見てもらった方が早いだろう。おい」


「はっ、只今。勇者様方こちらへどうぞ。ご案内いたします」


 その委員長さんの質問に頷いて答えた王様は近くにいた騎士に指示を出した。

 すると、その騎士は一礼してから俺たちに付いてくるように促して歩き始める。


 だけど三人はこのまま着いていって良いのかわからずその場で顔を見合わせて止まっているが、俺はその騎士の後ろに着いていく。

 そんな俺を見たからか三人も俺の後ろを着いてくる。


 これも覚えがある。

 これは確か主人公が委員長さんのような事を聞くと起こるイベントで選択肢が出てきていいえと言ってもはいと言うまでと選択肢を選ばされる最初で最後の強制チュートリアルイベント。

 委員長さんの質問でこのイベントが起こったんだろう。

 まあ、この世界が〔エレパト〕の世界だって分かった時点で、元々なんとかしてこのチュートリアルイベントをするつもりだったからありがたい。

 このチュートリアルイベントだけは絶対にしないといけないものだからな。


 そんな事を考えながらしばらく見るからに高価だとわかる壺などがおいてあったりする廊下を歩く。


「すいません、今から行くところはどこなんですか?」


 そして、しばらく歩いたところでイケメンくんが口を開いた。

 この質問は当然だ。

 これから向かうところがどんな場所なのか分からないまま歩くなんて不安になるに決まっている。

 それもほぼ拉致と変わらない状態で連れてこられたんだ。

 普通ならその場で騒ぎそうなものだけど困惑と怒りよりも好奇心の方が強いのか、はたまた現実味を感じていないだけなのか、その辺りの判断はできないけど、取り敢えず冷静なのは分かる。


 まあ、一人ビクビクしてて周りに合わせてただ着いてきただけっていう可能性もあるけど、それは今は関係ないから置いておく。


 そんなイケメンくんの質問に答えようとしたのか俺達を案内している騎士騎士は歩きながら少しだけ視線をこっちに向けてきた。


「はい。今から勇者様方モンスターを実際に目にしていただく前に……」


 そして、そのまま騎士は俺達がどこに連れて行かれるのかを説明しようとする。

 ……俺はどこに行くのか知っている。

 チュートリアルイベントなだけあって〔エレパト〕の魅力である眷獣との初めての出会いの間……


「契約の間にて、眷獣との契約をしていただきます」


 すべての始まり、契約の間だ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白い、これからも読みたいと思ってくださったらブックマーク、いいね、感想、下の☆☆☆☆☆に評価をお願いします。

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