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というわけで地球に転生しました、どうも魔王です。  作者: 海溝
プロローグ 魔王と魔法使いと幼馴染
6/8

魔王の誕生日、魔法使いとのすれ違い

 来る5月10日、私たちは遠足に行きます。しかし直近は私の誕生日です。そうです私もモ◯ハンを買うのです!!


「体験版の方を少し触りましたが、優ちゃんのゲーム機とは全然動かし方が違いました」

「うん。そうだと思う」

「しかし、体験版の最高難易度も倒したのでもう大丈夫です! 全武器種でやりましたよ!」

「寝た?」

「…………」


 優ちゃんが泊まっていない時は寝てないですね。眠たくならないので、仕方ないんですよ。


「まあいいじゃないですか。これで一緒に遊べます。おばあちゃんにダウンロードの許可も貰いました。PCのスペックは十分です」

「今日は寝ようね?」

「はい……」


 優ちゃんが怖いです……。別に寝ないから体調が崩れるとかそういうことは一切ないので大丈夫なんですけど。


「ならいい。で? 結局何使うの?」

「双剣です! あれ楽しいですね。無敵時間を利用して完封できますから」

「硬直時間とか覚えたの?」

「当然ですよ。無敵を合わせる上で必須ですから」


 まあ具体的な数字ではないですが、ずっと使ってれば覚えます。でも体験版では空中乱舞の練習ができなかったのがちょっと不満です。


 優ちゃんとお喋りしているとチャイムが鳴ります。どうやら隼人君が来たみたいです。


「隼人?」

「みたいです。行きましょうか」

「うん」



「恋莉、誕生日おめでとう。これプレゼント」

「これは……」


 1000円分のギフトカードですか。しかもPC版対応の。隼人君らしいというかなんというか……


「ありがとうございます」

「ごめんね? 隼人がこれしかないって言うから」

「だって恋莉が欲しいものとか知らないし」

「本人に聞けばいいのに、恥ずかしがって」


 この人は隼人君のお母さん、美玲さんです。美人で仕事もできるキャリアウーマンらしいです。かっこいいです。


「嬉しいです。ちょうど欲しい重ね着があったんですよ」

「そう?」

「ほら、痛っ」

「気を遣ってもらったのよ。察しなさい」


 小学一年生にそれは酷では? いくら隼人君が大人びてるとはいえ。


「立ち話もなんですし、上がってください」

「ごめんね? 私これから仕事なのよ。だからこれ、私からのお祝いと、おばあさん達にお菓子渡しておいてくれる?」

「分かりました。わざわざありがとうございます。お仕事頑張ってください」

「ええ、恋莉ちゃん、優ちゃん、またね」


 美玲さんに手を振り、見送った後、私達は隼人君を家に上げます。そして沢山のお祝いのご飯のあるリビングに……本当に多いですね。食べ切れる気がしません。


「じゃあ恋莉ちゃん」

「「「「「「お誕生日、おめでとう!!」」」」」」

「ありがとうございます!」


 おばあちゃんからの誕生日プレゼントは貰いましたし、今日は仕事の合間時間を作って来てくれた優ちゃんのお母さんもまだ中身は見ていませんがくれました。後は優ちゃんから貰ってないんですけど……、お母さんと楽しそうに喋ってますね。まあくれると勝手に思い込んでいただけだったのかもしれませんね。私と優ちゃんは、魔王と勇者の仲間なんですから。


「おばあちゃん、トマトがないです!」

「さっき食べてたわよ?」

「え? いつの間に……!」


 考え事をしている間にトマトは私の胃の中に。好きなものを味わったはずなのに記憶がないのは……不覚っ!


「というかサラダの中のトマト全部ない? 嘘だろ……?!」

「どうしました隼人君? 早い者勝ちですよ?」

「恋莉お前、好きなものに関しては遠慮なさすぎない?」

「好きだから仕方ないんですよ」


 そうです、好きなんですよ。きっと。だからこういう感情になるのも仕方なくて、八つ当たりしてしまうのもきっと仕方ないんです。


「あ、隼人君、そのトマト下さい!」

「目敏すぎる! 流石に一個は食わせて!」

「ちぇ、仕方ないです。唐揚げ美味しいですねぇ」

「恋莉、あげる」

「お、ってこれピーマンじゃないですか。好き嫌いはいけませんよ」

「苦いから嫌い」


 優ちゃん好き嫌い激しいんですよね。ダメですよ、ちゃんと食べないと。ほらあーん、こら、顔を背けないで下さい!


「優ちゃん、一個だけ食べましょうよ」

「嫌。ピーマンを食べなくても死ぬわけじゃない」

「死ぬわけじゃなくても栄養不足は健康に悪いですよ」


 魔力を扱う上でも身体が健康である事でいい事はあっても悪い事はないんですから。たーべーてーくーだーさーい!


「うぅ、はむっ。むぅぅ」

「はい、偉いですよ」


 優ちゃんの頭をえらいえらいと言いながら撫でます。こういう子供っぽいところも可愛いですね。これも勝手な庇護欲なんでしょうか。


「恋莉さんは大人びてるわね。本当に7歳なの?」

「7歳ですよ? それより、優ちゃん、人参も食べましょう」

「う、バレた」


 バレないとでも思っていたんですか? 甘いですね、こっそり端っこに寄せているのは見えてますよ。キャベツの下に隠してますね?


