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異世界人は、身元不明の不審者である。

 朝だ。

 小鳥の囀りと、心地良い陽の光。

 紛れも無く。朝が、来たのだ。

 そして、寝る直前の記憶が無い。

 と言う事は、そう。

 俺は寝落ちしていたのだ──


 茶番は程々に切り上げ、寝坊助な頭を叩き起こす。えーっと……

 ああそうだ、昨日はあの後スキルを物色してて、そのまま寝落ちしたのか。

 まだ外が若干薄暗いので、結構な早起きになったようだ。

 もう一度寝るのもなんだし、少し出歩くか。

 そうと決まれば善は急げ、ベッドを降りて出口を目指す。


 さて、いざ外に出たはいいが、この後何処に行こう。

 取り敢えず、地図のマッピングでもするか。と、そこで気付く。メニュー(ウィンドウ)を開いてみても、マップが無い。

「うーん……ちょっと困ったな」

 上空からの三人称視点なら迷わない自信があるんだけど、ここはリアル。一人称視点だし、入ってから気付いたがこの街も狭い訳では無い。というか、「街」と言われて気付くべきだったのだ。街と言う程ならそれなりの規模がある事を。

 とりあえず、フリーメモ機能を使って手動マッピングする事にした。運が良ければ、【地図作製】みたいなスキルが手に入るかもしれないしね。


 結果:収穫無し


 うん。知ってた。人生は、そう上手く行かない事くらい。

 朝の良い運動を終えた俺は宿屋に戻り、出来立ての朝食を頂いた。いやあ、日本人と言えば朝は米と納豆と味噌汁だよね。

 ……このゲーム(世界の原作)、確かモデルは日本じゃなかったよな……?

 幾ら考えても答えは出なかったので、食事面に関しては深くは考えないことにした。まあ、前世じゃ信じられないようなゲテモノが出るよりは何倍もマシだよね。


「さて、どうするかな……」

 冒険者組合(ギルド)のような所があれば是が非でも行きたい。だが、如何せんこの街の地図が無ければそもそも目的の建物があるのかすら分からない。もし無ければ日銭を稼ぐ手段を探さなければいけない。

 しかし、時間は有限だ。

 そんな訳で二の足で足踏み状態なのだが……行動を起こさない限り何も起こらないだろうし、まずは外に出よう。

 と、いざ立ち上がろうとしその時。

「おはようございます。セーレさん」

「ああ、ナディか。おはよう」

 昨日の装いとは違い、従業員の制服を着たナディが話し掛けて来るイベントが発生した。

 丁度いい。道とか目当てのモノがこの街にあるか聞いておこう。

「なあ、この街って、その……冒険者を生業にしてる人の為の組織の施設。みたいなモノってある?」

 「の」が多い! しかも分かり辛い!

 一言「ギルドってある?」と聞ければ楽だったんだけど、設定がそれを邪魔した。別の世界から来た設定にすれば良かったかなぁ……。


「ああ、ギルドですか? この街にもありますよ」

 BINGO!

「本当? じゃあ、ここを出たらどの方向に向かえばいいか教えてくれないかな。そこまで分かれば、多分何とかなるだろうしさ」

 うーん。と、少し逡巡した素振りを返された。え、何か問題あんの?

「それでもいいんですけど、良ければ私が案内しましょうか? その、昨日のお礼も兼ねて」

「ああ、それは願ったり叶ったりだ。お願いしようかな」

「はい! じゃあ、着替えて来るので少し待っててくださいね!」

 そう言ってぱたぱたと音を立てて年相応に駆けて行くナディ。

 十分後。外出用にお洒落な私服を着た彼女と宿屋を出たのだが、出るに至るまで他の宿泊客からの視線がやけに刺さっていたのが気になった。

 鈍感馬鹿(ラノベ主人公)では無い為、理由は分かる。まあ、ちょっとした優越感あるよね。



「冒険者登録ですね。身分証明の類か、推薦状などはお持ちでしょうか?」

「…………今はちょっと持ってないですね。出直して来ます」

 考えが甘すぎた。


 不味い。不味い。非常に不味い。何がどう不味いかなんて、何もかもに決まってる。ヤバイ。不味いを通り越してヤバイ。

 いや、そもそも冷静に考えれば至極真っ当な事なのだ。冒険者は討伐以外にも探索や採取、果ては護衛引き受ける事となる。そんな時、信用出来るか分からない相手に依頼をするか? いや、しないだろう。少なくとも、俺なら絶対嫌だ。

 だけど、恐らく住人管理は完璧ではないだろうし、天涯孤独という場合もあるだろう。それ故の救済措置も推薦状と言う形でも存在する。勿論条件付きだが。

 幾つかあったので、現実的な例を挙げよう。


1.高ランクの冒険者からの推薦。

2.国専属の冒険者数人からの推薦。(ランクは問わない)

3.国の要人からの推薦。(支部がある国の人間に限る)

4.複数の保証人がある紹介である。(保証人は国の住民であれば誰でも可)

5.相応の実力の持ち主である。(最悪はこれ。デメリットが有る場合も)


 と、こんな感じだ。

 一番手っ取り早いのは1か5。コネクションか実力があれば良い話。だが、同時に今の俺では最も不可能な選択肢でもある。

 2は一見簡単に見えるが、「専属」の点が問題だ。専属という事は、国お抱えの冒険者。つまりは国の戦力である事とほぼ同義だ。だったらお国に直接仕える兵士を目指すわなって話である。

 3は…………助けた女の子が偶然いいとこのお嬢様でした。なんて非現実が起きない限り無理。貴族とのコネもある訳がない。

 4は一番現実的だ。ただ、保証人=やらかしたら連帯責任となるので……。ちなみに、最悪死刑もあり得るらしい。恩を売った相手も親族もいないし、無理。


 結論:詰みです。


 異世界転生を夢見てる諸君。

 身分証明の類は、貰っておいた方が良いぞ。

 でないと、俺みたいに「身元不明の不審者」になるからな。

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