トラックで交通事故と言えば、異世界転生だよね!
唐突だが、俺、望月修哉は死んだ────
「は?」
待て、なんだこの入り。
「いやだから。君、死んだんだって。トラックに轢かれて。交通事故」
「は?」
訳が分からないまま、目の前の翼の生えた神々しさ溢れる、銀色に光る白く長い髪の女はそう言った。
「ちょっと待て、回想。回想入るから。3分。3分待って」
「はーい」
えーと、確か今日は──
そうだ、新作ゲームの発売日。PCゲーのやつ。
ダウンロード版もあったんだけど、パッケージ版はちょっとお値段がお高めの特典付きデラックスセットがあったから、俺はそれを買いに行ってたんだった。
ちなみに特典の中身はサントラとか専用コントローラーとか。
それで、予約してたのを買って。ウッキウキで家帰って…………あれ?
おかしい。帰宅した記憶が無い。何故かそこの辺りを思い出そうとしても、何も出てこないではないか。
まるでテストを受けてる時のようだ……あ、そろそろ勉強始めないとヤバイわそう言えば。中間が近いんだった。
…………あれ?それで何で思い出せないんだ?
「だからそれは君が死んだからって言ってんじゃん」
「回想なのにナチュナルに入ってくんじゃねえ!」
プライバシーの侵害で訴えるぞ!
取り敢えず、話を聞いてみた。
どうやら、俺はそのままウッキウキの気分で帰ってた所に、居眠り運転のトラックが突っ込んで来て轢かれて即死したらしい。
……マジかよ。余りの衝撃の事実さに頭痛が痛い。じゃなくて、頭が痛くなってきた。そんなネット小説みたいな事って普通あるか?
ちなみに、コイツは死んだ魂とかそこら辺の処理をしてる神らしい。神も増えすぎた人口にキャパオーバーで部署毎に分かれてるのだと。
「しかし貴方様は運が良い! なんと、異世界転生コースに見事当選しました! ぱちぱちぱちー」
「は?」
さっきからこれしか言ってないな? 俺。
「現実にお疲れな現代人の皆様に特別なご褒美としてね、最近流行ってるのよ。死後、異世界転生する人生アフターサービス」
「初耳なんですけど。それ」
そんなん知ってたら契約してたんだが。
「そりゃそうでしょ。これを勧めてるのは生きるのに疲れた報われない黒い仕事人の人とか、世の為人の為にちゃんと貢献した人だけだし。君、ただのパンピーでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
事実をド直球に言われると腹立つな。
「ちなみに過労死が最近多いのは、これに契約した後、皆すぐ自殺しちゃうからなんだよね。それをこっそり過労死に偽装してる訳なんだけど」
うわあ。その事実は知りたくなかった。
「だけど、もっと普通の人にも勧めないと、広まらなかったり文句が出るじゃん?ていう訳で、君みたいな普通の人でも、たまーにこうやって異世界転生させてるって訳。ドゥーユーアンダスタン?」
煽られてるのか、俺?
なんだか巫山戯た態度の神らしい奴の話は、どう見ても、いや、どう聞いてもドッキリ臭しかしなかった。
「と、いう訳で。君はどんな異世界がご所望かな?」
「え、いや、地球でいいです……」
「は?」
なんだか、俺の台詞が盗られた気分をちょっぴり感じた。
「いやだって今日買ったゲームずっとやりたかったし。あと俺、まだ社会の暗黒面に触れてないお年頃って言うか……」
俺が女だったら花も恥じらう女子高生だぞ? 人生遊びたい盛りだぞ? いやまあ、男だけどさあ。
「悪いんだけどそれは出来ないんだよねー。こっちにも都合があってさー。大人の事情ってヤツ?」
「はぁ?」
今度は語気をちょっと強めてみた。
いやだって、異世界に飛ばせて地球は転生不可ってどういう事だよ……。
「しょーがないなあ。ちょっと待ってな。えーっと…………」
そう言ってその神は何処からともなく現れた書類をペラペラペラペラと流し読む。
……いやめっちゃ早いぞ。俺もあんな速読技術欲しかったなぁ。と、沁み沁み。
数分後。
「あった。これなら君にピッタリだと思うよ?」
「何処?技術が発展しててめっちゃ色んなゲームがある世界?」
「いいや?機械なんて陸に無い、ファンタジーな世界」
「は?」
これ言うの、何回目だっけ……?