「はいこれも」

「うぅ」

「あーん」

「恋莉、嫌い……」


 そうですか。そうでしょうね。貴女の里親を殺したのは私ですし、憎悪を向けられましたからね。自分勝手に助けて自分勝手にまた孤独にさせたのは私です。存分に恨んでください。私は自分勝手な魔王です。だから、貴女が健康でないと不安なので好き嫌いせずに食べてください。あの2人も悲しみます。


「自分勝手」

「否定しませんよ」


 文句を言いながら食べる優ちゃんはやっぱり偉いですね。自分が一度無理だと思ったことは誰になんと言われようとも無理な子もいるみたいですし。


「恋莉は誕生日でも変わらないな。普通はもっと我儘になるものなんだが」

「そうなの? 俺はその方が恋莉らしいと思う」

「私も」

「結構はしゃいでますよ? 優ちゃんに泊まってもらいたいって我儘も言いましたし」


 優ちゃんは快諾してくれましたし。じゃあなんで誕生日プレゼントくれないんでしょう? あんなに普段ぐいぐい来る優ちゃんが恥ずかしがってる訳ありませんし、やっぱり親しいと思っているのは私だけなんでしょうか? でもやっぱり仕方のない事です。そうです、仕方ないんです。


「恋莉……」

「あ、ご馳走様です。ケーキを食べられなくなるので私はここまでにします」

「はい、お粗末様でした」

「私も、ご馳走様でした」

「俺ももう無理……ご馳走様、恋莉のおばあちゃん」

「2人もお粗末様でした」


 さあ、腹休めにゲームです!


「とりあえず私は村クエの方進めます。2人で先やっといてください」

「うん」

「早めにしてくれよ」

「余裕ですよ」


 ノーダメでどこまでいけるか試しますよ!



 優side


「…………そこ、今、はいよゆー」

「ゲーム中は丁寧な言葉じゃないのか?」

「たまに乱れる。気が抜けてる時とか」


 恋莉は未だに魔王であろうとしているから、それを忘れると敬語が抜ける。と思われる。義父さんは昔は敬語なんて使わずにいたって言っていたから多分あってる。でも、私はどっちの恋莉もいいと思うから、あまり気にしない。未だに私を勇者パーティーの(自分を嫌いな)魔法使いと見ることがあるのはやめて欲しいけど。


「優はいつプレゼント渡すんだ? 閃光よろしく」

「なんか渡すタイミング逃して……。落ちた」

「優から貰えてないって落ち込んでるっぽいけど。引きつけといて」

「……よく分からないけど、恥ずかしい」


 大型モンスターを引き寄せているアバターが、少しだけ変な挙動を取る。隼人が黙ってフォローしてくれた。本当に小学1年生なのか疑問に思うほど気を使える子だ。父親の影響とか言っていたけど、どういう人なんだろう?


「私のプレゼント、地味な気がする」

「俺のを見て言ってる?」

「やっぱりわざとなんだ」

「あ」


 隼人を見ていると、気を使えるっていうのも考え物だと思う。私の性格をたった2週間程度でなんとなく察して、明らかに誕生日プレゼントとしてはパッとしないものを持って来ている。半分ぐらいは無意識なんだろうけど、そういう気遣いは嬉しいけど損すると思う。


「嬉しいけど、でもあんまり好きじゃない」

「俺が好きでやってることだから」

「多分エスカレートしていって、自分が好きかどうかよりも相手の得になるかどうかで判断するようになる」


 そう、恋莉という魔王のように。

 昔から自分の事にはあまり頓着しなかったらしく、魔力を栄養素に変換し、食事を必要としないようにする。眠らなくてよい身体なのをいいことに他人のために働き休む事を忘れる。などと自己犠牲の塊だったらしい。

 挙げ句の果てには、魔族と人族の戦争回避の為に自らの()を削った。恋莉の魂は見た事がないけど、きっとかなり削れてるはずだ。

 集められるだけの恋莉の魂の欠片は集めたけれど、その欠片はあっちの世界で保管されている。帰る術は今のところはないので、恋莉は今も魂の欠損の痛みで苦しんでいるはずだ。それを表に出さなくても。


「だから、やめた方がいい。そのやり方は隼人を大事にしようとする人を傷つける」

「そんなに大きな話じゃない気がするけど、まあ分かった。気をつける」

「そうして。討伐完了」


 そして話が終わるとほぼ同時に討伐が完了した。正確には捕獲だが、些細な事だ。


「珠落ちない」

「こっちも。逆鱗はもういい」


 今作っている武器の中間武器の素材が足りない。落ちない時は本当に落ちない。


「確率はクソです」

「っ!」

「恋莉いつの間……あれ?」


 一切こっちを見てない? あ、採取クエスト。なるほど。


「あと何個?」

「一個です。妖怪一足りないです」


 なるほど。私たちも確率の沼にいるからちょっと恋莉が苦しんでる様子を見て心を落ち着けよう。


「優って恋莉には甘えたがりだよなぁ」

「なんて?」

「なんでもー。あ、そこの裏にあるぞ」


 隼人が何かをボソっと呟いていたが、隼人のことだし悪口ではないと思う。というか隼人、恋莉と距離近くない? 2人が向き合ったらキスできるぐらいだよ、その距離は。


「むぅ、」

「…………分かったよ。ったくもう」

「よし」

「2人とも何を言ってるんです?」


 やはり隼人は理解がある。隼人のお父さんは素晴らしい人だ。彼をこんな風に育てたのだから。と、1人頷いていると恋莉が苦笑しながら聞いてくる。

 画面を見るとクエストクリアになっているので、無事確率の沼から抜け出せたようだ。


「あとちょっとですかね?」

「双剣はちょっと先だったはず。頑張って」

「はい!」


 恋莉はまたゲーム画面に向き合う。あ、また誕生日プレゼント渡し損ねた。ずっと鞄を触ってる気がするな……



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