溺れる
そう長く遊んでいたつもりはなかったが、土が泥のようになっていった。
ようやく、キョウは自分のボディがゆっくり泥の中に沈んで行ってるのに気づいた。
気づいた時は遅かった。
体が地面の中に引きずり込まれていく。
キャタピラを動かし、前に進もうとするが、泥の中で空回りするだけだった。
体はどんどん地面に飲み込まれていく。
アームを伸ばし、地面の上に這い上がろうとするが、そのアームすらも泥に飲まれていく。
呼吸できなくても平気なロボットではあるのだが、地面の中に飲まれ身動きできなくなるのは恐怖だった。
キョウはひたすらもがくように動いた。
アームとキャタピラ、ひたすら動かし続けた。
泥の中でひたすら暴れた。
その時だった。
誰かがキョウの体を引き上げた。
ぼんやりしていたそのシルエットがやがてはっきり見えた。
リゾだった。
* * *
リゾは不思議そうに環境維持ロボを見ていた。
泉の中でロボが動かなくなっていた。
動かないというより動けないといった感じだ。アームをひっちゃかめっちゃか動かし、キャタピラが空回りしている。
まるで溺れた人間がもがいてるみたいだ。
泉の深さは一メートルほど。
ほっとくわけにもいかず、リゾは泉に入る。
泉の中を歩き、ぬかるんだ地面に足を取られそうになりつつ、ロボを拾い上げた。
「……レン様?」
その名前の人物でないのは、他ならぬリゾ本人が一番よく知っている。なぜなら亡くなったのだから。
それに、レンの使っていたロボットは既に中央の神殿に返却した。
最高位が使っていたロボはその役目を終えれば自動操縦となり、ルウの地の環境維持のために使われている。
自分が扱う青い水晶のロボ以外、このリゾの住んでる結界の中に入るはずはないし、ましてやその泉の中に入るはずもなかった。
泉から上がり、エネルギーが切れかけているロボットに自分の魔力を注いでみる。