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ちょっとはぐれてしまっている感じの仕事をする3人のケースに見る『仕事』って何だろう

作者: 花咲 潤ノ助

<Aさん>


 今年30歳。プロのバスケットボールチームの運営を手伝うボランティアをしながら、少年チームのコーチをしている。空いている時間でパートをして何とか食いつないでいる。

「いつまでそうしているつもりだ?」

と親から言われ、友人からも

「それでいいのか?」

と言われるが、バスケットボールが好きなのだ。いつかバスケットに関わる仕事で食べていきたいという「夢」を、まだ諦めたくない。ここで日和ったら終わりだぞと、心が叫んでいる。彼女がいないのも、もしかしたら良かったことなのかも知れない。



<Bさん>


 不惑の歳は遠に過ぎ、子供3人と住宅ローンがある。仕事や生活のストレスでうつ病になって、結局職を失った。数ケ月の休養を経て体調はどうやら回復したが、働こうにも就職先がなかった。家内のパートに生計を頼りながら、少しでも足しになればと始めた日雇い派遣。倉庫の検品、発送の仕分けや梱包の仕事をしていれば、その間だけは何も考えなくて良かった。そこで頑張っても事態は何ら解決しなかったが、仕事をする気持ち良さと、明日の仕事があるという喜びは、何ものにも替え難い喜びだった。すっかり付き合いの長くなった同僚から掛けられた

「大丈夫、あなたならきっと正社員になれる」

という言葉に心が震えた。涙が止まらなくて困った。

 


<Cさん>


 定年になったが再雇用制度のおかげで会社に席を残すことが出来た。やれやれだ。責任のある仕事は全部降りた。社内には白い目もあるようだが、気にしてなどいられない。年金が降りるまでまだ5年も間がある。その間は目立たぬようにしていよう。うまくやれば規定より契約期間を延長してもらえるかも知れない。じっと席に座っていると、この歳だというのに時間の経つのがやけに緩い。腰も少々張ったりするがこれでいい。背に腹は代えられないからな。さて、もうすぐ定時だ。帰りの支度でもしようか。




 「仕事」とは何なのでしょう?


 この問いに「これです」という正解があるとは思っていませんが、一生のうちのとても長い時間を費やすことになる「仕事」というものとは、せめて自分なりに納得のいく形で向き合っていきたいものです。


 私見ですが、AさんとCさんのケースは、それぞれ自身ではその仕事に納得しているように見えます。Aさんは好きなバスケットに関わる為に、生業としての「仕事」にはこだわっていませんし、Cさんは年金が出るまでの5年間を過ごす場所を得て、とても満足しているように見えます。

 Bさんもまた生活に追われながらも、それでも日雇い派遣に仕事をする喜びを見出し、多かれ少なかれ(明日を生きる分くらいの)幸せを感じていると思う、私の見方は少し偏り過ぎているでしょうか?でも、少なくともBさんは、この仕事で「うつ病」になることはないだろうと思います。


 勿論Aさんのようにやりたいことを仕事にしている人もいるでしょう。しかし、世の中の多くの人はそうではありません。「食っていくための仕事」とか「生きていくための仕事」というカテゴリーがあって、その中で色々と折り合いをつけながら必死で生きている人たちは、私たちの周りにも沢山います。でも、だからと言って、例えば明日からもう食っていく為の仕事はしなくていいですよ、と言われても、明日から今日やっている仕事を一切しないという人がどのくらいいるでしょう?


 人はきっと自分の置かれた環境の中で、自らの生きる意味や生きがいを見つけられる生き物なのだと思います。私には、そんな「仕事」も、そんな「生き方」も、決して世の為、人の為に大仕事をしていると思っている人たちと比べても、不幸ではないし、意味のないものでもないと思います。今日の『仕事』、明日の『仕事』があることに幸せを感じられる生き方が出来たなら、こんな幸せなことはありません。

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