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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第3章【戦火に舞う薔薇】
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【従者からの預かり物その2】

 それは美咲の想いが通じたのかはたまた私の諦めない想いが通ったのか、謎の人物由美が私達2人の前に姿を現した。


「お怪我ございませんか?」


「見ての通り……ボロボロよ」


 見た感じ敵という感じはしない、寧ろ美咲の仲間と言うべきか。この由美という人物は美咲のことを気遣うように接する。まるで家族とのやりとりをしているかのようにも感じられる。


「美咲、この人は一体……」


「この人は華崎邸でメイド長を務めている由美よ」


「由美と申します」


 軽く一礼をすると由美さんは周りのマダロイドおよび殺人者の群れを、手に持っている小型のナイフで相手で。


「ふんっ」


 一瞬で体ごと八つ裂きにした。殺した殺人者の部位は宙を舞いながら道を描くように血をばらまく。


 何が起こったか分からないが、とりあえず助かったという現状が頭の中に入った。


 この由美さんって一体何者だろう。そういえば以前華崎邸に行ったとき、瑛一さんが1人留守していると聞いたがひょっとしてそれは、彼女のことかも知れない。


 もしそうだとしたら、一体なぜ今この状況になって現れたのかそれも気がかりではある。


「一瞬であの軍勢を」


「当然よ、今の由美は私の力があるからね」


「? どういうこと」


「さっき言ったじゃない、私の半分の力を手に入れに行くって」


「半分……そうかそういうことね」


 察しがついたかも知れない。つまり彼女こそが美咲が待っていた人だろう。ようやく言っていたそのことを理解した。


 しかしあんなに手こずっていた敵を一瞬で倒すだなんて信じられない。


「そう今目の前にいる彼女が私のもう半分のXエナジーを持っている、まあなくても十分強いけどね」


 美咲は由美さんを待っていたのか、でも美咲自身の本来の力が気になるところではあるけれど。


「くっ退いて体制を立て直すぞ!! 全部隊撤退!」


 仕切っている敵のリーダーとなる人物が声を上げ後を退き森の奥へと姿を消した。


 ひとまず助かった。


「ありがとう由美、いいタイミングできたわね……。正直死ぬかと思ったわ」


 そっと私も会話の間に入る。


「由美さん、助けてくれてありがとうございます。でもなんであなたが美咲のXエナジーを?」


 気になっていたので問うてみる。とても気になることだからだ。


「ある日、お嬢様が私に託したんです『帰ってくるその日まで持っていてくれ』と」


「丁度私が反ロシアに連れられる前日の話だけどね」


 そうか、美咲は由美さんに託したのか、自分が戻ってくるその日を見込んで。


 預かり物とはいえ、それを素直に受け入れた由美さんもすごいが。


「由美時間がないわ、出しなさい」


 話の間に美咲が本題を持ちかけた。


「はい。これですね、どうぞ……お返しします」


 そっと彼女は体からエネルギー出し、屈みながら美咲に渡した。


「ありがとう。守ってくれて」


 美咲はもらい受けたそのXエナジーを体の中へと取り込む。徐々に体は今まで以上の早さで回復した。


「さあ蒼衣行くわよ、でも久々の完全な体で体にちょっと違和感あるけど、まあ慣らしていくから大丈夫よ」


 そう言うと美咲は先へ進もうとする、それに続いて私もあとを追う、すると由美さんも急追しながら走るが後ろを向いた美咲は手のひらを由美に差し出し、追うのを拒む。


「どうしてですか、私だと足手まといになるのですか」


 不安に整理がつかなそうな素振りをみせる由美さんに美咲は答えた。


「そうじゃないわ由美、あなたはよくやってくれた。これは決して"用済み"だとか"足手まとい"とかそんなこと私はこれ1つも思ってないわ」


「ならどうして……答えてください」


「あなたを巻き込みたくないから、何故ならあなたは私にとって家族同然の存在なのよ」


「……お嬢様」


 由美さんは嬉しさのあまりに目を震わせていた。


「それにあなたがいなくなったら、あなたの美味しい料理味わえないし誰が華崎邸の仕事をするのよ。私はあなたを本当の姉のように思ってもいたわ、面倒見もいいし料理それだけじゃない家事全般は何だってできるじゃない、私は母みたいにそんなことできないから」


 その言葉は心に刺さる優しい言葉だった。深い意味などこれっぽっちもない、ただそれは本当に当たり前のことなのだ。


「うぅ……お嬢様」


 美咲は振り返り、涙流す由美さんの肩に手を置き、


そのまま優しく抱き寄せた。


「だから、今度は帰って華崎邸を守って。私の大好きな家を、母と父が愛したあの家を。これは私からの命令、あなたにしかできないことなの。分かるわね?由美」


 そして2人は立ち上がる。

「いつまでも泣かないでほら」


 美咲が由美さんの涙を拭く。


「蒼衣さん……でしたか……。お嬢様をお願いします」


 私は胸を張りながら答えた。


「大丈夫ですよ、私が責任を持って守りますから」


「うぅ……くすん、ありがとうございます」


 2人は別れ、私達は先に向かおうととしたとき美咲は立ち止まり言った。


「由美……私が無事帰ったら、みんなでまた昔みたいにお食事しましょう、由美の料理久しぶりに食べたいから」


「お嬢様……」


「必ず生きて帰ってくるわ……約束よ」


「はい! 失礼します」


 そういうと由美さんはその場を立ち去っていった。


 すると美咲は軽く背伸びをして。


「さあ行くわよ蒼衣」


「ねえ美咲」


「なに? なんであんなこと」


 今までの美咲では想像もしえなかった行動だった正直驚いてもいる。


 あんな自己犠牲だった性格なのに。気配りをしたあの行動は本当に想定外だ。なぜそのような事をする気になったのだろう。



 美咲は笑みを浮かべながら言った。

















「全部あなたのお陰よ蒼衣」

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