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というわけで地球に転生しました、どうも魔王です。  作者: 海溝
プロローグ 魔王と魔法使いと幼馴染
8/8

魔王と遠足と野生動物

忙しくて書く時間が設けられない……ちまちまと更新は続けます

「はい、みなさんこの広場から出ないようにして下さいね」


 ふむ、成程やはり日本人の気質もあるのでしょうが先生方の統率能力も凄まじいですね。勝手に動く子をきちんと把握して、その子を制御できる子を近くにいさせたりしれっと先生が近くにいたりします。

 当たり前の事なのでしょうが、これをできるのは素晴らしいことです。こういう事の積み重ねこそ、日本人特有の統率力というものが生まれるのでしょう。そう感心しながら私は優ちゃんと隼人君を引き連れて広場の端に来ました。ここで昼食を食べるのですが、3人中2人が他の生徒達と距離をとっている関係上私もひっそりとする必要があるのです。無理ですけど。


「あ、恋莉ちゃんみっけ!」


 現在私は、図らずしもクラスの中心人物となってしまっています。


「やっぱり隠蔽魔法で」

「ダメですよ優ちゃん」


 そしていつものごとく私の周りに近づく女子や男子を牽制しようとする優ちゃんの事は隼人君に任せたいんですが、またあの子は逃げましたね……?! 


「相変わらず隠れるのが上手いですね、全く」

「私と恋莉の時間を奪うとは……万死に」

「はいはい少し静かにしてください」

「むぅ」


 私の誕生日からそういう感情をいっそう隠さなくなりましたね貴女。本当に、最高に独占欲が強いですね。大好きです。


 それはそれとして、です。子供の好奇心の強い目というのは眩しいんですよ。私のネット好きとか電子辞書の持ち歩きも影響しているんでしょうが、先生よりも身近で、好奇心を満たしてくれる人というのは貴重なんでしょうか。学校内で私の周りに人がいない日がありません。本当に、子供とは素敵な生き物です。


「恋莉ちゃん、優ちゃん、一緒に食べよ!」

「私も!」

「俺も!」

「僕も!」


 結局クラスメイトほぼ全員が私達の周りに集まってきます。断って優ちゃんや隼人君と静かに食べたい気持ちもありますが、みなさんと食べるのも楽しいものですから勿論オッケーします。優ちゃんが周りに殺気を放とうとするのを手を握る事で抑えつつ、レジャーシートを引いていきます。


 優ちゃんは私の右側の定位置に座り、左にはしれっと戻ってきた隼人君が座ります。確かにそこにいてくれるとありがたいですが、優ちゃんの制御を私がしているタイミングで戻ってくるのはなんなんですか? というか貴方周り女子ばっかりなの気になら……ないんでしょうね。お弁当を置いてぬぼーっとしている顔を見て脱力してしまいます。どこ見てるんですか? 山? 


「んー」

「どうしました優ちゃん?」


 優ちゃんが正座をしている私の膝に頭を乗せながら伸びをします。最近私の膝枕がお気に入りみたいですね。至近距離で優ちゃんのリラックスした顔が見れるので私としても役得です。ですが人前でするのは珍しいですね。


「疲れた」

「本当は?」

「恋莉は私のもの」


 そうですか。では今は甘えさせてあげましょう。みんなレジャーシートを引いている途中ですしね。みんなでいただきますをするのにも余裕はあります。


「優ちゃん、いいなー」

「ここは優ちゃんの特等席ですから」

「ラブラブだね」

「そうですよ」


 私と優ちゃんは親友ですから! しかも一生を誓い(縛り)合った仲です!


「あ、リスさん」

「どこ?!」

「ほらあそこ!」


 どうやら一瞬で興味が変わったようです。微笑ましいですね。にしてもリスですか。警戒心が強いと思うんですが、人前に現れるもの、え?! 10匹近く木の上にいませんか?!


「変」

「変ですね。人馴れしてるんでしょうか……」


 じっとこちらを見ていますね……具体的に言うと私の左隣ですか。その左隣の男の子もジッと見つめ返しています。何か興味をそそる要素が彼にあるんでしょうか?


 見つめ続ける事1分ほど、リス達は山奥へと駆けて行きました。なんだったんでしょうか?


 それからクラスみんなでいただきますをし、食事をするのですが、タヌキやネコ、またリスが来たりと大盛り上がりです。みんな気づいていないみたいですが、動物達の視線は全て私の左隣を向いています。なんとなく嫌な予感がしてきましたね。この公園が使えなくなるのは困りますが……


