【特殊任務発令その1】
2815/4/22 新東京都学院学校高等部_
……
……
……
まただ……。また夢を見ている。
「ここは……?」
見知らぬ場所、半壊した街、まわりを見渡すと、人が殺しあっていた。
下をみると固まった血の跡が数か所あちこちとついていた。
それはまるで大雨が降ったかのような跡に見える。
――――――。
なんとも残酷な地獄絵図だ。
いくつか首を切断された死体もある。
切断された首の部分からは、コップに汲まれる水のように血が溢れ出ていた。
殺してからそんなに時間が経過していないのだろうか?
向こうを見ると、殺しあっている少女が3人見えた。……1人は銃のXウェポン……。もう1人は両手銃のXウェポン、そして最後の1人は両手に大きな大剣を持っていた。
「た、頼むから……戦うのをやめてくれ……」
俺は小さな声でそう呟く。
すると横から誰かが、俺の右腕を引っ張ってきた。
そんな力強くはなかった。小さな小さな、子どもぐらいの力だ。
「ねぇ……」
俺は振り返った。
「――――――ッ!」
途端に目を丸くさせ、驚く。
小さな幼女だった。青い髪をしたアーモンド状の瞳が特徴的な子だ。
身長は僅か俺の下半身ぐらいまでしかない。
この子とは、どこかで会ったような気がするが……。 誰だっけ?
最近は色々な事で頭が一杯だが、“この子”とは、この間会った気がする。
――――――――――――。
そうか……君か……。ふと思い出す。 名前も教えてくれず、その場から消えたあの少女。
だが、この間会った時と比べると、とても身長が低い。
ヘアスタイルも全然違うし、感じられるものといえば、若々しさを感じる。
これは――――――、俺の思いが具現化したものだろうか?
仮にそうだとしたら、この子はこの前会った子の小さい頃の姿かも知れない。
だが、俺は小さい頃のあの子の姿を俺は知らないはず……、なのに何故……何故君は子供の姿をしているんだ……。
少女は再び俺の腕を手で引っ張ってきて俺に何か聞こうとしている。
「ねぇ……お兄ちゃん」
「な、なんだ?」
「さっきからさ、私ここに迷い込んじゃったんだけど、家に帰る道分かる? お家に帰りたいから……」
「家へ帰る…………?」
彼女はうんうんと頷いた。
「怖いのか……ここにいるのが……」
彼女はまた頷く。
「さっきから殺しあっている人達ばっかりだもん」
「だから一緒に君の家への帰り道を探せと言いたいのか?」
「それ以外なにがあるって言うの?」
彼女は少々俯いて、涙を零していた。
「ごめん、分かったから……分かったから……一緒に君の帰り道探してあげるよ」
「……」
「……」
「ありがとう」
遅れた拍子に彼女から返事が返ってきた。
そして俺は少女の手を引っ張ってその場を去ろうとした―――――― そしたら。
「おい」
「天堂?」
「天堂?」
「いって」
――――――。 頭部を何かで叩かれ、俺は夢から目が覚めた。
誰かが叩いたのだろうか?
キョロキョロと辺りと前を見る。 だがまわりにも前の教卓にも教師は愚か生徒の1人もいない。
「ここだ……馬鹿」
背後を振り返る。すると、白衣を着ている人が立っていた。
ボブの薄紫色の髪型をしており、左目を横髪で隠し、こちらを渋い目つきで見つめている。
彼女の名は月神照依。俺のクラスの副担任で理科の授業を担当としている人だ。
「すみません、寝てました……」
「天堂……授業中寝るとはいい度胸だな…… どれケツから打たれたいか、背中を蹴られたいか……好きな方を選べ」
「遠慮しておきます」
月神先生はとてもドSな性格である。人をいたぶるのが大好きで、サボっている生徒がいれば、とことんその生徒に目をつけては、その生徒の体を軽く足で蹴ったり、頭を本で叩いたりする。
それで先生は心の底ではこうやっていることに楽しみを感じているんだとか……。 だが先生は、力は程々にしているらしく、これでも加減しているんだとか……。
学校側はギリギリ虐待レベルはまだセーフで済んでいるらしい。
まぁ先生は根はいい人なので、そこまで悪い事をする人ではない。
先生は21歳。こう見えてもまだ独身で、隣の地区にあるマンションで1人暮しをしている。
まぁこんな性格なら結婚はまだ先と言えるだろう。
「なんの夢を見ていたのかは知らんが、程々にしておけよ」
「先生も好き好んでお前を叩いてる訳じゃないからさ」
「……」
先生の頬が赤くなる。……あぁこれ嘘だ……。絶対。心の中じゃ絶対喜んでいるな……。
だが突っ込むのは控えておこう。 余計先生を興奮しかねないし。
「先生……授業は?」
「授業ってお前……ほら」
先生は教室の上にある電子デジタル時計に指を指した。
12:30――――――。昼過ぎである。
「なっ!?」
「寝すぎだっつーの、お前9時の授業からずっと寝てたぞ? 全くお前は油断できないな」
「いえいえ、別に悪気があった訳じゃ……」
「いいからさ、次からは気を付けような?」
先生はウィンクしながらそう言った。
「ところでだ……。 天堂、お前今日もう帰っていいぞ……」
「え…… 俺そんなに悪く思われちゃってるんですか!?」
帰って寝ろってことか? とうとう先生にこんな扱いを受けるようになってしまったか……?
