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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第3章【戦火に舞う薔薇】
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【敵か味方か 後編】

 礼名と少し口喧嘩していたら背後から華崎美咲が姿を現した。


 肩に優しくぽんと手のひらを乗せ、挨拶の合図をした。まあ拉致が空かないと思うのは当然かもしれないが作戦実行前に私は何をやっているんだと心の中で少し反省した。


 それはそれとして自然にひょいと湧くのはやめて欲しい、お化け屋敷じゃないんだから。


「お二人さん喧嘩はよくないわ。これから一緒に共闘する仲じゃない、始める前にそのじょうたいでどうするの」


 笑みを浮かべながら、そっと言葉をいい背中を強引に押されるまま中へと連れられる。


 美咲は両手で両扉を開ける。古めかしい音と共に扉を開ける。


 視界が開け明かりのともっているアジトへと入った。様々な機材、電子ウインドウが複数部屋中に張り巡らされており、現在情報収集中な様子が見受けられた。


 たどり着くまで暗かった空間から明るい部屋へと一新する、ここまでくるまで短かったような長かったような、まあそれぐらい暗い一方通行を進んでいたのだろう。


 奥に誰か1人背中を見せながら立っている、少し前に合ったあの人。


「綾ちゃん連れてきたわよ」


 するとその人は私たちの方を振り返り素顔をみせた。


「あなたは」


「この前ぶり……といった方がいいですかね、東城蒼衣さん」


 その人……いや彼女は案の定察しはついていた、本莊綾この間私に色々と説明をくれた人だ。立場的にみると美咲の右腕と言ったところか。


「蒼衣さんこの人は?」


「私は本莊綾、そうですね美咲さんの助手でもあり、右腕と言っておきましょうか」


 立場上私の予想とあってはいたようだ。


 感じ的にはどこそこか礼名に似ている。冷静なところや口数が少なそうなところが特にだ。


「礼名さん、あなたが蒼衣さん達の所属する組織のムードメーカー的な存在ですか」


「あまり自分を褒めるのは好きじゃないんですがそうだと思います」


 実のところ礼名は私たちの組織にとっては欠かせない存在である。礼名達が加入してくれたお陰で組織のまとまりが前よりか格段によくなっている。


 まあこれも全て政希さんのおかげでもあるのだけど。


「では本題に移りましょうか」


「その前に1ついいですか」


「?」


 話が進もうとしていたその矢先に、礼名の一言で周りが静まりかえった、いやどちらかというとこれは不穏な空気と言った方がいいかもしれない。


 礼名もしかしてなにかこの2人のことなにか確かめたいことがあるというの?


 そして礼名はシュナイダーを取り出して緩慢に銃口を綾さんの方へと向けた。これは"敵に対する向け方なのか"それとも"仲間かどうか確かめるための銃の向け方"なのだろうか。いずれにせよ礼名にはなにか考えがあってのことなのだろう。


「礼名?」


「蒼衣さんやはり私には確かめないといけないようです。この人達を仲間として見るべきかそれとも敵として見るべきかを」


 すると綾さんが語り始める。黙々と演説するように。


「礼名さん、私は悪いことこれ1つ考えていません。あなたはこの前私たちの目の前にいなかったので信じ切れないのは当然のことでしょう」


「ならどうしろと」


「こうしましょう。もし私があなた方を裏切る行為をしたとしましょう、そうしたら私たちをあなたが撃てばいい」


 それは下手すれば命を投げるような行為だった。でも私には綾さんの気持ちがなんとなく伝わってきた。そう彼女は身を捨ててまで、この作戦を成し遂げようと考えている。


 彼女のしかめたその顔には真剣な眼差しがあり、嘘偽りのない様子を見せていた。


 すると礼名は銃口を下ろしてシュナイダーをしまう。説得できたのだろうか。


「その話本当ですね? ならここは大人しくあなた方と付き合うことにしましょう」


 説得はうまくできたようだ、なかなか話を通すのが難しい子だとは思っていたけどここまでとは、間一髪である。


「さてなら今度こそ本題に入りましょうか」


 話の終わりに美咲が割り込みをしてきてそれた話を戻してきた。時間も限りがある、ここで時間を潰すよりかは早く事を済ませるのが先決だろう。


 美咲達にとっても私達にとってもそれは合意することでもある。


「綾ちゃんお願い」











































「敵は私達の言わば管理者でもある部隊です、まとめのリーダー角であるアビレッタが最終目的です」


 アビレッタ、どんな武器を使ってくるのかは知らないが気を落とさず作戦を煉よう。


「敵軍は私の関知した情報では近くの森に身を隠している情報があります、数千体にも及ぶマダロイドに兵がいるみたいです」


 綾さんは電子画面で説明をしながら順を追って説明していく。軍勢の戦力はそこそこあるため、一筋縄ではいかないであろう。


「美咲さん、アビレッタからの警告状は?」


「ええ、今見せるわ」


 華崎美咲はマダラースコープであるメッセージ文を取り出した、どうやらこれが相手からの宣戦布告のメッセージであろう。


「じゃあ読み上げるわね『裏切り者の2人へ お前達は我々の裏切り者と判断した。よって逃亡先である新東京都を最終目的で破壊するとして、まずはお前達2人を始末してやる、正真正銘裏切ったことの後悔を死ぬほど痛みと共に我々が与えよう。今日の夜がお前達にとって最後の夜になるだろう』って書いてあるわ」


