【探り者その2】
1本の巨大なツタが体を回しながらこちらの方へと襲ってくる。
一体どこで誰が操作しているのかは分からないままだが、そんなに距離は離れていないはずだ。
もしも距離が離れているのならばあんな細かな動きはできない。だとすると。
「……っ!」
勢いよくストライクで斬り込もうとした、しかしツタは石のように固く傷1つすらつかなかった。
危険を悟り、そこから宙返りして後ろへ下がり距離をとる。
無理は禁物だ。あんな巨体に1回でも掴まれれば、身動き1つすらできず殺されてしまうだろう。
周りに対処できそうなものはひとつもない。
私が策を考えていると、地面が揺れ地面にヒビが入る。
「地震……? いやこれは」
それはツタが地面を揺らしながら割る、相手からの攻撃だった。
距離を縮めるための攻撃か。
瞬間的な反応で飛んで避ける。1秒でも遅れていたら体諸共挟まっていただろう。
相手は遠距離戦でも戦えるってことか。僅かな不意打ち程度の攻撃だが、相手の動きを封じたりさせる厄介な攻撃だ。
さあどう攻撃を仕掛けようか。なににせよ簡単には貫けない相手だ。
道の周りにある建物の屋根を円を描くように回り、上から急落下しながら攻撃しようとした。
「この速度なら! 切り込みくらいは入れられるはず」
ブシンッ!
切り込みを入れた確かな音が耳に響く。一瞬の僅かな攻撃だが、弱点を上手く突けた。
「効いてる なら今からこの攻撃でとことん攻撃して 切り刻んであげる!」
少し能力を使って速度マッハ15にして一気に勝負をつけようとするが。
「ふーん 傷つけるなんてやるじゃない」
路地の隙間から茶色のフードコートで身を覆った女性が姿を現す。顔はフードで隠しており、薄ら表情が見えるくらいだ。
声を聞いた限り、女性の高々な美声だったのですぐ女性だと認識はできた。
「あなたは……」
「このツタの飼い主って言っておけばいいかしら」
「……? じゃあそのXウェポンはあなたのもの?」
操っている本人直々前に赴くとは、探す手間が省けたと言ったところ。 これを親切と言っていいのだろうか。
「うーん…… 正確には私のXウェポンが作り出したものっていえば纏まりがつくかしら」
「えっ つまりそれって生成したものに過ぎないってこと?」
「まあそんな感じかな」
あのツタは本体じゃなかったのか。じゃあ本体は彼女が持ってい…………る?
「それにさ コレ見てよ」
さっきツタに傷をつけた部分に指を指し、私はそこを凝視する、すると驚くことにその傷はなくなっていた。
「なっ……!」
「悪いわね この子は特殊な能力を備えているの」
「特殊能力って?」
「さっき殺した人のエネルギーを全て自分の治癒エネルギーに変えたの つまりこの子は生命エネルギーを回復に変えられるってこと」
治癒のエネルギー? Xエナジーと、もしかして血か。それがあのツタの回復源ってことか。
それじゃ何回斬り込んでも埒が明かないじゃないか。血なんて地面にいくらでもある。
無意味な攻撃になったわけだ……。 くそッ!
「そのためだけに殺したって訳? 酷いわ」
「本当は別の目的だけどね」
笑みを浮かべながら微笑む。
目的……? 別の目的って。
「そのうち教えてあげる 今日はほんの小手調べ」
彼女は屋根に飛んで立ち去ろうとする。
「待って! あなたは一体……」
「なあに…… またすぐ会えるわよ東城蒼衣」
そういうと夜に佇む月の後ろへと下がり、姿を消した。
でも気になる点が1つ――――――。
なぜ彼女は私の名前知っていたのだろう……そこが何よりも不可思議だった。名前も名乗っていないのになぜ私の名前が。
“またすぐ会えるわよ東城蒼衣”
これは何かの忠告……なのだろうか?
その夜の風は荒々しくざわめいていた。
後日私は政希さんに1つ尋ねた。
「すみません 政希さん1ついいですか」
「なんだ蒼衣? また説教話か お願いしますお願いします 勘弁して欲しい!」
「いえそういう事じゃなくて」
「す……すまん それで話って言うのは?」
「ツタを使う殺人者見た事…… 遭遇した事ありますか?」