「だけどねー、確かこの世界が君が今日買ったゲームと似た感じに作られてるんだよ。再現度驚きの120%って感じ?」
「えっ?これ今日出たゲームだしまだ開発中のDLCあるんだけど……」
「神が同じ時間軸に生きてると思ってんの? 君、神をちょっと力持った人間か何かと勘違いしてない? 非力な人間と一緒にしないでくれる?」
と、唐突に不機嫌になり、物凄い剣幕で睨まれながら言われた。
どうやら無意識にも地雷を踏んだらしい。特に最後の迫力が凄かった。死んでるのに、寿命が縮んだかと思った。
「う…………で、でも最近、神がうっかりミスって殺しちゃって異世界転生。とか、神無能過ぎて俺の方が強いわ。みたいな作品のネット小説とか流行ってるし、現代人の認識そんなもんだと思うよ?」
恐怖に怯える心臓を抑え、なんとか思った事を口にする。今考えると、かなり度胸あるなコイツ。
それを聞いた神は何だかショックを受けたらしく、暫くそっぽ向いていた。心成しか、ダラダラと流れる汗も見えた気がする。
「という訳で、君はこの異世界に転生します。ひゅーひゅー、どんどんぱふぱふー」
「い、いえー……?」
「ですが、まず転生する世界について色々と説明をしなくてはいけません」
「はあ」
まあ、行き成り知らん世界にぶち込まれても言葉とか困るしな。いや、転生って言うなら生まれる所からのスタートだし、問題無いのか……?
「あ、別に0歳からでも今の年齢のままでもどっちでもいけるよ。それはまあ、説明の後で選択してもらうから後でね」
選べるんかーい! どうやら、結構親切な異世界転生のようだ。もしかして神、有能なのでは?
「そりゃ人智を越えた存在だし。取り敢えず説明するけど……そんな楽しみにしてたらゲームシステムとかは知ってるよね?」
「まあそれなりには。レベルがあって、上がると貰えるSPでスキルが上げられる。組み合わせとかスキルとかは、無限大。みたいなキャッチコピーだったっけ?」
確か、そんなんだったはず。これを下地にMMOにした奴が作られる、かも? みたいなのを開発インタビューの記事で読んだっけ。
「そうそうそんなん。それで、実際にリリースされたMMORPGを元に弄られたのが、この世界」
「マジで!? 結局発売されたのか!?」
死んだ後に未来のネタバレされるとは。結構貴重な体験だ。そんなんできないじゃん普通。
「どう?興味湧いた?」
「かなり」
この時点で、俺は大分その気になっていた。異世界転生最高。
「そんで、説明なんだけど──」
「それ、最低限でいいかな? 聞き過ぎるとネタバレだし、自分で理解する楽しみとかあるじゃん?」
「君説明書読まずにゲーム始めるタイプ? いいね、嫌いじゃないよそういうの」
ニヤリと笑いながら、神は言った。
「じゃあ最低限だけ。この世界でスキルとかは日常に馴染んでるものだから、RPGとかによくいるそれっぽい話をするNPCはいません」
「ここは最初の村だよ! ってやつ?」
「いや、それは偶にいる……」
「えぇ……」
いるのか、そういうの……物好きな奴もいるもんだ。
「アレよ。武器は装備しないと意味無いぜ! ってやつ」
「ああ、アレかあ」
あの、武器屋とか防具屋の親父が良く言ってくる台詞。
でも最近じゃあ道具として使えるから、持ってるだけでも意味があるやつも増えたよなあ。これが、時代の流れというものか。
「まあ後は……勘で何とかなるでしょ。君なら」
信用されてるのか、将又飽きたか。
「そして、ここからは念願のオプションの選択です。まあ何でも望んでみなさい」
曰く、好きなスキル何でも取得とか、0歳からスタートか死亡時直前の状態からスタートとか、後者ならハードモードとか、性別の選択とか、顔グラのエディットとか……要は、色々と選べるらしい。
果たしてこんなゲームみたいな感覚で軽々しく転生できてしまっていいのだろうか?