 妙だ、差出人が書いていないのはなぜだ? それもそうだし場所も書いていない。


「なんで差出人と場所が書いてないんだろう」


「誘っているとか……?」


 礼名が口を開いた。


「でもそんなことないと思うわ、そいつのこと私よく知っているから…………、そうね明らかアビレッタだと思うわこの差出人、そして場所と時間ある程度察しはついているからみんな私についてきて」


 私達は一斉に頷いた。 場所は恐らく新東京都外にあるあの森……、美咲達がこの間話していた場所だろう。


「それとある一定の時間帯で待ち合わせしてる人がいるから、作戦中その人と会ってもいいかしら」


「なにか作戦と関係あるの?」


 すると美咲は笑みを浮かべ自慢げな目つきでこう言った。


「寧ろそれがこの戦いの勝利への鍵……そう言っておこうかしら」


 鍵? 切り札か何かか。少し気になることではあったが、私はそれにかけることにした。


「綾ちゃん、4人だと危険だからここは二手に分かれない?」


「二手ですか、いいんじゃないですか全滅だけは避けたいですし」


「なら決まりねそれじゃあみんないくわよ」


 美咲は先に入り口前に立つ。


「場所は森ですね? 私もそこ以外考えられないと思います、やはり最初の推測場所が相手の居場所なんですね」


「そうよ、でもくれぐれも罠には最大の注意を払いなさい。さもないと」



























「死ぬわよ」

















 あたりが静まりかえった。死ぬその一言を聞いて一瞬鳥肌が立った。


 油断禁物そういうことなのだろう。森……今のこの時間帯、奇襲かけられてもおかしくないだろう。


 礼名も薄々と恐怖を感じているせいか、体中の震えが止まらない様子である。そうか礼名も怖いんだね。私だって怖い、さっきから私も震えが止まらないから。


 だとしたらこの私も恐怖しているのだろう。いや怖い、死ぬのがとても。


 血まみれのビジョンが脳裏に映り込んでしまう。斬られ、撃たれその場で倒れ込む自分の哀れな姿が。


 これが恐怖、死ぬその恐怖が一番怖く感じてしまう。いつもの威勢ならこんな感じ無心になって誤魔化すこともできるが今はどうだろう。


 体はとても正直である。


 自分で感情を制御仕様としても、体は正直でちょっとした刺激も残酷な痛みへと変わってしまう。それが人間の恐怖の感情であり、抑えきれないほどの自分の心の痛みでもあるのだ。


「………………」


「………………」


「………………」


 口を出すことすら拒む。次第にみんな恐怖、そして死に蝕まれ、決断が固まらない状態に陥っていた。


 





















「礼名……」


「蒼衣さん」


「大丈夫? 体震えてるよ」


「蒼衣さんありがとう……怖くて」


「大丈夫私がついてるから安心して」


 そっと私は礼名を励ました。だって大切な仲間なんだから。いやここにいる全員は大切な仲間。同じ気持ちを共感できるそれはつまり。


「どうしたの? 恐怖でおびえちゃった?」


 美咲が私に背中を見せながら喋る。だがその声質に違和感を覚える。震えのあるような偏りな声。


「あなただって怖いんでしょ……強がってるつもりだろうけど本当は……。」


「えぇ……。だったらなに?」


「ここにいる全員は同じ気持ちを共感できる仲間よ。だからこそ共にこうしてその恐怖に打ち勝とうと立ち向かっていける。」


「……。」


「本当の"勇気"はねその恐怖に打ち勝つ勇気よ。諦めなければ希望への道が開く……私はそう思っている」


 私の想いが彼女に届いたのか、美咲の口がゆっくりと開いた。


「やはりばれてたか。感情は誤魔化すのが難しいわね、でも貴方たちとなら立ち向かっていける気がする……」


 顔をこちらに向けると美咲は再び前に戻した。泣いているの?


 そして彼女は優しい小声で言う――――――。


「大丈夫、私が必ず貴方達を守るから」


「!!ッ」


 その言葉を聞くとまるで美咲からは政希さんの面影らしいものを感じた。非常によく似ていた。まるで枯れることのない永遠に咲き続ける一輪の薔薇のように。


「行こう……みんな、そして華崎いや美咲」


「当然よ」


 そして私達は部屋から出て敵のいるとされている基地へと向かった。

















 歩いている間に服のポケットから一枚の紙切れが落ちた四つ折りにしてある紙。その紙がなんだったのか一瞬で思いふけ、誰のものなのかも察しがついた。


 同時に重要なことを思い出した。


 そして私はみんなに話しかけた。



























「ねえみんな……、行く前にちょっといい?」



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