【一族の遺産】
ツタ使いの彼女の正体が徐々に明かになっていきます。
「どういうことですか?」
恐る恐る尋ねる。いや何かの冗談だと思いたかった。
「言葉通りでございます 華崎家の旦那様と奥様は前の戦いで亡くなられたのですよ」
歩きながら瑛一さんは話を続ける。
「私もまだ信じ難いことではありますが、全て事実です さあこちらに」
前には大きな大扉があったそれを開け、中へと私達は入った。
大きく長く続く食堂、後ろには暖炉がある。壁は視野の広い縦長のガラス窓が張り巡らされていた、如何にも豪族らしい部屋だ。
「いつもお一人でお食事を?」
礼名が問い質す。
「いえ、私ともう1人雇っているメイドがいるのですが、生憎にも今外出中で」
でも実質人の人数は少ないと確信が持てる。寂しくはないんだろうか、悲しくも辛くにもならないんだろうか、考えれば考えるほど疑問は深まるばかりだ。
「…… そうなんですね、というかここにもメイドさんいたのですね」
「あ、おかけになっても構いませんよ」
「すみません、ありがとうございます」
長テーブルの椅子に腰を掛けようとしたがその前に気になるものを目にした。
暖炉の上に5枚ほど写真が飾られていた、集合写真が多いので家族写真かなにかだろう。
近づいて見ることにした。
白銀の髪をした夫婦が微笑んでいる写真もある、この2人が主なのだろうか。
「瑛一さん この2人がここの主だった夫妻なんですか」
「左様です 右が奥様の華崎花世様、隣が旦那様の華崎勇一様です」
右の女性は髪長の女性、隣の男性はベリーショートの髪をした男性だった、この2人がここの主らしい。
と気になるものがもう1枚、1番端の写真だけ高い高いされている幼女の1枚写真が写っている。誰だろう。
バラのヘアバンドをつけた美々しい姿が印象的である。
「その方はご夫妻の娘様でございます」
「娘様 ということはこの2人の子供?」
聞くとどうもこの子は1年前行方がつかなくなっている子みたい、少なくとも死んでいるとは限らないので生きている可能性はある。
「それでこの子の名前は?」
気になるのはこの子の名前だ、肝心なことは聞かないとね。
「名前は華崎美咲様です 私にとってもこの華崎邸の皆にとって宝のような存在でした………… 美咲様今どこにおられるのですか」
美咲……か。 美しく咲くって書いてで美咲……。いい名前だわ。
ロズの言っていたお嬢様が誰なのか検討はついた。でも見た感じ私と全然似てはいないが。
瑛一さんは酷く悲しんでいる様子だった。それもそうだ、家族1人もいない家なんて誰だって悲しい。家族がいるからこそ本当の家族と言えるのではないだろうか。
ならここで私ができることはただ1つ。
「瑛一さん きっと帰ってきますよ」
瑛一さんの肩に手を乗せる。
「えっ?」
「家を捨てる家族なんていませんよ」
「私も蒼衣さんに同感です」
「蒼衣様、礼名様……」
涙しながら瑛一さんは私の手を掴んだ。
「なら約束します、必ずその美咲さんを私達が連れて帰るということを」
「本当ですか? ありがとうございます」
「ええ必ず……」
私らしくない選択かもしれない、けど政希さんならきっとこうするだろうと思ったから。
誰かの手助けをする、それが立派な殺人者になる唯一の近道だと私は思う。
そしてようやく本題に入った。
「それで話というのは一体どういうもので?」
私達2人はうんと頷いた。
「ツタのXウェポンご存知ないですか?」
「ツタのXウェポン? 知ってるも何もそれは私がよく知ってますよ」
「え?」
「え?」
「それはお嬢様の使う能力ですからね」
不安が吹っ切れた。そして今までの話がだいぶ繋がってきた。
「もう少し詳しく話を聞かせてくれませんか?」
「分かりました少し長くなるかもしれませんが」
そして私達はツタの情報をだいぶ掴んだ。あと1歩あと1歩で手が届きそうな距離になってきたのだ。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「いえいえこちらこそ ではお嬢様のこと頼みます」
「はい、それでは失礼します」
軽く瑛一さんに一礼をして華崎邸を後にする。
一応コピーして貰った華崎美咲の写真を貰った、これさえあれば多少探す手間が省ける。
明日で街の人に声かけてみようかな。
すると礼名が語ってくる。
「蒼衣さん 啖呵切ってしまいましたが、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、それに家族のいない家なんて寂しいでしょ?」
「そうですけど…… とりあえず政希さんに連絡を………………」
私は礼名を止めた。
「結構よ これは私達で解決しよう」
「でも……」
「この件は迂闊に手を出せば死にも繋がる…… そうならないためにも……」
「分かりました 今回は付き合ってあげますよ」
正直1人だと不安な面もありそうだけど。なぜなら今回の相手はかつてない程の大敵だからだ。
作戦は前もって立てる、そこも考えて礼名を連れてきた。
だが肝心なのは相手が今どこにいるかだ。明確な場所すら分からないと作戦は立てることもできない。
「でも相手がいる場所分かんないんだよね どうすれば……」
「なら私はツタがいたところに行ってみます。ひょっとしたらなにかわかるのかも知れないです」
さすが礼名、行動力あるからすごく助かる。1人だったらとてもじゃないけどここまで思考は回らない。
「蒼衣さんはもう1度瀬谷さんに連絡とってみてください」
「オッケーだよ そっちは任せるわ じゃあ今日はもう遅いし明日からその作戦で」
「了解です なにかあったら連絡しますね」
そして翌日、私と礼名でツタの手がかりを手分けして探すことにした。
次会ったら今度こそ素顔を晒しあげてあげないよね。
ありがとうございました。
次回は遂にツタとの正式な接触と言った見込み次第です。華崎美咲彼女は生きている
のでしょうかね。
話が相変わらずグダグダで申し訳ないですが我ながら頑張っている所存です。
来週も見てくださると嬉しいです。