表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第0章【青い翼がはためく日】
5/139

~もう一つの序章~【あの日から】

 俺は夢を見ている。

 現実ではまずあり得ない光景を目の当たりにしながら凝視する。

 “夢”は“夢”なのだがこれは記憶に潜む、“久遠の記憶”と言った方が近いかもしれない。

 渺漫(びょうまん)とした平地には血みどろとした血流が絶え間なく続いている。1枚の絨毯ができるようなぐらいの夥しい量。

 一望すると横倒れする人々がおりその数は幾千人も及ぶ。


頭の片隅に潜む光景には顔見知りも中にいた。

俺の面前に立っているのは体中血みどろとなった征服姿の見覚えのある背部。力強く自身の武器である鈍重な手套(しゅとう)を握っている。

 地肌一帯に広がるのは蟻集さながら四散する死体が山ほどとあった。

 見るからに醜悪な景観である。


 切断された、頭部、腕、目など体の部位も見え、それは残虐映画を模様させる。

 手元が淋溧とする。()むべきものだと体が悲鳴を上げているのだ。恐怖とは人に精神的な苦痛を与える悪夢のようなものである。

“夢”と言えども夜更けにこんな夢を見るのは寝相が悪くなりそうだな。


 正直この“夢”から早く覚めたい。

 1秒でも早く、いや今すぐでもいいそれぐらい長居したくないもの。

 視界も充血したように真っ赤に染まっており、なおさら恐怖の塊でしかないのだ。

 

 遽然として背中を向けている1人の少女が俺の方を向く。

 悠々と物音立てず振り向かせて。


「き……き君は……」


 気がつくと無意識に体は動いていた。引き寄せられるように微笑を浮かべる少女の方へと。

 1歩……1歩と俺の方へと近づく……。

そして遂にその少女と目が合った。

 思わず声をかけようとすると、真っ先に少女の口が開口一番開く。


「……パイ」

「…………っ!」


 懐かしいその素顔の前に俺は無意識に沈黙する。

 忘れることのない、俺の最愛の後輩でありそして己の想い人。


「先…………輩」

「荒田か?」

「そうですよ? 先輩の可愛い可愛い後輩です」


 断髪とした髪型が特徴的な少女――荒田美奈子あらたみなこ、俺の後輩だ。

 普段俺を揶揄うばかりだったが、仲間思いの組織内では仲間をまとめてくれたいいやつ。

 とはいえ、彼女は2年前の戦いで命を落としている。

 そう今ではもうこの世にはいない存在。……今いる彼女は俺の虚像でしかない。


 お前のことは1日たりとも忘れたことはない。

 大事な大事な後輩なのだから。

 だが、よりにもよってなぜ今日の夢で荒田が。


「ど、どうしたんだ? 荒田? こんなところに来て…………」


  すると荒田は軽く息を吸った。

 呆れた様子で一瞬そっぽを向くと再度俺の方に向き直ると、息むと目ををしかめさせ険しい表情をさせた。


「先輩こそなんでこんなところ来ているんですか?」

「?」


『なぜここに来ている』と聞かれれば即答で答えられるような答えはすぐに思い浮かばない。なぜならこれは“夢”だからだ。ありもしないこの夢の世界でそんな“答え”なんて思い浮かばないだろう。

ただ一つだけ言えることがある。


「君に謝りに来た」

「先輩…………」


“謝る”それだけが俺の頭に浮かんだ。


「先輩それだけのことを私に言いにきたんですか?」

「荒田…………俺はただ…………」


「先輩の言いたいことは分かります。けれども」


 俺は息を呑み荒田を見つめてると確言してくる。


「私は、先輩に前へ進んでほしい、それでやるべきことを全てやってから、謝ってください」

「荒田…………」


 背中を押すような一言。それは俺に前を向けとの確かなものであった。

 それは暗に俺を応援するような口ぶりで。


「だからこんな嫌な夢見るのやめましょう? そして先輩、あまり自分を責め立てないで…………」


 荒田は心配そうな顔をする。俺を悲しませないように仰視し気を遣わせる。

 これがどういった夢なのかは分からない。荒田の本居なのかそうではないのか検討は1つもつかないのだが悪い気はしなかった。


「ここには何もないおわらない悪夢の牢獄。けれどもこれは全て幻覚なんです。……あなたが妄想している恐怖という幻影」


 立ち止まっていたら何も克服できない。今日の夢はそれを俺に教えてくれているのだろう。

 この荒田が詭詐(きさ)だとしてもこれを彼女の本意だと受け止めた俺は。

 再び俺に前を進ませる勇気をくれた、振り切るように彼女に感謝の言葉を述べ。


「ありがとう荒田。俺頑張ってみるよ。お前とそれとみんなの分も」


 満足そうに笑うと一滴の涙を零し。


「よかったありがとう、私の先輩。頑張ってくださいね応援してますよ」


 満足したような笑顔したとその時だった。


「荒…………田」


 荒田の背後から黒い悍ましい牙を尖らせた怪物が荒田に近づく。


 そして。


「荒田!」

「時間切れのようですね。はぁもっと先輩と話したかったな」


 グチャ、グチャグチャグチャ…………グチャ…………。


 聞きたくない生々しい音が聞こえてくる。明らかに咀嚼。

 ただその中で何をしているのか俺は知らない。いや分かっていても理解したくない。それぐらいにこれは恐怖だということ。

 彼女の腹部を刳ると、彼女の体からは嘔吐くように流血ともども様々な臓器が出てくる。

 

