治癒魔法
* * *
キョウは夢を見ていると思っていた。
なぜなら、また環境維持ロボになっていたからだ。
そういえば、環境維持ロボは悲鳴みたいな音を時々上げていた。
原理はわかっている。
足のキャタピラに小石が引っ掛かるとそうなる時はある。事実、キョウは何度かそんな状況を目撃していた。
やってみようと思ったが、思うようになかなかうまくいかない。
しばらく走ってみる。
すると、キャタピラに小石が挟まった。その状態で走るとキーッと金切り音がした。
小石と砂を少し多めにキャタピラに挟まる状態にして、走行すると……
キャー!
まるで悲鳴のような音が出た。
成功したことが嬉しかったが、音は思ったより大きかった。
辺りの様子を覗う。
驚いた顔の栗色の髪の青年と目があった。
「おーい。そこのロボット、荷物持ってくれよ」
その隣によく知ってるパース・ソナリアがいた。
パースは行商であり四番隊隊長でもある。しばらくルウの地を離れていたのだが久しぶりに戻ってきたようだ。
知り合いに会えて嬉しいのもあり、そちらの方へ近づく。
だがパースの様子がおかしい。
左肘がぎこちない。
妙に熱っぽく見えて、ばちばちっという音も聞こえる。
一定で流れてるはずのエネルギーがそこだけ通りが悪いようだが、時折、一気に多くのエネルギーが流れる。そのタイミングでパースは痛みを感じているようだ。
――治さなきゃ!
キョウはパースの背負っている荷物を降ろさせた。
キョウは手ならぬアームを伸ばし、パースの左手に乗せた。
エネルギーの流れを正常にするのは簡単だった。
かつて魔法が使えた頃にクスナにこんなことをしたことがある。
魔法が使えないはずなのにロボットになったら魔法が使えた。失ったものを取り戻せたようでキョウは嬉しかった。
「すごいね。ルウの地のロボットって神の使いで、民の治療も請け負ってくれるんだね」
と栗色の髪の青年が感心していた。