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15 三人目

 さらに翌日。俺は最後の一人を見つけるため、アリスが基礎黒魔術の講義を受けている間、学校を歩き回っていた。12階にて彼女を見つける。長い黒髪の、おでこを出した気難しそうな顔つきの美少女。彼女は、大きな窓枠に座り、窓に寄りかかりながら、物憂げな表情で外の風景を眺めていた。彼女については、アリスから事前に話を聞いている。


 俺が歩み寄ると、「私に何か用かしら?」と外を眺めたまま言った。


「あんた、ナルシーだよな?」

「生意気」

「えっ?」

「使い魔のくせに、私にそんな口を利くなんて、生意気と言ったの」

「そうなんだ。すまん。それで、あんたはどうしてここにいるんだ? 今、授業中だろ?」


 ナルシーはムッとした横顔で答える。


「あんたには関係ないでしょ」

「まぁ、そうだな。俺には関係ない。ただ、先生が悲しんでいるんじゃないかな、と思って」


 ふん、とナルシーは鼻で笑う。


「あいつに悲しむなんて感性があるのかしら? むしろ、ホッとしているんじゃないの? 自分の無知を指摘する生徒がいなくて」

「……ひどい言い様だな」

「ひどい? 私は事実を述べただけよ」

「あんたが先生よりも優秀だっていうのが事実か?」

「あんたは使い魔のくせに、道理がわかるのね。その通りよ」

「さすが首席様だな」

「で、あんたこそ、こんな所で何をしているわけ? 使い魔の管理を怠るなんて、さすが、落ちこぼれ」

「それは違う。俺は俺の意思でここに来たんだ。アリスにも、ちゃんとお願いした」

「ふぅん。何で?」

「あんたにお願いしに来た」

「却下。口の利き方も知らない使い魔の頼みなんて聞くわけないでしょ。そもそも私は、他人の使い魔の言うことなんて聞く気ないし」

「まぁ、そう言わず、話だけでも聞いてくれないか?」


 ナルシーは答えなかった。窓の外を眺めたまま動かない。一応、俺の声は聞こえるみたいなので、頼みごとをしてみる。


「今度、ダンジョン探索があるだろう? そこで、アリスと同じ班になって欲しいんだ」


 ナルシーは沈黙を保った。それでも俺は話を続ける。


「あんたにとっても、悪い話じゃないと思うぜ」

「……へぇ、どうして?」

「俺がいるから」


 ナルシーは初めて俺の方を向いた。彼女には凛とした雰囲気があった。


「笑わせないでくれる?」

「冗談で言ったつもりはない。実際、あんたは俺に興味ないの? 俺はかなりレアだぜ。なんせ、召喚され、使い魔となった人間なんだから。そして、ショルダを倒すだけの能力がある。どうだい? 俺に興味が湧くだろう?」

「自惚れないでくれる? ……でもまぁ、あんたに興味が無いと言ったら、嘘になるわね」

「なら」

「さっきあんたは自分の意思でここに来たと言ったわね」

「ああ」

「どうして、あんたは私を選んだの? ご主人様の成績を上げたいがために、私にお願いしているのだとしたら、却下よ」

「俺もあんたに興味があるからさ。超優秀な召喚士様が一体どんなものなのか、見てみたいと思ったのさ。使い魔として」


 ナルシーは真偽を図るように俺を見た。俺もナルシーを見返す。見つめ合うこと数秒。ナルシーは不敵な笑みを口もとに浮かべて言った。


「私の実力を知ったら、あんなやつとの契約を打ち切りたくなるわよ」

「なら、アリスと同じ班になってくれるんだな?」

「ええ。いいわ。ただ、あの落ちこぼれに言っておいてちょうだい。足を引っ張ったら許さないからって」

「わかった。ありがとう、ナルシー」


 ふん、と彼女は鼻を鳴らし、会ったときのように、窓の外を眺めたまま、静かになった。


 俺は踵を返して、来た道を戻る。


 班員は全て集めた。これでアリスも満足してくれるはず。しかし俺は、アリスを喜ばせるたるためだけに彼女たちを集めたわけではない。


 俺には彼女たちを選んだ理由があった。


 もしも俺の夢の通りなら、彼女たちは、このダンジョン探索で死ぬ。


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