【漫画の世界へ】
そこは辺り一面が白黒の世界だった。
色じみのものは1つもなく、無色で世界の色は統一されていた。
静寂とする砂漠地帯、微かに風の吹く音はするがそれ以外音はしない。強いて言うのならば自分の足音、声等くらいだ。
まるで理解できなかった、急展開に脳が困惑する。
彼女――瀬谷真希は私に一体何をしたのかが気になる点ではある。
すると脳から声が聞こえてきた。
「東城さん聞こえる?」
「何?」
テレパシーをしてきた彼女に対して私もテレパシーで返す、どうやらテレパシーなら外部と通信、会話ができるようだ。
「その世界はどんな世界か知りたい? まあ知りたくない人なんていないか」
「その世界はね 簡単に言えば“私の描いた漫画の世界”よ」
「漫画の世界?」
通りで白黒の世界なわけだ、ということはこれも彼女のXウェポンの能力ってことか。つまり今のこの私の状況は肉体ごと漫画の世界に吸い込まれ、現実世界とは今干渉が絶たれたってことか。
待って? じゃあどうここから脱出すればいいの?
…………。
「脱出方法も知りたい? でもそれじゃあつまんないから教えてあげない」
「じゃあこれだけ教えて 抜け出す方法はあるの それともないの?」
「あるわよ ただ」
「ただ?」
「この世界を無事攻略できたらの話だけど」
そして彼女は通信を切った。
「肝心な時に……」
悔しさのあまり私は親指を噛んだ。
――――漫画の世界。 考えてみれば危険な臭いしかしない。
彼女のXウェポンの能力は描いた物を現出させることができる。
でもそれが仮に場所問わずどの空間でも送り込めるとしたら? 内部にもこませることもできるのではないか。
すると突如として目の前に巨大な恐竜のような怪物が現れる。
「早速仕掛けてきたか」
襲ってくる相手に対して私は距離を取りながら走る。
そして時間につれて敵も徐々に増えていった。気づけば逃げ道はとっくに塞がれた具合だ。
「このッ!」
ストライクで勢いよく払って攻撃するがビクともせず、巨人型の怪物に体を捕まれ、地面へ叩きつけられた。
「ぐふっ」
「ああ そうそう言い忘れてた」
瀬谷真希が再びこちらに語りかけてきた。
「仮にその世界で死ぬとね」
あなたは
漫画の世界の住人となる。
「どういうこと?」
「正確には漫画の1部のページに永遠に閉じ込められる…… つまり現実世界との干渉が絶たれるってことね 永遠にね」
現実世界から幽閉されてしまうってこと? 味なまねしてくれるわね全く。
「私はこの方法で何度も生きた人間を閉じ込めた この世界にね」
「くっ なら私はその罠にまんまと引っかかったって事ね」
1本取られたということか。どうやら今私が相手にしている者は、“隅に置けない相手”らしい。さてどうしたものか。
「抜け道ならあるわよ」
「なら教え……」
「簡単には教えないわ つまんないでしょ」
即答で返事を返した。
「例えるなら…… そうね ババ抜きで簡単に誰がジョーカー持っているなんて言うわけないでしょう? 要はそれ同様なの」
そっちがそんな考え方するなら私は――――。
「ふっ」
「なっ 何がおかしい?」
私は余裕っぷりに笑う。相手に煽りをかけるように。
「上等じゃない…… なら私が行う手段はただ1つ ここから抜け出す方法を見つけ出す」
「そんなこと出来るわけ……」
確かに普通の人だと挫折するような最難関所だ。 でも必ずその抜け道となる穴があるはずだ。
その抜け道を私が見つけ、ここから出てやる。 出たら真っ先に相手を返り討ちにしてあげるわ。
「自力で“手段”は見つける それが私のやり方よ」
「ちょこまかと軽口ばっかり…… 私が新たに紙に書き込めば指令も敵も追加できるっていうのに」
「それで管理者気取りね ならやってみれば? 受けて立つから」
私は再び身構えた。ストライクの刃を突き出すような体制で。
「これが精神統というやつかしら」
「いいわ そっちがその気なら……」
完全に攻めたら攻め返すような心理戦のような状態だった。だが相手はさっきより少し焦り気味のようだ。
上手く挑発に乗せることはできた。 後はこの謎解きの回答だ。あと1歩で手が届く、その攻略の答えさえ分かれば。
「?」
私はあることを疑問に抱く。それは
あんなに走ったのに息切れが一切しない矛盾点のことに……。
それがのちの攻略のヒントになろうとはこの時の私は気づきもしなかった。