【とある教師の夜道】
遅れてしまってすみません
今回は照依視点から書いています
消灯した職員室の中、私は1人、暗闇の部屋でずっとパソコンのキーを打ち続け、残りの仕事を片付けしていた。
「もう19時か 丁度」
それにしてもキーを打てば打ち続けるほど、肩コリが起こるのだが非常にキツく感じる。
まあこの道、2年の学校に入っている教職員だが未だに慣れた傾向をも感じない。
むしろ仕事の山に体が押しつぶされそうな感じが続いていた。
「さて帰るか」
そうこう考えているうちにようやく仕事を終わらせ、私は白衣を着てそのまま家へと帰った。
学校はいつもオートロックである。仕組み的には教員が学校からいなくなるとすぐさまドアが閉まる。
逆に出社時にはAI搭載カメラのセンサーで確認をとってから入っている。
「うむ 急がないとな」
妹が家で腹を空かせて待っているので、なるべく早足で歩く。
といっても私の家は学校すぐ近くに建っている20F建てのマンションだ。
バスとか電車は使わなくても大丈夫だ。徒歩だけで行き帰りできる短距離だ。近くにコンビニもあるからいざと言う時に買いに行ける。
私の部屋9Fの905号室、部屋の外のドアノブを捻り中へと入る、個室が2つ広い居間には小さい四角いテーブルとその向かいにテレビがあるくらいだ。
個室は私と妹の部屋で使っている、だが妹は訳あって一向に外に出向かず……いわば引きこもりのようなもの。
そしてまだ私は宿題があるので自室に入り、パソコンを開くと、この間やった生徒の化学テストの丸つけをする。
丸つけをしながら1人1人のテスト用紙を確実に1枚ずつ、終わらせていく。
そうしているとあるヤツのテスト用紙が出てきた
「………………」
深いため息を吐き出し険しい顔で見つめる、1問1問と。
“天堂政希”
こいつはいつも間違えてばかりなのだが、それどころか毎回毎回こっちが丁寧に教えてやって言っいるのに中々覚えてくれないんだよな、こいつは……。そして今日もまたこいつの地獄の丸つけが始まるのだが。
「また間違えてやがるこいつ こうじゃねえっつーの」
不正解の回答に対して文句を言う。
「また補習だな天堂 今度はもうちょっと厳しく指導する必要があるな」
それからなんとか時間はかかったが今夜中に仕上がりやっと自由な時間がやってきた。
その前に妹の…………。
妹の部屋の前に立つ。
「おいここに今晩の飯おいとくからな ちゃんと食えよ」
料理が盛り付けられた皿をドアの前に置く。
「…………………」
反応無し。 だが恐らく聞いてはいるのだろう。ただ喋らないだけでちゃんと聞いてはいるのだから。
「それでさ 私ちょっと屋上で飲んでくるからさ」
「……………………」
因みに私は酒を一切飲まない。いや昔からずっとコーヒー一筋だ。
「なーにすぐ戻るさ 長居するつもりは一切ないし………… それじゃ夜風に当たってくる」
私はマンションの屋上に足を運び一息コーヒーを飲みながら入れることにした。
満開の夜空に、上空に佇む満月。
「そういえば今日は満月だったな」
鉄格子の下を見ると建物の街灯が散りばめた星のように蠢く。
光同士が、交差してはまた別の光に交差をし続ける、その繰り返しだ。
「夜中だって言うのにうるせーな 街の喧騒はよ」
呆れたせいか私は夜空に佇む月を見つめる。
夜空を照らす月光その輝きは人間の化学力では作り出せないような眩しい夜の光だった。
すると――――――。
地平線の向こうからこちらへと直進してくる物陰が見えた。
徐々に距離が縮まって行き、次第にその飛行する物体が人間だと認識できた。女だった、銀色長髪の少女。
真紅に輝く尖った鋭い瞳に、頭にバラのカチューシャをつけている。
「あれは…………」
そして地面に着陸するとバトル・フォームを解き、ゆっくりとこちらの方へと足音を立てながら近づく。
「お客か」
腕組をしながら近づいてくると、突然その口を開く。
「月神照依ちょっといいかしら?」
彼女は自信ありそうなその表情で私に問い尋ねてきた。
次回の章へと続く。 ……To be continued.