テントの中で
* * *
そこは来たことがある場所だった。
ルウの地の北の方の外れに、井戸だ。
ルウの地は砂漠の中にあるオアシス地形なのだが、そこはオアシスというより砂漠に近い。
その砂漠の中に、ぽつんと井戸と環境維持ロボサイズの入り口にような穴があった。
その穴を通り抜けると、テントが見えた。
グレスとキョウはテントの中へ入って行く。
そして、キョウは絶句する。
そこには壊れた環境維持ロボの部品がたくさんあった。
この時のキョウにとっては、バラバラの手足が落ちてるかのような感覚だったのだ。
恐怖でたまらず逃げ出そうとするキョウを、グレスががっちりつかむ。
――アグ。新入りだ。こいつ、なんか調子悪いみたいだ。
だが答える者はない。
――おっと、作業中だったか。おい静かにしてろよ。
後半の言葉はキョウに言ったらしい。
その時、環境維持ロボの部品が動いた。
ぎょっとしてキョウは目を見張る。
部品が宙に浮きだした。
複数の部品が浮き上がり、空中で組み合わさる。
ものの数分で、一体の環境維持ロボが出来上がった。
出来上がった環境維持ロボはテントの床に降り立つ。そしてすーっと走り出しテントの外に出て行った。
――アグ、新入りをつれてきたぞ。
グレスの言葉に答える者はいない。
――さあ? ケイの伝え忘れだろ。
グレスは明らかにキョウではない誰かと会話していた。
だがその声は、キョウには聞こえない。
――まあ一回見てくれって。ほらお前も見てもらえるように頼め。あ、喋れないのか。
とグレスはキョウの体を押し、前に進ませる。
少し怖いながらも好奇心もあった。
キョウが前に進むと、体がふわりと浮いた。
そして落ちた……。
* * *
「うわっ!」
床に落ちてキョウは目が醒めた。
その体はロボットではなく、人間の体だった。
キョウは椅子に座った状態から床に落ちていた。
キョウは辺りを見回す。
そこは自分の家だった。
子どもたちが帰ってから結構な時間が経っていた。