壊れかけ
わくわく顔の青年だったが、キョウはなんだか違和感を覚えた。
そして気づいた。
この青年は機械だと。
それにこの青年から、ギシギシときしむような音がする。
気のせいかとも思う。
キョウは耳をそばだてた。やはり気のせいではなかった。
青年の体から、ミシミシギシギシときしむ音がする。
同じ機械の体でも、キョウや他の環境維持ロボからこんな音はしない。
――この機械の青年は壊れかけている。そう遠くない未来にこの青年が動かなくなる。
キョウはそう直感した。
そう思うと、すごく怖く憐れに思えた。
「かわいいねー」
青年は無邪気にキョウのお腹を撫でている。耳をそばだてたつもりがいつの間にか青年に密着してしまった。
この青年をどうにか直せないか、キョウはそんなことを考えていた。
* * *
この青年を直すためには、いつぞやのアグに会いに行くべきだとキョウは思った。
青年のズボンの裾をつかみ、走り出す。
目的の場所は以前グレスにつれて来られた井戸の前。
そこにはテントがあって、テントの中では自動で環境維持ロボの部品が組み合わさるという不思議な光景があった。
あれはきっと見えない誰かがロボを修理していたんだろう。
そこにこの機械の青年をつれていけば直してもらえるかもしれない。
キョウはそこに青年をつれて行った。
井戸の前には先客がいた。
パースだ。
パースと青年は口論になりかけたが、構わずキョウはテントに向かう。
だが二人にはテントが見えていないようだった。
キョウは焦った。
どうにかこのテントにあの青年を呼びたいのだ。
キョウは、キャタピラに小石を挟ませ走行し、悲鳴のような金切り音を発してみた。
だがパースと青年にはこちらの様子が見えないだけじゃなく、物音も聞こえていないようだ。
もう一回やってみる。
やはり二人は気づかない。
キョウは今度はテントに入った。
テントの中は前回と同じ、壊れた環境維持ロボの部品が山積みになっていた。