【敵の仕掛けを見破れその1】
これは非常に参った。まさか相手が二重の罠を仕掛けてくるとは。
破壊しても治らないマダロイドが隠れる光学迷彩の床。
考えてなかったかもしれない、敵殺人者が潜んでいることに。
だがどうやって、そして一体どこに相手は身を潜め様子を窺っているのだろうか。
擬似的に透明な床を生成し、戦況を有利に進める。これではこちらが一方的に不利である。
「……。何か戦う鍵となる物はあるの?」
瞳孔を動かし、使えそうなものが無いか辺りを見渡した。しかし不遇にもそれらしきものは見当たらない、かつ光学迷彩で覆われた壁及び床は、ペラペラとしたカーペットのような感触ではなく、本物の硬い素材でも使ったように頑丈である。
どうやら物の硬さも自由に調整することも可能らしい。現状から感想を述べただけだが。
しかし、どうやら様子を見るからして、相手は迂闊に攻撃をしかけてこない殺人者だろう。
以前に似た殺人者と戦ったことあるのである程度戦いスタイルに検討はついた。しかしスコープの機能も受け付けないとはあまりにも反則的である、それはあたかも相手は、自分が体を動かす前に相手は既に体を動かしているような感覚である。
「蒼衣さんなにか動いているもの見えないですか?」
「周囲からはマダロイドの音それくらいしか聞き取れないわ」
これと言って攻略のヒントとなるようなものは何もない。敵は簡単に先へ行かす気は全くないようだ。
地面からマダロイドが襲いかかる、私は瞬時に敵の両腕を切断し、そのまま足で蹴り倒す。
「次から次へと……」
すると美咲はあることを言い出す。
「1つ考えがあるんだけどいいかしら?」
一瞬振り返って呆然とするが、ここはまた美咲の話を聞くことにした。
他の皆は納得したかのようにまた頷いた。
「礼名ちゃん一回目の前の床に向かって撃って」
躊躇いもなく礼名は言われたように目の前の床に向かってシュナイダーで撃った。当然そこには中くらいの大きさをした穴ができたくらいで、後は何も変わらない。
「美咲なんのつもり?」
すると美咲はその穴に手をつけた。すると360度にツタが張り巡らされた。すると何もなかったその床に大きな穴が。
「疑問に思ったのよね、もうこのくだり数十回やっているのに、一向にその嵐は止まない。普通ならもうXエナジー切れで能力が使えないはずなのに。そこで私はどこか秘密の部屋があるんじゃないかと考えてこの能力で地面を掘り下げたんだけど、当たったみたいね」
その穴を皆でのぞき込むとそこには、遠くに明るい部屋が見えた、あれがそれとでも言うのだろうか。
「よくあるって分かったわね」
「1つの賭けとでも言っておこうかしら、正直この手段やられることも予想していたんだけど、どうやら神様は私に味方してくれたみたいよ」
「なら皆、一気に飛び降りるわよ」
「あなたっていつも素早いわね」
そして私達はその穴に飛び込んで下層階へとやってきた。降りるスピードはそんなに遅くなかったため、一瞬の出来事にも感じため、すぐ着いた。
「すぐつきましたね、まさかこんな密室があったとは…………流石ですね。とあそこに誰かいますよ」
礼名が向こうに指を指した。
その向こうには、大量のモニターをみながら様子を見ている白衣を着た男性1人の姿があった。
こちらに気がついたせいか動かしていた手を止めた。
「手こずらせてくれたわね……全く」
美咲はその男にグレイスローズの刃を突きつけながら、にらむ目つきでそう言ったのだった。