混乱
本当にすぐに支度を整えたルフナ様は部屋へと入るなり俺を確認して顔を破顔した。
「よかった…まだいてくださって」
そう言ってまた隣に来るとピッタリとくっついて座ったのだ…
その様子に屋敷のメイドや執事達がざわついた。
な、何事なんだ。
彼らの視線に落ち着かなくなる。
「もう!みんな私の王子様見すぎです!ほら仕事仕事!お茶と美味しいお菓子をもっと持ってきて」
「は、はい」
「かしこまりました…」
メイド達は頭を下げるともう一度仲良く座る俺達をみて首を傾げて部屋を出ていった。
「ニルギル様ももういいですよ、王子様は責任もって私が王宮にお送りしますから!ニルギル様は溜まってるご自分のお仕事をなさって下さい!きっと色々と大変ですよね!?」
ルフナ様がにっこりと意味ありげに笑う。
「王子…大丈夫ですか?」
ニルギル様は不安そうに俺を見た。
「ああ、問題ないよ」
俺の役目はルフナ様のご機嫌をとること…見る限りそれは出来た気がする。
ニルギル様もルフナ様のご機嫌な様子に頷くと…
「では護衛を数名置いて行きますので…」
ルフナ様はご機嫌に頷いた。
ニルギル様が居なくなり護衛も廊下に出されると部屋には数名のメイドとルフナ様と俺だけとなった。
「王子様…昨日はなんでいてくださらなかったんですか…」
ルフナ嬢は可愛い顔をこちらに向けて不満げに頬を膨らませてじっと見つめてきた。
「いや…昨日ちゃんと部屋で会った…よね?」
覗き穴だったが二人が会うのは確認した。
「違う…あれは違うもの…」
ルフナ嬢がボソッと何か呟いた。
「えっ?」
「まぁ今日は来てくれたから許します!次は必ず王子様がいて下さいね!」
「わ、わかった」
俺は意味がわからなかったが機嫌が悪くなっても困るのでとりあえず頷いておいた。
その後もルフナ様は俺から離れることなくずっとそばに寄り添っていた。
最初は緊張していた俺も少し慣れてきた頃…そろそろいいかと帰ろうかとすると…
「えっ…もう?」
ルフナ様から寂しそうな声が漏れる。
「結構長居をしてしまったからね、また来るよ」
俺は次も会えると声をかけるとルフナ様は寂しそうな顔を無理やり笑って見せた。
「約束ですよ」
「ああ」
俺は頷いて護衛と共に屋敷を出ようとすると…
「これはこれは…グレイ王子。娘に会いに来ていたのかな?」
ちょうど帰ってきたロウンティ公爵と鉢合わせした。
彼とは何度か公務で顔を見ている…鍛えられた体に整った容赦、ルフナ様の様な子供のいる父親には見えないほど若々しい。
「これはロウンティ公爵、留守の時にすみません。今帰るところです」
軽く会釈程度に頭を下げるとじっとこちらを見ている…この見方騎士団長と似ている。
まるで心の中まで見透かすような眼力に背中に汗をかいた。
しかしそんな事は臆面も出さずに平然とした顔をしていると
「うん、今日の王子はまぁまぁですね…」
何か呟くとニカッと笑った。
「お父様!#私の__・__#王子様を虐めないでください!」
じっと見つめる父親にルフナ様が怒って声をかけた。
「ルフナ!ただいま!いつものようにほら!」
ロウンティ公爵は娘を見るなりその凛々しかった顔が崩れた…その顔は先程の威厳ある顔の効果が半分ほどになっていた。
目尻を下げて手を広げてルフナ様に近づいている。
ルフナ様は恥ずかしそうに顔を赤く染めると
「お父様…今は駄目、王子様が見てるでしょ」
ルフナ様から何かを拒否をされてあからさまに肩を落として沈んでいた。