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23 ダンジョン探索⑥

 コロネと出会って、俺が時間を巻き戻したことを知ってから、考えていることがある。


 なぜ、今の俺は、時間を巻き戻すことができないのか。


 多分それは、このときのためなんだろうと、ガーゴイル・テンペスト・ドラゴンが放った青白い光線を受けながら思った。


 ドラゴンが放った光線。それは、レーザー光線とでも言うべきか、圧縮された高エネルギーの塊で、触れたものを瞬く間に塵に変える強力な攻撃だった。夢の中の俺は、この攻撃に対し、逃げることしかできなかった。そのせいで、ロズとグラシスを失ってしまった。


 しかし、今の俺は違う! 超頑丈な肉体を手に入れた今の俺は、最強の盾となって、四人を守る!


 ドラゴンが光線を放つと同時に、俺はアリスの前に呼び出された。


「サンキュー! アリス!」


 俺は腕をクロスさせ、光線を受け止めた。ダメージは無い。やはり今の俺なら、この攻撃を受け止めることができる。防波堤に打ち付ける波のように、俺にぶつかって、弾ける青白い光の間から、俺の耐久力に驚くドラゴンの顔が見えた。


 俺は不敵に微笑んで見せる。すると、光線を放っていなかった、他の首も口を開け、光線を放った。三つの光線は合流し、一つの巨大な光線となって、俺に襲い掛かった。


 恐ろしいほど強力な光線。ダメージこそないものの、洪水のような威力を伴って俺を呑み込もうとする。だから、俺は歯を食いしばって耐えた。


 しかし、じりじりと押される。このままでは倒れてしまう。焦る俺。そんな俺の背中を支える感覚があった。目を向けると、アリスが俺の背中を押していた。


「アリス! 危ないって!」

「大丈夫! サトル君なら耐えられる! だから、召喚士としてサトル君を助ける!」

「アリス……」

「やれやれ仕方ないわね」俺の背中を押す力が増えた。「ちゃんと、私たちのことを守りなさいよね」

「ナルシー」


 さらに力が増える。ロズとグラシスも懸命に俺の背中を支える。


「ロズ、グラシス……」

「サトル君頑張って」

「僕にはこれくらいのことしかできないけど」


 正直、さっさと逃げてくれた方が好ましい。けど、熱いじゃねぇか。自分の命を俺に託すなんて。だから、アリスたちの気持ちに応えたい! その気持ちが、俺をさらに強くした!


 俺は気合を入れ直し、地面を力強く踏んだ。体の内側から力が湧いて来る。すげぇ、こんなことってあるんだ。今まで、誰にも期待されなかったから、知らなかった。


「うおおおおおおおおおお!」


 俺は叫びながら光線を押し返した。すると、光線の威力も増したが、友情パワー? が加わった今の俺に、止められない攻撃ではない!


 ドーン! と大きな爆発音がして、爆風が吹き荒れた。俺は爆風を防ぐ盾となって、皆の前に立った。粉塵が舞い、視界を塞ぐ。


「風よ!」


 ナルシーの声がして、風が粉塵を払い、視界が開けた。振り返ると、杖を持ったナルシーが得意げに腕を組む。


 俺は前方に視線を戻す。ドラゴンは走り終えた長距離走の選手みたいに、肩で息をしていた。翼もぐったりとして、疲労が見て取れる。奴も、モンスターと言えど、生物。疲れはちゃんとあるようだ。


 俺は自分の腕を見た。長袖のパーカーが半袖になっている。ヨハンのバハムート・ドラゴンの溶岩熱線を受けても、傷一つつかなかったパーカーの袖がボロボロになっていた。さらに腕も赤くなっていて、ひりついている。奴の実力を、文字通り肌で感じる。だからこそ、倒せるチャンスを、ちゃんとものにする必要がある。


「アリス。今がチャンスだ。あれをやろう」

「大丈夫なの?」

「もちろん。俺の凄さを実感したばかりだろ?」

「……そうだね」


 アリスは微笑み、本を開く。


「強い意思を紡ぎ出せ、ガーゴイル・キャタピラー!」


 石の体を持つ巨大な芋虫が現れた。その見た目に、「うへぇ」とロズが顔をしかめる。


「召喚士のくせに、芋虫如きを怖がるなんて情けない」とナルシーが呆れる。

「ごめん、でも、苦手なんだ」

「ふん。これも校長のやつ?」

「まぁね」とアリスが答える。「いいんだよね?」


 アリスが俺の意思を確認する。俺が頷くと、アリスも頷く。


「キャタピラー! 石の繭を!」


 キャタピラーは上を向き、口から石の糸を吐き出す。糸は、瞬く間に繭となって、アリスたちを包む。


「ちょっと、あいつは!」

「サトル君なら大丈夫だよ。ね?」

「ああ。心配してくれてありがとな、ナルシー」

「別にあんたの心配をしたわけじゃないわ」ナルシーはソッポを向いて言う。「何をするつもりか知らないけど、頑張りなさいよね」

「ああ」

「頑張ってね」とロズ。

「サトル君ならできるよ!」とグラシス。

「ああ。ありがとう」


 四人は石の繭に包まれて、完全に姿が見えなくなった。繭を撫でる。校長先生の話によると、そう簡単には壊れないとか。


「さて、それじゃあやりますか」


 振り返ると、ドラゴンが顔を上げ、俺を睨み、牙を剥き出しにしていた。俺を待っていたというわけでもなさそうだ。翼を大きく広げ、疲労が回復しているように見える。


 俺はパーカーを脱いだ。パーカーを脱いだ俺の背中から腹に掛けてびっしりと術式が描かれている。これは、今から奴に対して発動する魔法陣だ。


「トレジャー・モンキー!」

「キキッ!」


 どこからともなく、トレジャー・モンキーが現れ、俺の肩に乗った。準備は万端である。


「行くぞ!」

「キキッ!」


 俺はドラゴンに向かって駆けだした。


 ドラゴンも咆哮を上げながら、俺に向かって走ってきた。巨大な足で、床を踏むたびに、大きく揺れる。そしてドラゴンの首の一つが大きな口を開けて、俺に襲い掛かってきた。


 好機! とばかりに俺はドラゴンの口に飛び込んだ。と同時に、トレジャー・モンキーが魔力化し、俺の体表面に描かれた術式に流れ込む。じんわりと温かい。ゴツゴツとした岩の滑り台めいたドラゴンの食道を通りながら、術式が赤く光る!


「くらえぇぇぇ! 恐怖の(ドレッド・)大爆発(エクスプロージョン)!」


 その瞬間、視界が真っ白になった。

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