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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第3章【戦火に舞う薔薇】
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【敵か味方か 前編】

「それで話というのは?」


 時刻は13時過ぎ、猛暑日の午前中の授業を終え、礼名と約束した通り私は礼名の自室へとやってきた。


 暑いためか冷房がかけてあり、部屋中に涼しい風が吹く。


「うん実はね……」






 ~数日前~


 この間のことだそれは華崎美咲達から告げられた衝撃のことだった。


 彼女2人は本来、反ロシア内で信任されていない者用に配備される形で作られたのがその反ロシア特殊機関らしい。


 主に敵の情報を収集してそれを資料としてデータを作るのがこの部隊とのこと。あまり戦闘には加入しないのが他の部隊と異なっている点である。


 しかしこのデータ作りは主に上からの命令が下されない限りは、動けない状態なのだ。


 彼女2人はあることがきっかけで私たちの存在を知り、上の者に気づかれないように探っていた。ことの発端となる華崎美咲は元々日本の新東京都の華崎家の一人娘として、普通の殺人者同様に暮らしていたが、その彼女の強力な力を反ロシアは欲しがり、反ロシアは資金を使ってまで彼女を買った。


 父、母共々にこのとき既に故人となっており、かといって執事達は拒否することもできなかったのである。


 その彼女の力を彼らは軍事兵器として利用し、主力の殺人者として雇った。だが華崎美咲とことん命令に逆らった、しかしやめようにも上の者からは「やめるならこの場で死んでもらう」と言われたそうだ、つまり逃げ道はなかった。


 それで今の特殊な部隊に入れられ、戦わない代わりにデータ収集を任されることになったらしい。


「実はこの間あなたたちが戦ったヘル・ビートル……あれは私が送り込んだ刺客情報収集にね」


 礼名があのとき戦ったヘル・ビートルは彼女からの刺客だったのだ、元々私の戦闘データを収集し分析するのが本来の目的だったみたい。これは自らの行動で決して命令されてやっていることではないのこと。


 そしてヘル・ビートル撃破後に脱出を図り綾さんと脱出しそれで日本に戻ってきたらしいが、飽くまで相手側からは襲ってきたと見せかけた演技を何回も見せたらしい。


 脱出のことを聞きつけた上の者は彼女2人を裏切り者として認知し、もうじき私を殺しに日本へとやってくると言っていた。


 そこで彼女は一つ布石を取ったのである。それがこの私東城蒼衣の助けである、つまり何が言いたいかというと彼女は日本に安全に帰るため有力な者を探していたのである。一つの可能性にかけて。


 つまり私は彼女の手助けをする形で、彼女の協力者にさせられたということである。


「じゃあそいつを協力して倒せばいいってことね」


「そういうこと」


「ですが一筋縄ではいかないとおもいますよ、相手は強力なマダロイドがあるんだとか」


「それで気になるんだけど綾さんって華崎美咲の協力者かなにか?」


「うん、彼女は私たちのサポート役よ」


 それでやつらが来るのが丁度今から一週間後のこと、時間が大分迫ってきた。


 作戦としては町外れにある荒野、森を使いそこで一気にけりをつけるようだ。


 無茶なことだとは思うが被害が拡大するよりかはましだと考えていることだろう。


「一週間後か……。頑張って戦うわ」


「頼りにしているわ……蒼衣」


「それではお願いします蒼衣さん」


















 というのがこの間の最後のやりとりだった。




















「ということなんだけど、どうかな?」


すると礼名は、顎に手を当て視線を少し斜めにして目線をずらす、まあ無理もない。何にせよ数日前までは敵視していた相手だ。私はともかく礼名は華崎美咲達と鉢合わせもしていないのだから、警戒も余儀ない。


