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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第2章【巡り会いしこの地で】
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【番外編 交わる意思その4】

恵美と礼名が学校に来てから数日過ぎた日の昼休み。


天気は都合よく快晴で上空には都市を囲むような雲の姿があった。


呑気に木陰で居眠りしている私にとってはいい話のような悪い話なのかどうか、怪しいところではある。


いっそ鳥みたいになりたいと思った時期が私にもあったがそれはもうとうの昔、小学生くらいの時の話だ。


でも思い出に浸っていると余計疲れが出て頭を悩まされるばかりだから私は深く過去を思い出すのを取りやめた。


暫くしているとこちらに近づいてくる足音がしてきた。


ゆっくり草むらを踏みしめる音をたてながらゆっくりと近づいてくる。


「寝ているところすまないな東城蒼衣」


「うん……?」


私は片目を開ける。


するとこちら見下ろすかのような姿勢をとる白衣を着た女性が眼前にいた。


この服、この喋り方。 見覚えある声。何よりも片目を紫髪で隠したところがチャームポイント。 顔が近い。いや近すぎる。


「月神先生? どうしたんですか…… っていうか顔近すぎます」


そう政希さんがよく恐れている月神先生だった。


「おっと失敬 少し話がしたくてつい…………な」


「それで話とは?」


「とりあえず場所を移そうか」


私は月神先生に連れられ自販機の置いてある廊下へ場所を移した。


誰もいない一方通行の廊下。近くには1台のみ自販機が立っている。


人の気配すら感じ取れないほど物静かで大人しい感じだ。


「すまんなこんな場所で だが別に変なことはしないから安心してくれ」


と言いながら先生は自販機に小銭を投入し、缶コーヒーを1本買う。


そういえば聞いたことある。月神先生ってコーヒー飲まないと落ち着かないとか。


「やはりこのコーヒーは格別だ」


「…………」


因みに私は苦いものは苦手。当然私にとってコーヒーは縁もゆかりもない存在。飲むだけであの全体にしみこみだすあの苦みはもはや地獄のようなものだ。


「取り乱したな では本題に移ろうか…… まあ大した話ではないが」


先生はこちらをしかめると話し始めた。


「組織に入って何か月だ もうすぐ7月だが」


「軽くもう3か月ですかね ですがなんだかんだでここまでの期間がとても長く感じています」


「そうか…… まあ色々とあったよな 私も君達の活躍は陰ながら見ていたつもりだが」


「見ていたんですか?」


「多少はな 天堂だって私の大切な生徒だ 1人1人真面目に見てはいるのさ」


本当は月神先生は政希を面倒をよく見ているってことか。よくしかりはするけどそれは政希さんのこと思ってのこと。決して怒りたくて怒っているんじゃない…………なるほど。


「私には妹がいてな そいつ訳あって引きこもりで完全にインドア人間なんだが 君はうちの妹と比べればまだマシだ」


「人を助けたりするその行動力は 私の妹にはない」


意外にも先生に妹がいたなんて驚きだ。てっきり1人娘だと思っていたけど。


“行動力がある”か――――。 外野側からみればそんな視線を感じるのかもしれない。


でも実際はそんな大したことは無い。2度も現実から逃げた私にそんな善人面(ぜんにんづら)を語っていいはずがない。


そう相応しくないし似合わない。そんな私にその姿は。


飽くまでも偽善者気取り“偽り”に過ぎないのだ。


「東城蒼衣」


「はい?」


ふと先生の呼び掛けで反応する。


「君のことは知っている 2回組織を離れたって話はな」


「………………」


「まあ気に病むな 誰も悪くない」


「でも……」


「そんなこといつまでも引きずっていたら身が持たないぞ 天堂にも心配かけてしまうし 周りのメンバーに迷惑がかかってしまう」


「先生……」


すると先生はにっこりと笑いながら涙を流す。


「……先………………生?」


そして先生は小さな声で言った。











私は―――――― 何も救えなかった。 救うどころか見殺しにしてしまってな。 先生はなみんなに自分と同じ人生を歩んで欲しくないんだよ。


「先生……」


何があったのかは知らないが、私は先生の背中を優しく揺すった。


「ありがとう東城蒼衣 ははこんな大人 情けないよな」


「そんなことないですよ あなたは私の思っていた以上の強い人ですよ」


この人は“何か”を救おうとした。けどそれが救えなかった。 でも今度は別の何かをこの人は救おうとしてる。


立派なものだ。


「なあ東城蒼衣 1つ頼みがある」


「なんですか なんでも言ってください」


「天堂を天堂政希を頼む」


「政希さんを?」


「あいつはいつも無茶をして自分の身を投げようとする……馬鹿なやつさ だからこそ君にこうして頼むんだわかるか?」


「ええ 当然ですよ先生」


私の答えは1つだった。たったひとつの“答え”ただそれだけ。


そう彼は私がついていないといけないのだから……………………。











私の大切な人だから。








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