【悲しみの果てにあるもの】
「皆さん無事ですか!?」
上には過大な穴が空き、真夜中の空が顔を出す。
爆発と共に下に落ちていく瓦礫は、床を下敷き状態にしていた。
そうその下には、綾さんの死体も埋もれているのだ。
本当は嘆きたい気分だが、綾さんの死を無駄にしないために私はぐっと堪える。
「なんとか大丈夫」
「綾ちゃん」
「美咲、綾さんの死を無駄にしたらだめだよ」
「蒼衣……でも私」
現実を受け止め切れていない状況だろう。でも美咲、今のあなたならわかるはず。
どうしてあなたに全てを託したか…………その意味を。
「今一度考えてみて、どうしてあなたに全てを託したかを」
「………………」
「あっけない死に様だったな。逃げれば助かったものを」
「…………ッ!」
「…………ッ!」
「…………ッ!」
渦巻く煙の中、向こうから声がする。どうやら相手は仲間の死を惜しんでいる時間も、与えてくれないらしい。
しかしその言葉が心に刺さる言葉のように聞こえてしまう。
人の命を安く扱い小馬鹿にするその言葉に対して私は、心の中ではもう既に血が上っていた。
一斉にその声がする方向へと視線を向けていた。
「休む時間は……なさそうね、皮肉ね」
そして私達の前に敵アビレッタはイグラーンを片手に待ち構える。
静寂とした空間でお互い声を投げ合う。
「あの攻撃で倒れないとは……」
「悪いな、私は持久力はいい方なのだよ」
「……アビレッタ、さっき言ったこともう一度言ってくれるかしら?」
まずい、美咲は怒っているひょっとして冷静に意識を保ててないのか……と私は美咲の方に目を射る。
しかしその表情をからして怒りも感じさせない、冷静な表情をしていた。どうやら堪えることができたらしい。
「怒らないのか、てっきりお前のことだから怒り狂うと思っていたが」
「悪いわね、私は綾ちゃんと約束したから。だから私は……泣かない」
「でもよくやってくれたな、まさかイグラーンの弱点を見抜くとは。確かにこれなら射程が狭まり、攻撃範囲が短くなる。褒めてやろう……………………だが」
すると地が強く震えだした、
徐々にその音は激しさを増す。
そしてアビレッタは宙に浮かんだ。
これは…………ひょっとして?
「やむを得まい、徹底的にお前達を叩くにはこれを使えば一瞬だ。私をここまで追い詰めたことを後悔させてやる」
ゴゴゴ……。ゴゴゴ……。ドドド……ッ!
「皆さん来ますよ」
「恐れ戦け……そして震えよ……割れ行く大地のようにッ! バトル・フォーム!!」
アビレッタを無数の燐光が集まり、体を包み込んだ。
「くッ!」
アビレッタは背中に瓦礫でできた翼に、両手には長い一角のこれも瓦礫の槍を装備していた。
そう“バトル・フォーム”だ。
きっと手短に肩をつけるつもりなんだろう。
この形態になると飛行能力もかかるので、攻撃範囲も広がる。
なら少しこちらも本気を出さないといけない。
「そっちがその気なら……みんな準備はいいかしら?」
美咲の言葉に私と礼名は首肯する。
…………バトルフォームには少し抵抗があるけど、この前政希さんに教えられた通りにやってみる。
精神を統一させ……Xエナジーを一点に集中させる。
胸の鼓動が高ぶる。その鼓動の心拍音は徐々に激しくなっていき、私を熱くさせる。
やがて体に無数の力がみなぎり、強大な力を感じる。
そして軽く一呼吸し……私は……私達は叫んだ。
「バトル・フォーム!」
一丸となった声は重なり声が駆け巡った。
体を光が包み込み、姿を変化させる。
溢れ出るような力を感じさせながら、私の身に纏っている服を変化させた。
そのかかった時間は長かったような、短かったような感覚でほんの数十秒で変身を終えた。
「ほう、お前達も使えるのか、その力を」
「綾ちゃんの仇は取らせてもらうわ、それとさっき侮辱した台詞死をもって償わせてあげるわ」
バトル・フォームを完了させた礼名、美咲は私の方に集い身構え戦闘体制をとった。
いよいよこの戦いも大詰めといったところだろうか。
「礼名、美咲」
相槌を打って、拍子を合わせる。
「アビレッタ、戦場に散り行く花びらとなりなさいッ!」
「いや、散り行く花のはお前達だッ!」
「勝負は、これからよ」
アビレッタとの最後の戦いが今幕を開ける。散って行った仲間の無念を、意思を継いだ1人の可憐な少女は、残った仲間と共に敵を討つ────。