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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第3章【戦火に舞う薔薇】
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【私は死なない】

 一か月前


 政希さんと殺人者達が埋葬されている墓地場に訪れていた。といっても大きな建物の中にある墓地である。


 そこには、戦いで亡くなった殺人者(マダラー)達が眠る場所。年間に数万にも及ぶ人達がこの場所に来ている。


 辛いからだろうか、それとも悲しいからだろうか。…………そもそも私達殺人者はなんのために戦い、殺し合っているのだろうか。


 ふと心残りである。


 私は正木さんに思い切って聞いてみた。心の中で疑問に思うことを。


「すみません、政希さん」


「なんだ、……待たせちまって悪いな」


 政希さんは両親のお墓へと来ていた。無論墓参りは当然のこと私も一緒に行った、順番に。


 1人ずつの方が心が安らぐから落ち着くらしい。


 だが彼の頭はなかなか上がらなかった。なので心配になって声をかけたのだが。


「……大丈夫、昨日の疲れが少し多めに出ただけだよ」


 私にはわかる、本当はそんなのじゃないということを。きっと何か心に傷になるものが彼を蝕んでいるのかも知れない。


 そんなことにも関わらず笑顔でこちらを振り向いてくれた。


「それで聞きたい事って?」


 手合わせが終わると私の横に立ち墓碑を眺める。だけど政希さんは一度もこちらを振り向きもしなかった。


「政希さん、私達"殺人者"にとって戦う……殺すってどういう事なんでしょう」


 苦笑いで答えてきた。


「論理的なこと聞いてくるな…………そうだな」


 少し考え込む時間の合間の後、政希さんは口を開いた。


「俺たちはただ単に殺し合うだけの殺人兵器なんかじゃない、ちゃんと殺したやつの意思を受け継ぐのも殺人者の立派な勤めだよ」


「誰であろうと?」


 この世界に住む全ての者が善人とは限らない。中には極悪な心を持った者もいる、それなのに政希さんはそれ自体も全て受け止めるというのだろうか。


「それが唯一俺たち殺人者がやってあげられる償いだ、相手が誰であろうとな」


「私そういうのまだ経験薄いので、よく分かりませんよ」


 すると政希さんは優しく私の頭に手のひらを乗せてきた。大きくはないけどその手の温もりからは、とても強い優しさを感じ取れた。


 少し照れくさくて、頬を紅潮させてしまう。


「蒼衣、今は分からなくてもいい、でも仮にこれからお前が何かしらのことで仲間を失ったり、人を殺めても決して自分を咎めるな。さっきも言ったように、そいつの意思を受け継ぐのも大切だ」



























 政希さん――――――。

























 今その状況に正に直面している状況です。































 眼前で人が……仲間が私達を庇って。
























 綾さんは瞬時に美咲を庇い、自ら攻撃をうけた。


 慌てて綾さんの元へ近づくと瓦礫の棘が何本も身をついており、血液がドロドロと体中滴っていた。


 血が止まる気配が見えず私はその光景を目に焼き付けて見ることしかできなかった。


 美咲は彼女の近くにしゃがみ込むと、そっと上体起こしをする。


「綾ちゃん! ……綾ちゃん!」


 美咲の喉が切れそうな痛々しいその声は"大声"というより"罵声"で部屋中に、声を巡らすかのごとく響き渡る。


 何度も、何度も返答が返ってくるまで呼び続けた。……しかし。


「………………」


 荒い息遣い、なんとか目をこちらに向けようと、綾さんは目線を美咲の方へ変えるが表情が変えられず無表情のままだった。


「待って今すぐ助けるから」


 必死に綾さんを助けようと、回復を行おうとする美咲だったが綾さんが必死に首をゆっくりと左右に振り必要ないサインをだす。


「どうして……あなたが死んだら私は」


 美咲の声が徐々に弱々しい声となっていき次第に泣き声となっていく。


 すると泣いている美咲の手を綾さんは優しく自分の手で彼女の拳の上にのせる。


 そして最期の力を振り絞り綾さんは語り出す、最期の言葉そして次に繋ぐ"命のバトン"をだ。


「……美咲さん、私あなたに死んで欲しくなかった」


「ばか、そんなことしなくたって回復すればいくらでもなったのに」


「美咲さん、無駄遣いはよくないですよ……。それに庇ったのには理由があるんです……」


「理由?」


 そう綾さんにはこの上ない、大切な理由がある。でもそれをどのように受け止めるかは……美咲、それはあなた次第。


 でも私は信じたい、美咲が彼女の想いをちゃんと受け取って前を向いてくれることを。


 私だって辛い、きっと礼名と美咲も同じ気持ちになっているだろう。


 でも私達はこうして現実と向き合っていかなければならない。


 なぜならそれが"人間"らしさだと思うから。


「私、あなたに掛けてみることにしたんです……美咲さんならこの世界をよりよい未来に変えられるって確信持てたから」


 美咲は腑に落ちない反応をみせ、首を横に激しく振る。歯を食いしばりながら涙を流していた。


 まるで悲しみに飢えるような感じがした。


「なに言ってるの? これからも私と一緒に過ごしましょうよ……春を、夏を、秋を冬を……。そうやって当たり前のように過ごせばいいじゃない」


 でも綾さんは拒む、ゆっくりと首を振って。


「それはもう叶いませんよ……」


「私を置いて行かないでよ綾ちゃん」


「美咲さんは本当にわがままだな。……美咲さんあれを」


 私の方に綾さんは指を刺した。


「えっ?」


「あなたにはもう私以外にも大切なものができたはずです。私は生まれた時から今まで仲間なんて巡り会えなかった、でも最期の最期でやっとできたんです。仲間という大切な存在を」


「…………ッ」


「それだけで私は満足でした、この先私に待ち構えているのは闇の世界でしかありません……両親もいなければなにもない……、恋人もいなければ友人もいない、でも美咲さんのためならいいやって……」


「自己中よ、そんなの」


「もっと早くあなた達と出会っていれば私はこんなことならなかったでしょう……、……美咲さん」


























──────私が死んでも私は、あなたの中で永遠と生き続ける。


「それと最後約束しましょう、1つはみんなと楽しく暮らせる世界を作って下さい…………もう1つは…………憎しみに囚われてはいけません……………………よ」


そういうと綾さんは安らかに息を引き取った。


「綾ちゃん? 綾ちゃん⁉︎」


 もういくら揺すっても彼女の閉じた瞼が開眼することはなかった。ただそこには魂の抜け殻となった綾さんがそこにいる。


「そんな嘘…………ッ」


 すると通知音が鳴る。礼名からだ。


「皆さんそろそろ爆発します、離れてください!」


「でも……でも」


 同様する美咲、そんな彼女の手を私は掴む。


「美咲、綾さんの死を無駄にしないで……」


「えっ?」


「行くよ」


 私はそこを離れ距離をとった。爆発まであともう少しだ。


 すると礼名の顔見ると涙を一滴流していた。

















(綾さん、正直私は今悲しみで一杯です、未だにあなたの死を受け止められない。でも私は我慢する事にします、あなたの期待を裏切りたくないから。)


(綾さん……あなたとはもっと)





















 ……ゆっくり話したかったッ!





















 次の瞬間、天井が爆発し、空から瓦礫の雨が降り注いだ。


 空を仰ぐとそこには綺麗な星空が浮かんでいた。


 綾さん、私達が必ず仇をとってみせる!

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