数時間後。
「出来た……!」
長い時間を掛けて色々弄った俺は、見事満足の行くキャラエディットを完成させていた。
こういう所に力を注いでしまうのは、ゲーマーの性だ。仕方がない。うん、神もきっとお許しになってくれることでしょう。
「いや、フツーに長いからね君……」
ダメでした。
「まあいいや。それで、ええと? 何このスキル。SP無視……?え、君チート使って無双したい人? うわあドン引き」
なんか勝手にドン引かれた。
「違う違う。スキル取得素質ってあるだろ?要は、SPに頼らずに、自分の力でスキルを取ってみたいんだ。例えば剣を使っていれば、そのうち剣のスキルが取れて、スキルレベルが上がるとか。そんな感じ」
「ああ、そういう? そのシステム、確か元からあったけど……まあそれは成長限定だし、レベルアップだけだと取れるスキルもSPで限られちゃうから……なるほどねえ。君、やり込みタイプ?」
「ま、それなりにはね」
取れるスキルとかは全部取りたいし、寄り道とかは忘れずに回収する。折角色んなスキルがある世界なんだ。一部しか取得できないなんて面白味が薄れる。
まあ、取捨選択の楽しみもあるんだろうけど……それは2週目とか出来るゲームの話だからね。俺がやるのは、ゲームみたいなリアルだから訳が違う。
「まあいいでしょう。でも、結構キツイと思うから序盤はイージー補正掛けといてあげる。感謝するように」
「マジ?」
正直有り難かった。剣なんて握った事無い人間が行き成り剣を扱えとか、無理ゲーだしね。
スキル習得前に未熟過ぎて死にました。ってのだけは避けたかった。
「じゃ、君を転生させるから。何か困ったら適当に祈ってくれれば応えてあげる。自立思考のAIみたいなもんだから、バンバン使っていいよ。使い過ぎると多分キレるけど」
そんな有り難いんだか有り難くないんだか、良く分からない助言のようなものを貰って、俺は異世界転生した。
正確には、目の前が真っ暗になったので、勝手にそう解釈した。
「やっほー、タナトスちゃん。お仕事かあ、精が出るねえ」
聞き覚えのある声。
「エロースか。何? 暇なの? アンタ」
振り向くと、痴女みたいな恰好した顔見知りがそこにいた。
私にこうやって気安く話し掛けて来るのは、大体コイツしかいない。
というか、私と同じ女神なのに、どうしてこうも仕事量に差があるんだ? 私が忙しい時、コイツいっつも暇してないか? どう考えても不平等だ。今度また上司に直訴しよう。
「ところでさ~、タナトスちゃん。さっき誰か転生させてたよね?」
ん?ちょっと嫌な予感。
「ああ、うん。それがどうしたの?」
「アレ、誰? そんな予定、今日は無かったよね?」
ニッコリと笑いながら問いかけて来た。
……バッチリと、見抜かれていたようだ。
「アレは、その……あれよ、私の、子飼い的な? 転生させて、そこを私の代わりに自浄させようと思って」
「ふ~~~~~ん?」
今にも滝の様に流れ出そうな冷や汗を必死に止め、弁明を試みる。別に嘘は言ってない。
「ま、そういう事にしとくけど」
どうやら何とかなったらしい。これで上に報告されてたら始末書がとてもめんどくさい事になっていた。
「ウッカリしてて、関係無い人殺しちゃったから転生させた。とかやってたのかと思っちゃった」
ギクリ。
「……そんな訳、無いでしょ? 本当よ、本当」
「そっかあ。ところで私、いつもの喫茶店のパフェが食べたいな~」
「……分かった分かった。奢ればいいんでしょ?」
「やった。タナトスちゃん大好き!」
抱き着いて来る愛の女神。その豊満な胸を当ててくるのはやめろ。殺意が湧く。
「全く。普通に考えて私がそんなミスを犯す訳無いでしょ?」
だって、神は間違いを起こさないのだから。
これオチてるし短編で良くねって思ったけど折角なので連載にしました。
ヒロインの名前思いついたら次投稿します。
なんか良い名前案あったら多分適当に使うんでください。