【心に空いてしまった深手】
途中から心理戦みたいになってしまいましたけど大丈夫ですかね
我ながら頑張っているつもりではありますが
さて蒼衣は情報を入手できるのか
彼女の返事を待つ。顔からは漸次に汗が床へと滴る。
勝負をしてから数十分程度だろうか、自分の感覚的にはあまり時間が経過してないように感じはするが、そこは時間的な麻痺として捉えればいいだろう。
この説が正しいければ私は相手から有力な情報を手に入れることができる。
華崎家のことに関して、然り而して私が欲しい情報全てだ。
ここで負けでもすれば、彼女華崎美咲の行方を天壌無窮にくらましかねない。
できれば私の言ったことが合っていて欲しい、いや絶対に正しいことだと信じたい。
「くすっ」
浅葱原さんは囁くように小さな声を立てて微笑する。
「蒼衣さん、お見事です さすが天堂君の組織にいる殺人者ですね」
「いやそれほどでもー……って浅葱原さん、政希さんのこと知ってたんですか?」
「あれ、天堂君に聞いてませんか? 私天堂君のクラスメイトですよ」
く……、クラスメイト!? 聞いていないんだけど! 政希さんになにも聞いていなかったしというかなんで言わなかったのだろう。……、いやこれに関しては私が悪いだろう。
家出るとき政希さんにどんな人なのか聞いておくべきだった。
「いや全然ですよ だってそんなこと何も言ってくれないんで……って結局どっちなんですか?」
「取り乱してすみませんね 蒼衣さん悔しいですけどこの勝負あなたの勝ちです」
「ということは私が言ったことは合ってることでいいんですね?」
「当然です、負けは負け譲りますよこの勝負の勝利を」
意図もあっさり勝ってしまった、正直合っているのかも怪しいところだったが。
すると浅葱原さんは人形の動きを止めるよう手で仕草をした、仕草をするというよりかこれは指で何かを描くような動きをしていた。
人形達はピクリと止まった、まるで魂を抜かれたみたいに。
「怖がらせてしまってすみませんね 少し驚かそうと出来心で」
あれで出来心とは冗談にもほどがあるとおもうが、浅葱原さんなりの仕法なんだろう。人をおもてなしするようなあの様な似たものを感じた。
「私はあなたを試しました。どれほどの強者なのかを…… それは戦闘だけとは限りません」
「そうだったんですね てっきりこのまま殺されるのかと思いましたよ」
「しませんよ私たちは対立する関係ではありませんから正真正銘の仲間ですよ」
浅葱原さんは即答で答えてくれた。でもどちらかというと"殺さない程度で戦った"と解釈した方がまとまりがつきやすいのではないのだろうか。
彼女が仮に腰を入れていたのならば、間違いなく殺されていただろうと身をもって実感した。
本当に敵でなくてよかったと心から思う。
「そうです、話が逸れましたね それでは伝えます華崎美咲の居場所を」
私は再び息を呑む。
「彼女の場所は恐らく電波塔にいるでしょう」
電波塔新東京都の電気街にある建物で、普段はネットワークの電波を発信している場所なんだが、そこに本当にいるのか。
「そこに行けばいるのですね?」
「私は嘘つきませんから案ずる必要はありませんよ」
「でもどうしてそんなこと知ってるんですか? 目見えないはずなのに」
「人形達が教えてくれたのですよ この子達は言わば私の目の代用…… この子達が見た情報を私に伝えてくれる仕組みです 私のXウェポンはそういう能力も持ち合わせているんです」
だから瀬谷さんと私が戦っていたことを知っていたのか、つまりそのときどこかに浅葱原さんの人形が1体どこかにあったということになる。
まあこれで場所は絞れこまれた、電波塔いこう。すると浅葱原さんは手渡しでとあるものを渡してきた。
「これは?」
「行く前に渡しておこうと」
薄っぺらな黒いカード、少しでも力を加えるだけでも割れそうな大きさだった。
「それはマダラースコープで使ってみてください それは光学迷彩を見破る特殊なカードです」
これは言わばゲームのカセットのようなもの、マダラースコープでカードを読み込んで遊ぶ機能がある、大きく分けて3つある。1つはゲーム用、2つは軍事向け、そして3つは特殊なカードになる。
軍事用のカードといってもこれはほぼスパイ向けのカードしかない。
どうやらこの光学迷彩を見破るカードが相手の突破口になると浅葱原さんは考えているらしい。
なら帰ったら早速次の段階に移ろう。
「それでは今度こそ失礼しますね」
「お気をつけて蒼衣さん」
しかし気になることが1つあって振り返った。彼女浅葱原麻緖さんの目だ。あれがどうしても気になる、生まれつきという説もあるが、それは私の行動で確かめることにした。浅葱原さんのことを。
「どうしたんですか振り返って」
「いえ、少し気になることがありまして、なんで浅葱原さんは目が見えないのかなと、生まれつきや持病なんですか?」
すると浅葱原さんはまた囁くような声で答えた。
「話せば長くなりますけどいいですか?」
私はゆっくり首を縦に振った。
すると浅葱原さんは、背中を向け車椅子で窓開きされた方へ場所を移すと語り始める。
「そうですね、あれは前の戦いに遡ります、忘れもしません私の視界を奪ったあの日のことを」
ありがとうございました!
次回は麻緒の過去語りがメインとなります
さて彼女の身に一体何が起きたのでしょうか次回に交互ご期待、それでは皆さん次回にて!