婚約者
あれ?聞いていた話と違う…
俺は少し動揺した…王子の話だと触ろうとしても触れさせないと言っていたが…
視線を腕に下ろすとそこにはしっかりと自分の腕を掴むルフナ様がいた。
「すみません!どうしても王子様に会いたくなってしまって…駄目でしたか?」
そう言って下から伺うように見上げるルフナ様は整った可愛い眉を少し下げた。
「い、いえ!」
可愛い女の子に触られて悪い気などない!思わず本音で迷惑でないと叫びそうになる。
「すみません…ルフナ嬢。あなたと居たいのですがまだ公務が…」
どう対応していいかわからずにチラッとニルギル様に助けを求めると
「ルフナ様、明日には王子も時間が取れますのでよかったその時にお茶でもするのはどうでしょうか?」
ニルギルが笑いかけると
「私は#今__・__#王子様と一緒にいたいのです…邪魔はしませんから見ているだけでも…」
しゅんとしながら話す様子にまるでうさぎの耳が垂れているような錯覚を覚える。
可愛らしい様子にニルギル様も思わず少しなら…と了承していた。
ルフナ様を部屋へと通して俺はソファーに座らせると
「すまないがここでゆっくりしていてくれ、私は少し確認しないといけない書類があるので…」
そう誤魔化していつでもよかった書類を手を伸ばすと机に向かった。
ニルギルは護衛の兵士を呼ぶと俺に近づいてそっと耳打ちしてくる。
「グレイ様が部屋に近づかないように手を打ってきます。あなたはルフナ様の御相手を…」
「しかし…」
「グレイ様の様に笑って近づけばすぐに帰ると思います…なぜ今日はこんなに機嫌がいいのか分かりませんが…」
ニルギル様が首を傾げるとルフナ様達に声をかけて部屋を出ていった。
ニルギルが居なくなると…
「みんなお茶を入れてくれる?王子様いいですか?」
ルフナ様が声をかけて確認してきた。
「好きにしていいよ」
俺の返事にルフナ様は嬉しそうに頬を赤らめた…
グレイ様はなんでこんな可愛い人で満足できないのだろう。
そう思えるほどの笑顔だった。
少し集中して書類を確認しているとふっといい香りが鼻を掠めた。
顔をあげるとお茶を持つルフナ様が笑顔で目の前に立っていた。
「王子様お茶を入れました。少しお仕事はお休みして飲んでください。頑張りすぎですよ」
「あ、ああ。ありがとう…じゃあ少し休憩して頂こうかな」
ルフナ様自らお茶を?
あまり放っておいても良くないと思い書類を置くとルフナ様と相向かいのソファーに座った。
「はいどうぞ」
ルフナ様は自分の元に座っていた場所ではなく、俺の隣にピッタリと座るとお茶を置いてニコニコと笑っている。
その顔は飲んで欲しいと言わんばかりで思わずカップに手を伸ばした。
香りも良かったが味もいい!きっと高級なお茶なのだろう…凄く美味しい。
「うん、美味しいよありがとう」
ニコッと笑いかけると
「やった!」
ピョン!と軽く跳ねた!その姿は本当にうさぎのようだ…
「これも食べてください!私も手伝って作ったんです!」
そういうといつの間にか用意されたお菓子を掴んで口元に持ってきた…
これは…このまま食べろと?
「い、いただきます…」
はじめての行為に必死に赤くなるのを抑えてルフナ様からの手渡しのお菓子を口にはこんだ。
「ん…美味しい…」
「よかったぁ~」
本当は味などわからなかったが俺の答えにルフナ様は本当に嬉しいと笑っている…そしてその笑顔を見ると胸の奥がチクッと痛み出した。