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チュートリアルと、出会いは付き物。(1)

 澄み渡る蒼空。青々と茂る大地。燦々降り注ぐ陽の光。小鳥は謡い、蝶は踊る。嗚呼、何て綺麗な所なんだろう────

「ここがゲームの中だなんて、信じられない──」

「そりゃゲームじゃないし……」

「うわあビックリした!?」

 唐突に聞こえて来る、無いはずの返事。驚きのあまり飛び上がる。記録は3メートル。


 声の方向を向くと、先程会った神が映っている、透明なモニターのような物が視界に入った。

 ……何故ファンタジーな世界なのに、妙な近未来感ある演出なんだろうか。後でお問い合わせにメール送っとこう。

「え、で、何でいるんです?まだ呼んでないはずなんだけど……」

チュートリアル(操作入門)よ。チュートリアル。要るでしょ?」

 確かに、右も左も分からないまま行動するのは辛い。

 ここはゲームじゃなくて実在する世界なのだから、慎重に動かねばなるまい。ゲームなんて甘い考えをしてる奴は生きていけない。これ、世界の真理。

「どの口が言ってんだか……」

 なんだか物凄く呆れられてしまった。一体何が悪かったのだろうか。


「という訳で、まずはステータス画面の確認からいってみよー。頭の中で念じるも良し、言ってみるも良し。とにかく『ステータス』を欲してみなさい」

「じゃあ……『ステータス』!」

 宣言するや否や、目の前に光る半透明の板のようなモノが現れた。しょうがないけどやっぱそこはかとなくS(サイエンス・)F(フィクション)っぽさを感じてしまう。

「これさぁ……もうちょっとデザイン的になんとかなんないの? 景観を損なうってクレーム入れていい?」

 矢張りどうしても気になってしまう。これがゲームの第三者視点ならそうでもないんだろうけど。

「ああ、できるよ? 葉っぱとか木の板とか。課金要素だから今の君には無理だけどね」

「この世界でもやっぱ世の中金なのか……」

 現実って世知辛いね。ていうか、通貨流通してるんだ。


 開かれたステータス画面を調べ、パラメータ等を確認する。まあ全部初期キャラの貧弱な物だけど。

「ん、なんだこれ。固有スキル:【理からの逸脱】? 大体想像付くけど、これ何?」

「この世界はスキルが根付いてるって話はしたでしょ? だから、SP(スキルポイント)とか無視してスキルが取れるってのは本来有り得ないの。君が望んだモノをそうやって一括りにしたの」

 成程。「例のスキルを一言に纏めたヤツ」って認識でいいのか。

 一通り確認した後、表示を装備画面に移す。

 其処には如何にも初期服と言った簡素な服を着ている、程良く長く、程良くボサついた透き通る白髪(はくはつ)を持ち、鮮血の如く赫い目をしたイケメンがいた。

 それにただのイケメンと侮る莫れ、童顔要素も入れている。コレを表現するのにとても時間がかかったが、それ相応の出来に仕上がっている。

「我ながら素晴らしいキャラクリエイトだぁ…………」

 自画自賛。自分の才能が怖い。

「アルビノとか、君結構良い性癖してるよね……」

 何か聞こえたけど、気にしない事にした。

 ちなみに後で聞いたんだけど、この髪型は何とかウルフとか、そういう奴らしい。ファッションとかと無縁な世界だったので、初めて聞いた。

 無頓着、とも言うけどね。


「あれ、そういや武器持ってないよ?」

 ふと気付いた事を言ってみる。武器も無しにどう戦えというのだろうか。

「あっそうだった。いやあ武器持たせて始めるの忘れちゃっててさ。渡しに来たんだよね。ハイこれ」

 言うなり眼前に音も無く現れる、飾り気のないショートソード。片手で振り回す為に短く作られた、冒険の定番の武器。

「サービスで、名前も入れといてあげたから」

 柄の部分を指してながらそう言われたので、確認したらそこにはしっかりと《セーレ》の字が彫られていた。

 勿論本名じゃない。ネトゲとか、S(ソーシャル)N(ネットワーク)S(サービス)で良く使ってた、ハンドルネームだ。

 若干の痛々しさは、ご愛敬。呼び慣れているし、この世界ではこれが本名だ。

「うっわ、これ要らなくなっても売れないやつじゃん……」

 ある種の呪いの装備か何か? 余計なお世話とは正にこの事。ていうか、これ彫ってたから今渡しに来たんじゃないのか?

 まあ、無いよりマシか。付属して来た鞘を手に取り、腰にベルトを着けて帯剣する。

 ずっしりと感じる重量がこれまたリアル。矢張り剣は浪漫を感じずにはいられない。


「で、試し切り出来るチュートリアルとか無いの?」

 流石に練習くらいはしたい。こちとら剣道なんて習ってないし、武道の心得だって無いのだ。

「あるよ。まあ、ぶっつけ本番だけど。頑張って。じゃ、グッドラック!」

 言うが早いか、俺の身体は青白い光に包まれる。それに伴って上空に引っ張られる感覚。アレ、これってまさかル──

「それ以上はダメです」

 やがて目の前が真っ白になって、一瞬だけ意識が吹き飛んだ。


主人公の名前考えるのに一番苦労しました。

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