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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第3章【戦火に舞う薔薇】
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【悲しみの果てにあるもの】

「皆さん無事ですか!?」


 上には過大な穴が空き、真夜中の空が顔を出す。


 爆発と共に下に落ちていく瓦礫は、床を下敷き状態にしていた。


 そうその下には、綾さんの死体も埋もれているのだ。


 本当は嘆きたい気分だが、綾さんの死を無駄にしないために私はぐっと堪える。


「なんとか大丈夫」


「綾ちゃん」


「美咲、綾さんの死を無駄にしたらだめだよ」


「蒼衣……でも私」


 現実を受け止め切れていない状況だろう。でも美咲、今のあなたならわかるはず。


 どうしてあなたに全てを託したか…………その意味を。


「今一度考えてみて、どうしてあなたに全てを託したかを」


「………………」


「あっけない死に様だったな。逃げれば助かったものを」


「…………ッ!」

「…………ッ!」

「…………ッ!」


 渦巻く煙の中、向こうから声がする。どうやら相手は仲間の死を惜しんでいる時間も、与えてくれないらしい。


 しかしその言葉が心に刺さる言葉のように聞こえてしまう。


 人の命を安く扱い小馬鹿にするその言葉に対して私は、心の中ではもう既に血が上っていた。


 一斉にその声がする方向へと視線を向けていた。


「休む時間は……なさそうね、皮肉ね」


 そして私達の前に敵アビレッタはイグラーンを片手に待ち構える。


 静寂とした空間でお互い声を投げ合う。


「あの攻撃で倒れないとは……」


「悪いな、私は持久力はいい方なのだよ」


「……アビレッタ、さっき言ったこともう一度言ってくれるかしら?」


 まずい、美咲は怒っているひょっとして冷静に意識を保ててないのか……と私は美咲の方に目を射る。


 しかしその表情をからして怒りも感じさせない、冷静な表情をしていた。どうやら堪えることができたらしい。


「怒らないのか、てっきりお前のことだから怒り狂うと思っていたが」


「悪いわね、私は綾ちゃんと約束したから。だから私は……泣かない」


「でもよくやってくれたな、まさかイグラーンの弱点を見抜くとは。確かにこれなら射程が狭まり、攻撃範囲が短くなる。褒めてやろう……………………だが」


 すると地が強く震えだした、


 徐々にその音は激しさを増す。


 そしてアビレッタは宙に浮かんだ。


 これは…………ひょっとして?


「やむを得まい、徹底的にお前達を叩くにはこれを使えば一瞬だ。私をここまで追い詰めたことを後悔させてやる」


ゴゴゴ……。ゴゴゴ……。ドドド……ッ!


「皆さん来ますよ」
















「恐れ(おのの)け……そして震えよ……割れ行く大地のようにッ! バトル・フォーム!!」


 アビレッタを無数の燐光が集まり、体を包み込んだ。


「くッ!」


 アビレッタは背中に瓦礫でできた翼に、両手には長い一角のこれも瓦礫の槍を装備していた。


 そう“バトル・フォーム”だ。


 きっと手短に肩をつけるつもりなんだろう。


 この形態になると飛行能力もかかるので、攻撃範囲も広がる。


 なら少しこちらも本気を出さないといけない。


「そっちがその気なら……みんな準備はいいかしら?」


 美咲の言葉に私と礼名は首肯する。


…………バトルフォームには少し抵抗があるけど、この前政希さんに教えられた通りにやってみる。


 精神を統一させ……Xエナジーを一点に集中させる。


 胸の鼓動が高ぶる。その鼓動の心拍音は徐々に激しくなっていき、私を熱くさせる。


 やがて体に無数の力がみなぎり、強大な力を感じる。


 そして軽く一呼吸し……私は……私達は叫んだ。


「バトル・フォーム!」


 一丸となった声は重なり声が駆け巡った。


 体を光が包み込み、姿を変化させる。


 溢れ出るような力を感じさせながら、私の身に纏っている服を変化させた。


 そのかかった時間は長かったような、短かったような感覚でほんの数十秒で変身を終えた。


「ほう、お前達も使えるのか、その力を」


「綾ちゃんの仇は取らせてもらうわ、それとさっき侮辱した台詞死をもって償わせてあげるわ」


 バトル・フォームを完了させた礼名、美咲は私の方に集い身構え戦闘体制をとった。


 いよいよこの戦いも大詰めといったところだろうか。


「礼名、美咲」


 相槌を打って、拍子を合わせる。


「アビレッタ、戦場に散り行く花びらとなりなさいッ!」


「いや、散り行く花のはお前達だッ!」


「勝負は、これからよ」


 アビレッタとの最後の戦いが今幕を開ける。散って行った仲間の無念を、意思を継いだ1人の可憐な少女は、残った仲間と共に敵を討つ────。

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