「いやいや、違う違うって…… お前に……」
「はい?」
「お前に大事な任務が来ているぞ」
「あ、そうですか…………って……えぇ――!?」
あまりにもそれは唐突な出来事だった。 先生によれば旧東京都の廃墟に殺人者2人を発見したようだ。
他の組織にこの任務を最初は任せることにしていたようなのだが、誰も手が回せなかったらしく、俺に今日この任務が回ってきたみたいだ。
「それじゃ頼む…… くれぐれも無茶はするなよ」
先生の説明もあって俺はその任務を引き受けることにした。
「それじゃ先生、失礼します」
俺が教室を出ていこうとしたら先生は俺の腕を掴んできた――――――。
そして、先生は1枚の折り畳んだメモ紙を俺に差し出す。
「後で読んでおけ」
先生がその一言を言うと、俺はそのメモ紙を受け取り、ポケットにしまう。すると先生は掴んだ手を離した。
「分かりましたよ」
その一言を言って俺は教室を後にするのだった。
……家に帰り、折り畳んだメモ紙を広げて、みる。 そこには『必ず帰ってこい』の文字が太字のマジックで書かれていた。
全く心配しすぎだって……先生。
そして俺は準備を整え、家を出て行く。任務のために――――――。
新東京都の街外れにあるもう1つの駅。ここは新東京都から旧東京都の駅へ行くための便だ。
通っている便も1日3つぐらいしか通っておらず、非常に他の駅の便と比べると数が少ない。
現在時刻14:20――――――。
次の便は14:30だ。あと10分、まだかまだかと時間を潰していると、旧東京都の便が来た。
「よし……行こう」
電車に乗る。中には誰もいなく、乗客俺ただ1人だった。
暫くすると電車の扉が閉まり、電車が動き出した。待ち時間はそれほど長くは感じなかったので、俺からすればあっという間だった。
……
……
……
電車が揺れ動きながら前を進む。一直線に進んでいるので、決して道中で電車が曲がることは無い。
それから1時間後、電車の窓から外を眺めようと外を見てみると、古びた建物が立ち並ぶ町が見えてきた。旧東京都だ。
旧東京都は廃墟と化した町。かつてはここは“東京都”と言われていたらしいが、今はただの古びた町だ。
と言っても、地区は多少残ってはいるので、今でも店を営んでいる住民は数知れずいる。
ここの住民はそれが唯一の金の収入手段なのだ。それ以外方法がなく、店を出していない人は日々貧しい生活を送っている。
そして、中にはテロリストやデモなどを行っている者もいる。 彼らは単なる憂さ晴らしの団体に過ぎない。
が途方に暮れるほど、この町で彼らは争い合っている……。殺し合いが絶えないほどに。紛争、クーデター……とにかくなんでも起こる。
ニュースの記事をよく見るんだが、それでよく旧東京都の記事をみかける。
どれも事件の記事ばっかりだ。
……
……
……
何故このような荒れ果てた姿になっているのかと言うと
21世紀頃、ロシアが巨大な爆弾を東京都に落とした。その爆弾は東京都を跡形もなく、一瞬で瓦礫の街へと変えたという。
幸いそこに住んでいた人々は避難して一命を取り留めたらしいが、町を木っ端未に破壊され、東京都の人間は住む場所が無くなった。
それから東京都の住民は仮拠点を作り、数百年の間、そこで暮らしてはいたのだが、ある日“合併計画”という新しい計画が実施された。それは、新しく作られた場所に東京都の住民を移住させるという計画だった。 それにより、東京都は破棄されることになり、以降、名前が改変され、東京都から“旧東京都”へと名前が変わった。
東京都の住民は難なく移住することに成功した。そしてその移住先が、今の俺達が住んでいる新東京都だ。
だが、移住を拒んだ人間もいたらしく、未だにここの人間はそこそこいる。
ここの住民は、ロシアへの恨みを持っている人が絶えない。 それもそのはず、故郷をロシアによって滅ぼされたのだから。
このロシアは今のロシアとは違う。今のロシアは、前の戦いで同盟を結んでおり、日本とは友好条約の関係に当たる。
……だがここの住民にとっては、ロシアを許したくても許せない……そういう関係だ。
ロシアも臨時で旧東京都に訪れては、声を呼びかけてはいるものの、誰も相手にしてもらえない。現在のロシアと旧東京都の関係はそんな感じだ。
……そう考えているとあっという間に旧東京都の駅に着いた。……アナウンスが流れ、席に座っていた俺は立ち上がり、電車を降りた。
客も誰もいない……。ただ寂しさを感じさせるような駅だった。
「さて、聞き込みと行きますか……」
俺は任務のため、駅から出る。そして手始めに目的の奴らを探すべく、町で聞き込み調査をするのであった。
「とっととこの俺がやっつけてやる 悪事を行ったこと後悔させてやる……」
勢いよく駆け出す……だが俺はこの時、薄々と気づいていた。誰かに後をつけらていたことに――――。