「…………」


 ずらした視線を私の方へ戻す。


「そうですね、少し不安はありますが蒼衣さんを信じてみます……、行きましょう」


 行く気になってくれたようだ、最初はツタのことで嫌悪感を抱くのかと思っていたが、とりあえず一安心。


 決行は明日の日没前と話を聞いている。場所はあの電波塔、そこを拠点として彼女2人は作戦を立てているらしい。


 落ち合いとなる場所はそこになっている、この間浅葱原さんからもらったあのカードを使って入る、まあここまでは想定内だ。


「ですが驚きましたよ、ツタの本人が訳ありで動いていたとは。」


「根は悪そうな人達じゃなかった、それに嘘ついているような感じではなかったね。寧ろ助けを求めていたよ」


「内容は把握しました、それは見過ごせませんね…………。明日ですか、頑張って日中は事を済ませて時間に間に合わせるのでそのつもりで……。了解です」


 さすが礼名飲み込みが早い、礼名さえいれば百人力だ。1人抱えている悩みが100個浄化されるようなものである。


「ありがとう礼名」


「いえいえ。これで下準備は整いましたねあとは明日まで待つだけですね」




















 そして翌日の夜。


「なんだ蒼衣、礼名どこかいくのか?」


 出かけようとした私たちを政希さんが呼び止める。私は礼名に目で合図してお互いに頷きを交わす。


(任せたよ礼名)


(承知です、任せてください)


「いえ、少し散歩でも行こうかなと」


 礼名が返答する。


「そうか、まあそんなきついしばりはつけないが、あまり遅くなるんじゃないぞ」


「政希さん心配はいらないですよ。すぐ戻ってきますから」


「気をつけてな。2人共」


 私たちは今宵の真夜中の新東京都へと踏み出した。

















――――――――かならず生きて帰ってきますからと小声で一瞬政希さんの方へ振り返ってそう言った。


 その時の政希さんの表情は眉を顰め浮かない顔をしているかのように感じた。しかしそんな私たちを彼は追いかけては来なかった。


 なぜならその理由を私はよく理解していたから。




















「いいんですか本当のこと言わなくて」


「大丈夫」


「確かに2人で来るよう聞きはしましたでも……。」


「礼名、"ついていい嘘"と"ついちゃいけない嘘"は違うよ」


 きっぱり不安げにしていた礼名にそう言った。


 そして目的地である電波塔へときて拠点があると見なされる場所へと足を運んだ。


「ここが例の落ち合い場所ですか」


「そうなるかな……。さてここで浅葱原さんにもらったこれを使って」



 浅葱原さんにもらったカードを使った、すると。


「これは」


 なんと眼前に隠れていた大きな人が入り込めそうな空洞が現れた。奥は暗く何も見えず空洞から低音が響いていた。


「先へ進もう礼名」


 うんと礼名は頷いて、先へと進む。暗い道だがくねりはない直線上の道だった、とても暗然となる道を私たちはためらいもなく足を無意識に動かす。歩くたびに多少の恐怖を警戒はしていたが、そんなことは一つも起こらなかった。


暫くすると点灯している連なる電灯の道が見えてきた。僅かな明るい光だがあたりを照らす光としては十分な光源で、それは行くべき場所に導いて誘導でもしてくれているかのような感じだった。


「薄暗くて私は少し不安でしたが光が見えた一瞬だけ安堵しましたが、ますます不安感が増してきましたね」



 私は手のひらを力強く締めて。


「大丈夫だってこんなのどうってことないよ」


 と答えたが。


「蒼衣さん眉がピクピク動いてますよ……。強がらなくてもいいですから」


「あはは……。ばれちゃったか」


 察しの鋭い礼名には冗談は通用せずお見通しだった。まあ私自身も薄々感じてはいた。その証拠にさっき礼名が言った眉、そして顔から流れる汗それが何よりもの証拠だった。


 案の定少し焦り気味だった。


 お互いに道が不気味すぎて中々足が進まない。


「肝試しやっているんじゃないからさは、早く行こうよ」


 と震え声を立てながら奥へと進んだ。


 するとまた空洞が見えてきた今度は中は、天井の電灯がついていた。


「ここが目的地? 長かったような短かったような」 


「蒼衣さんが躊躇してなかなか進まないからでしょ?」


 いやいやさっきまでのあなたもそうだったよね、なんでそうやって何事もなかったかのように目瞑りながら額に手を当てているの。


「お二人さんこんばんは」


「うわっ!!」


 口で喋り混んでいた私たちの背後に笑みを浮かべた美咲の姿がそこにあった。


「びっくりしましたよ」


「急に驚かさないでよ、本物の幽霊でも出たのかと思ったじゃない」


「ごめんごめん、外から声が聞こえたからつい……ね。驚かせようって思って」


「余計なことやらないでいいよ、もぉ」


「とにかく説明は奥でするわ蒼衣、礼名ちゃん」


(この人が華崎美咲の本体でそのツタを操っていた張本人か)


 口げんかしつつも私たちは、美咲の後を追いながら中へと入った。

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