表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第3章【戦火に舞う薔薇】
68/139

【美咲の布石】

「くっ……。侮っていたわ、まさかこんな力を隠していたなんてね」


 渾身の一撃を放ち、相手を打ち負かしたと思っていたが華崎美咲は衣服がボロボロになっているのにも関わらず、それでも立ち上がってくる。まるで散ることのない花のように。


 彼女はどこか私に酷似した何かを持っているのだろうか。強い精神力何事にも屈しない心強さを感じるがそんな彼女が私の今の敵であるということが非常に惜しい点ではある。


「あの一撃を食らってよく立てていられるわね」


「正直驚いたわ。まだそんな底力が残っていたなんて、これがなかったら死んでいたわ」


 彼女の左手には白銀の盾があった、バラ模様の大きい盾である。しかし見る限りあまり傷はついていない。かすり傷くらいといった具合だ。


 どんな力があるかは知らないが、流石に完全には防ぎきることはできなかったらしい。


「一つ教えておくわ。私の扱うこのグレイスローズは攻撃も防御長けているわ。あなたの技を防ごうと盾を瞬時に出したわ、本来この盾は全ての射撃、攻撃にも耐え抜く能力を持っているの。正確には吸収だけどね」


 彼女の体の傷がみるみるうちに治癒していく。これがあの盾の力なんだろう。もしかしてあの盾吸収したエネルギーすなわちXエナジーを自分の治癒エネルギーに変換できるのか。


 なんということだ、なら今の技の攻撃は全て水の泡になってしまったということ、惜しむところはあるがもう私には反撃する手も残っていない、下手に体動かせば出血死ままならない。


「だったら早くとどめさしなさいよ、私にはもう手が残されていない」


「一つ聞くわ、生きたい? それともこのまま死にたい?」


「なにを言って……」


「いいから答えなさい」


 状況が状況だったので私は本心の答えを述べた。


「それは生きたいわよ、私には守りたい人達がいるから」


「守りたい人か」


「いいわあなたがそう言うのだったら……」


「何を言って……うん?」


 体中から痛みが引いていく、それどころか傷口もしまっていった。


「なんのつもり?」


「治してあげるから私に少し付き合いなさい」


「誰があなたなんかに……」


「そんなこと言っていいの? このままあなたの息の根を止めることだって容易いのよ」


 逃げ道は残されてはいないようだ、ここは大人しく彼女に従おう。どうやら完全に悪だとは考えにくいな。


「わかったわ大人しく従うとするわ……でその内容を教えてくれない?」


 ウインクしながら得意の高速移動で相手の背後に立った。


「切り返しが早いわね……そうねまずは私がなんで日本にきたのかそこから説明した方が良さそうね」


どうやらなにやら訳ありだろうか、死にそうになった私を助けるとはどんな考えをしているかは分からないが少なくとも重大な理由があることは確かだ。


「その前に一つ、それであなたは結局私の味方、それとも敵?」


 華崎美咲は拳を顎に当て考え込む様子を見せる。


「……味方と考えてもらって構わないわ。むしろこっちとしてはあなたに手助けして欲しい気持ちよ」


「さて本題に移ろうかしら、いいここで聞いたことは一緒に戦ってもらう人以外口外はしないこと」


「一緒に戦ってもらう人って? つまり私の仲間も呼んでいいってことならいっそ全員呼んで……」


「そうはなるべくしないで欲しいわ、私ともう一人仲間いるんだけどその子を入れ、あなたとその仲間……計4人でこれを実行するわ」


 というかもう一人いたのか、薄々気づいてはいたけど本当にいるとはね。4人構成か、ここは瀬谷さんでもいいけどやはり同組織のメンバーで頼りがいのある……。


「私の組織からは礼名を出すわ、その子はね頼りがいのある組織のムードメーカー的な存在だから」


「なるほどね、武器の種類は? 扱う武器の種類によって状況に応じて場合によっては変えないとね」


「その点に関しては問題ないかな、彼女は武器のスペシャルリストみたいな感じだから心配いらないわ」


 礼名は近距離、遠距離諸共器用に使えると言っていた、武器の扱いに関してはどちらでもいけると言ってたな。


 でもこのことを聞いた礼名はどういった反応を取るのだろうか、いつも冷静な顔を見せる彼女だがこれを聞いてどんな反応をするか気になるところではある。説得が非常に大変そうだがなんとか粘るしかないだろう。


「手を差し出して」


「こ……こう?」


 言われるがまま手のひらをさしだした。


 そうすると華崎美咲は私の手のひらに自分の手を重ね不思議な力を送り込んだ。


「私の一部のエネルギーをあなたの体に流し込んだわ……、小さい通信機みたいなものでね、私が必要になったとき念じれば小さなツタがそこから生えてくるはずよ、そのツタは視界の情報、音声全て聞いて見て取ることもできるわ、体には害はないから安心して」


 植物版の通信機と解釈する方が好ましいだろうか、ここで考えられるのが華崎美咲本人が一緒に礼名の元に行ったとしても真っ先に疑われてしまい攻撃を受けかねない。まずは信頼性のある者、つまり私に話を通してもらいたいということか。


「しまっている間もその効力は続くから心配はいらないわ、とりあえずこのあと帰ったらその礼名ちゃんって子に話せるタイミングができたら話しかけて、いい感じの時きたら私を出して、でもなるべく1対1の時だけね」


「了解」


「そして作戦本題ね、本題に関しては私とさっき言ってたもう一人の子が説明するわ」


 すると冥々とし、華崎美咲側の暗い渡り廊下の影から足音を立てながら、一人の女の子が顔を出した。


 金髪のミディアムヘアの子だった。華崎美咲同様にどこか見覚えのある軍服を着ていた。


「初めまして、私は反ロシア特殊機関部所属の本莊綾(ほんじょうあや)と言います……。ざっくり説明しておきますね東城さん」































そして私はその綾さんから詳しい作戦の内容を聞き、それを礼名に話すことにした。
































 数日後その日は夏休みに一度ある登校日だった、登校と言っても午前中だけの授業だ。


 それにしてもよりにもよって夏休みの登校が一番辛く感じるのは気のせいだろうか。


 気が散りそうになったり、教師の長々とした説明を聞いても長続きしない。まあそれでも耐えに耐え、なんとか終わり頃まで踏ん張った。


 どうせなら最近仲のいい関係になった月神先生の話を聞きたかった。


 終礼後、私は礼名に電話をかけた。例の話を帰ったあと話そうと。


 色々と説明は受けたが果たして礼名は聞く耳を持ってくれるかが心配である。


「もしもし……礼名?帰ったらちょっと話いいかな?」


「ツタの件ですか?」


 礼名は映し出されるビデオモニターで可愛らしい首を傾げる素振りをみせた。


「そうなんだけど少し積もる話が積もりに積もったというか……なんていうか」


 笑って誤魔化す、でも見え見えなわざとらしい演技は礼名にはあまり通用しない。


 礼名は政希さんの真逆版みたいな感じでなにもかもが細かく鋭すぎる。


「隠さないでいいですよ帰ったら半信半疑にならずちゃんと聞いてあげますから」


 そして私は帰ってから礼名の部屋に入った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