「やめろ………… やめてくれ…………!」


 荒田は黒い悍ましい怪物飲まれると怪物は荒田から離れる。

 怪物が彼女から離れた頃には上半身がなくなっていた。食いちぎった後の死体だけが俺の傍に。血痕が噴射し一面に真っ赤な水溜まりができあがる。


「あぁ……あぁ」


 薄れ行く意識の中霞むような声が聞こえ。


「先輩、恐怖は自分で乗り越えないといけないんです。そして打ち勝つんです自分の恐怖そのものと一緒に戦ってくれる仲間を探して」


 その日見た夢――それはいつまでも俺を応援してくれる頼りがいのある後輩の一声だった。


「あぁ…………あぁ…………」



⧖ ⧖ ⧗


 驚起すると次第に意識がはっきりしていく。


「はっ! ハァ……ハァ……ハァ」


 大きく深呼吸してリラックスをし。

 ベッドから上半身を起こす。多少息切れを感じるだが問題はなさそうだ。

 今日に限ってではない常住こうして魘されては起臥(きが)する。

 はっきりと中身までは覚えていないが、悍ましきながらも心の支えになる夢だったと思う。

 記憶が曖昧でくどい言い方だがそれはさておき。

きっと悪い夢でもみたのだろう。そうでもなければこんな状態にはならないしな…………。


「げっ。まだ朝の4時かよ。早起きなんて気が進まないぜ」


 部屋にかけられているデジタル時計に目がいく。秒数はゆっくりと時間を算している。

 4時。未だに日が昇らぬ1日の始まりだが、再度寝るのもどうかと思うので俺は起き上がり。

 背筋を伸ばしながら欠伸(あくび)をし、軽くストレッチを行う。


「あぁだりぃ。でも起きたからには二度寝はよくないよな。うんしょ……おし朝の運動おわり支度するか」


 数分の軽いストレッチをおえ、少し早いが袖を通し制服へと着替える。 

 寝ぼけているせいか、頭がうつらうつら状態だから正直なことを言うと動きたくない。

 最近山積みの仕事が重なり重なり合って、忙しい毎日が続いているそのせいもあり疲労がぬけないのか?

 同居している家族は1人もいない。古い家の2階立ての佇まいだが一人暮らしには惜しいくらいの面積。少し改造が施され地下1階~2階まであるがほぼ未使用の部屋なので普段使う機会は一切ない。


「さて、依頼一覧でもみるか」


 朝食を済ませ学校まで時間があったので少し時間潰し。

 特殊な機器、マダラースコープを手に取る。

 見た目はゴーグル状の形をしており、端から見れば派手なサングラスや玩具かなにかと勘違いされるかもしれない。

 でもちゃんとこいつ、最先端の技術を備えており、障害物を貫通し生体の位置を正確に特定できるサーモグラフィーや敵の能力値をある程度測定できる機能などが予め搭載されている。

 この世界では俺達ぐらいの年齢層になると誰にでも支給される必需品でもある。


 スコープをかけ、電源を入れ起動。

 項目がいくつかある一覧へと飛びその中にある『依頼一覧』を選ぶ。

 俺達にはある理由で依頼――任務を日頃から行っているのだが、依頼を待つ人々は後を絶たない。

 依頼を達成すれば、その依頼の報酬に応じた報酬が支払われる制度がある。

 金欠になることはまずないし、困窮することすらあり得ない話。

 この任務は10歳からなら誰でも引き受けることができるので、簡単な金稼ぎができる。


 報酬金の支払いをするのは基本的に、マダラーの総司令部の管理者が行っている。

 俺達を管理している管理する大元となる組織があるのだが、その人達が情報管理、報酬の支払い、連絡等を数人で分配しながら互いに役割を担っている。

 このお陰で俺の元には報酬が支払われるわけだが。


「はあ、もうこれっぽっちか。……最近買い物で使い過ぎた気が」


 気の毒なことに今あまり金がない。……電子式の通貨を利用しているのだが、所持金はたった3桁ほど。

 非常に金銭的にピンチなので今日は動くと昨日決めていた。


「なんか稼ぎ安い任務は……任務はっと」


 電子画面から映し出される一覧から依頼一覧をスクロールさせながら確認。

 簡単な任務が多いが、どれも少量の報酬しかない。もっと危険なものにしてほしいぐらいな内容が殆どで正直見ていく度に滅入るのは気のせいか?


