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王子に

俺はこの国の王子の影武者として子供の頃に売られて来た…


王子の側近が家のそばで遊ぶ俺を見て両親に売って欲しいと頼んだのだ。他の兄弟達もいて生活は楽な方では無かった両親は一人くらいならと二つ返事で金を受け取ったのだろう。


後から聞いたかその金額は家畜と変わらない値段だったらしい…まぁそんな事はもうどうでもいい俺はいらないと売られたのには変わらない。


こうして幼い頃から王子の代わりとして厳しい教育を受けていた。


だがここの第一王子はどうしようもない奴だった…


初めて会ったのは俺がここに来てから数年経った頃、ようやく話し方立ち振る舞いと教養が外に出しても恥ずかしくないと思われた時、王子と対面した。


「これが私の影武者かぁ~ウケるー本当に似ているな!」


初めて会う王子の第一印象は馬鹿な奴。本当にこれがこの国の王子で大丈夫なのか?


聞いていた話と全然違う…話し方も野蛮で幼いし、笑い方など盗賊のようにガハハと下品に笑っている。


確かに見た目は王子として申し分無かった…自分にはない輝きを感じる…


しかしそれ以外はどう見ても自分の方が勝っていた。


王子に挨拶を済ませ用意された部屋へと向かう。今までは隠れて誰にも見つからないように暮らしていたが、これから王子の部屋に作られた隠し部屋で暮らす事となる。


そしてこの事を知るのは側近のニルギル様と王子本人のグレイ様だけだった。


俺は王子にはできない公務や書類の確認…頭の使う仕事を全てやらされていた…当の王子本人の仕事はお茶会やパーティ三昧…女好きな王子はしまいには娼婦にまで手を出すしまつ。


後処理にニルギル様が青筋を立てて物に当たっているのを何度見た事か…


そんな時は俺は部屋にこもって嵐が過ぎるのを待つ…ここで当たり散らされたらかなわない。


部屋でこもっていると王子とニルギル様の怒鳴り合う声が聞こえてきた。


「王子!いい加減してください!少しは大人しく公務をこなしてください!」


「それは#あいつ__・__#がいるからいいだろ~?私はかわい子ちゃんと遊んでたいの!せっかくのこの美貌だ!使わないと勿体ないだろ?」


全く反省のする様子のない王子にニルギル様の怒りが伝わってくるようだ…本当に節操のない王子だ。


「あなたには婚約者いるのですよ!しかもお相手はこの国の宰相でもあるロウンティ公爵家の一人娘のルフナ様です!ルフナ様を泣かせるような事があれば……あの公爵は敵にまわしてはなりません!」


ニルギル様から焦る声がする…余程敵に回したくない相手なのだろう。


「知るかよ~だってあの女、全然体に触らせてくれないんだぜ!私が近寄ろうとすると真顔で逃げるし、あの子供みたいな寸胴な体には興味ないけど…まぁ顔はいいよな、一回くらいは試しに寝てみたいよ」


王子とは思えない言葉にニルギル様は言葉を無くしたようだ。


何も言い返してこないニルギル様にお説教は終わったと思った王子はマントを掴むと部屋を飛び出した。


「じゃあそういう事で私はまた街に行ってくるわ!」


「待っ!これから公務が…」


「そんなのあいつにやらせておいてー!その為の影武者だろ!」


ニルギル様が全て言う前に王子は隠し通路に飛び込んでしまった、声が足音が徐々に遠くなる。


「はぁ…」


盛大なため息が聞こえる。


さて、自分の番かな…


俺は身支度を整えて外の様子を探る…中からは部屋の様子が覗ける穴が付いていた。


そこで他に人がいないのを確認すると扉をノックした。


「出てきていい…」


力のない返事が返ってくると俺は扉をそっと開いた。


「仕事ですか?」


それだけ言うとニルギル様は頷く。


「今日はこの書類を確認してサインした後公務で騎士団達の視察に行きます」


「わかりました」


頷くとさっさと書類を掴んだ…サッと目を通して不備や変な箇所が無いことを確認するともう慣れたサインをして印を押す。


「問題無いようです」


「ああ…お前が本当の王子なら楽だったなぁ…」


ニルギル様は本物の王子より少し綺麗なサインに目を向けると痛そうに頭を抱えた。

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