運命の相手
「大丈夫か? 添い寝してやろうか?」
「………」
――リゾの魂が手に入らないなら、この際パースのでも……
キョウは自分に危険な感情が芽生えそうで焦った。
「悪いな。俺がベッドで寝てたから、お前、椅子で寝てたんだろう? ベッド空いたから」
あれが現実だとしたら、パースの左手は……?
そんなはずはないと思いつつ、キョウはパースの左手をつかんだ。
「……パースは機械じゃないよな?」
しばらく沈黙があった。
パースが静かに問いかける。
「機械が怖いか?」
キョウは首を横に振る。
「わからない。ただ、そんな夢を見たんだ」
その時だった。
外で、ゴンという物音がした。
「わっ!」
キョウはパースに抱き着く。
外の物音が機械がぶつかった音だとわかったのだ。
怖いのか何なのか、機械がそばにいる状況が不気味に思えたのだ。
「今日はいてやる」
とパースはキョウの頭をぽんぽんする。
キョウはほっとした。
機械なんかじゃない、いつものパースに思えたからだ。
その申し出をありがたく受け入れた。
ちなみに、キョウが知るはずもなかったが、外から聞こえた物音の正体はリゾである。
キョウが心配で、ロボットを使い様子を見に来て、つまづいたのだった。
* * *
次の日、キョウは少しだけ早起きした。
パースを起こさないようにしようと、そろりと起き上がるとパースはすでに起きていた。
「おはよう。早いね」
と、キョウ。
「おはよう。昨日、ミンが来た辺りで寝ちまったから、あの後あんまり寝付けなくてね」
「そうだったんだ」
「朝の散歩もしたいし、今日はこのまま帰るよ。家では俺の運命の相手が待ってるし」
パースはそんなことを言う。
キョウは思わず、はははと笑い、ふとした疑問を口にする。
「パースって、何人、運命の相手がいるの?」
「そりゃ決まってるだろ」
パースは得意げに胸を張る。
「数えきれないぐらいいるさ!」
キョウは、しみじみ、パースらしい答えだと思った。