……だがこの任務を引き受けることができるのは俺達殺人者(マダラー)だけだ。

 当て字で殺人者と表記するが、単なる人殺しをする集まりではない。……単なる人々の平和を……戦う戦士における俗称であり、各々責任を負いながら日々任務に取り組んでいる。


「…………」


「…………」


「俺にあった依頼ないじゃねえか」


 軽く息をつき、頬杖をつく。

 数十分(じゅっぷん)チカチカする画面と奮闘していたが、もう限界今すぐにでもくたびれそうだ。

 仮病でも使って休みたいものだが……俺の副担任めっちゃ怖いんだよな。なのでこれは不可抗力倒れない程度に登校しなくては。


「できるような依頼ろくにありもしないぞなんだよ、『最低二人以上で任務を引き受けてください』とか『単独チーム却下』って絶望すぎだろ」


「よし、これは後回しだひとまず。時間も時間だし。今日の課題……おっけーおっけー忘れ物なし……うんじゃ行ってきます」


 学校に行く準備を済ませる。忘れ物がないか細かくチェックして漏らしがないことを確認する。

 お気に入りの漆黒の色をしたジャンパーを袖に通し、開閉のボタンを押し外に出るのだった。


⧖ ⧖ ⧗


 俺の名前は天堂政希(てんどうまさき)。近くの学校で通いながらのうのうと生きている高校3年生だ。友達もいなければ、話できる相手(同級生)の1人もいない。

 家族はこの1~2年の間に生憎失っている。そのため基本1人だ。

 普段通り登校をしていると突如としてメールの通知音が鳴る。

そして異常な振動をするスコープを手に取り、メールを確認する。


内容は。


「勘弁してくれよ、こっちはクタクタだって言うのに」


 宛はロシアの現頭首、ヴェナルド・スヴェートという女性からだった。……とはいえ、彼女は総理と言えども、まだ彼女は13歳の幼女なのだが。

 俺がなぜ彼女を恐れるのかというと、それは口がガミガミとうるさいからだ。

 その内容は『組織のメンバー1人加入できましたか? それとまた近い内にお電話させて頂きます。即答で答えられない場合、政希さん……(怒)覚悟しておいて下さいね☆ byヴェナルド』と書いてあった。


「く、くっそぉ。過保護過ぎだってあの人はぁ」


多少、嫌な気持ちが膨れあがったが、素直に受け止める俺であった。

“組織”というのはその名の通り、1つの団体を指す。と言っても、殺人者(マダラー)専用の団体だ。

 勝手に1人で組織作るのもよし、資格などは不問。正式な組織を作るという出願書類を送ればその時点で結成完了だ。まあ最低限2人以上ある期間中作らないと解散され、再度申請するのに半年はかかるので色々と億劫。

 俺は1年前、組織を1つ作った。とはいえ昔属していた組織の跡を継いだ組織なため1から作ったわけではない。


 現状加入人数は0。ヴェナルドさんの擁護もあって1年半年の期間をつけてくれたので今日まで生き長らえることができた。

1人も加入できていない組織は基本的には3日で処分扱いとなりそのまま解散となるのだが、このヴェナルドさんが多少力を貸してくれたお陰で、なんとか持ちこたえることができた。

 がしかし、そろそろ我慢の限界になってきたためか、最近ヴェナルドさんが『早く加入させろ』とうるさい。


 ということがあったためか、俺には今、重大な使命を背負っているのだ。

 そんな危機的な状況に俺は置かれているわけだが後がないぞ。

 全うに授業をおえ帰宅時間となる。

 クラス全員散けるように教室から出て行き、一瞬にして静寂で虚無な空間へと成り果てる。

 

 学校を出て帰路を進む。

 寄り道もせず、交通機関を経由し順当な道でいつも通りその道を歩く。

――――――と、長々と歩話しながら歩いていると。

 霧中から、もの凄いで“蒼い光”が早朝の霧の中勢い良く駆けていくのを目撃した。

 俺の髪を異常なまでに掠めた。


「っ!? なんだ……今の風は?」


一刻。僅かに発生した勁風(けいふう)は激しい音を立て。かまいたちの如く過ぎ去っていく。

 それがなんだったのか気にしつつも俺は家の中に入り。家のドア前ですがり漠然としながら呟いた。


「なんだったんだあの風。まるで目では追いつけないような速さだったぞ?」


 そう今思い返せば、その時の俺は全く気づかなかったのだ。蒼い少女(あのこ)と出くわしたということに。

 俺はこの後1人の少女と出会うことになる。それが偶然なのかはた運命の導きなのかと。

 このときの俺には知る由もなかった。

 そう"あの日"が来るまでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