「隼人君」

「なに?」

「この山ってクマとかの肉食の大型哺乳類っていますか?」

「いるよ。クマが大人4匹と子供3匹」

「降りてくる可能性は?」

「普段はないけど、」


 貴方がいる場合あり得る話と。分かりました。では優ちゃん、協力して下さい。


「隠蔽は任せて」


 よろしくお願いします。では、この広場周辺の人間にマーキングをしましょう。


 マーキングのために周囲に魔力を広げていると、山の方に大きめの反応があります。クマっぽいですね。


「来たよ」

「優ちゃん、勇者にはバレないように」

「大丈夫、離れてるしあいつは魔力感知が苦手」


 え? そうなんですか? もしかして感知は優ちゃん頼りだったんですか。


「少しトイレに行ってきます」

「私も」

「俺も行く」

「あ、わた」

「ごめんなさいね」


 一緒に行こうとした子に暗示をかけて意識を逸らします。さて、トイレの方に行く私達の幻影を出して優ちゃんに私達を隠してもらいます。


「直接行きますよ」

「分かった」

「大丈夫なのか?」

「ええ」


 隼人君に隠し通せると思っていませんし、公園に熊が降りてきたとなればこの公園が閉鎖されます。流石に山に戻るなら熊が殺されることはないでしょうが、山に立ち入り禁止になると困りそうな人も隣にいますしね。一応緊急事態です。


「いた」


 そして間もなく、熊が目の前に現れます。これは、下手なあっちの世界の魔物より強いですね。聖剣のない勇者なら殺せそうです。私と優ちゃんの敵ではないですが、無力化には苦労しそうです。


「あ、でも小心者なんですね」

「恋莉?!」


 流石に強い生物を前にしたせいで、魔力が昂ってしまったみたいです。少し威圧していました。隼人君も私に対して警戒を抱いたよう。この子やっぱり野生児ですね。とりあえず急いで引っ込めますが、もう遅い気が


「ですよねぇ!!」

「恋莉!」

「手助けは?」

「いりません!」


 威圧が解けた瞬間目の前を襲ってくる熊の腕を受け止めつつ勢いの方向に飛びます。木の幹に着地してそのまま1発殴ってみて耐久を、


「あら? まだ全然本気じゃないんですが。苦手な体術だったんですけど……」


 すると熊は気絶しました。確かに内部に衝撃を入れましたけど、ここまで耐久が低いものですかね? とりあえず回復回復。


「イルマを一撃? 恋莉、お前何者?」

「……仕方ないですね。誤魔化す必要もないでしょうし、そもそもここに来た時点で隠す気はありませんでしたからね」

「いいの?」

「ええ。隼人君なら問題ないでしょうし、多分私達と同じ立場の人間と知り合いです。そうと知っているかはともかくとしても」

「わかった。任せる」

「お任せ下さい。では改めて自己紹介を。異世界の魔王にして全てをゼロに還す者、アンリこと藍川恋莉です。以後よろしくお願いします」


 そう言ってスカートを少し両手でつまみ上げ、腰を落としてカーテシーをします。勇者君と初対面の時以来でしょうか。自己紹介をするのは。


「そして私が、異世界の一般人。魔王アンリの友人に育てられた、魔王の敵である勇者パーティーの魔法使いにして恋莉の親友。改めてよろしく」


 あら、優ちゃんは元の名前を名乗らないんですね。その辺は個人の自由なので別になんでもいいんですが。と言う事で隼人君? 何か反応を下さいな。


「2人とも、なんの冗談? 厨二病?」

「失敬な。至って真面目ですよ。魔法でも使ってみせますか?」

「んー、いいや。本当だと見られたら不味いだろうし。()()()()()()()()()()()()


「へぇ、やっぱり魔法、もしくはそれに準ずる物に触れた事がありますね?」

「さぁ?」


 これは触れないでおきましょうか。今はそれが本題ではありませんし。まあ念話はさっきからずっと使ってたようですが。


「テレパシー」

「あー」


 優ちゃんの一言にどう返すか悩んでいる隼人君ですが、これに答える必要はないです。優ちゃんの手をにぎにぎして私の意思を伝えます。


「ん、今のは撤回。ワタシハナニモキヅイテナイ」

「ふふっ、棒読みも可愛いです!」

「わっぷ」


 思わず優ちゃんを抱きしめます。んー、やっぱり柔らかいですねぇ。心地いいです。


「最近恋莉が抱きつく頻度が増えたのが嬉しい」


 私も素直に甘えられるのが楽しいですから、ただ寝起きの無意識の甘えに対する羞恥は無くなりそうもありませんが。


「それで、この山の動物と仲がいいという事で間違いありませんか?」

「うん。みんな友達だよ。そこのイルマは親友って言える」


 この熊さんイルマというんですね。しかし襲われたからとはいえ隼人君の親友を殴ってしまいました。後で彼、或いは彼女に謝らなければ。


「ちなみにそいつはメス」

「それは本当に申し訳ないことをしましたね。身篭っていたりは……しないみたいですね、よかったです」


 では詳しい話し合いを。




「なるほど、ではそうしましょうか」

「言い聞かせればみんな降りてこないと思う」


 話し合いも終わり、ある程度予想していた通りの結論に着地しました。ではイルマちゃんには戻ってもらいましょうか。

 そう思ってイルマちゃんを見ると、


「ッ、がうぅぅ」


 怯えて隼人君の後ろに隠れられます。隠れきれていないんですが、魔力も怯えきられて少し悲しいです。


「まあいいです。戻りましょうか。勇者君に対する認識阻害がそろそろ綻びそうです。あの子、さらに弱くなりましたね」


 いい事です。このまま一般人レベルに堕ちれば二度と勇者となる事はないでしょうね。



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