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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第2章【巡り会いしこの地で】
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何もかも消えた虚空の心

俺は気がつくと薄暗い牢屋に入れられていた。


隣には息を吸いながら横たわる蒼衣の姿があった。


「蒼衣?」


うる覚えだが確かあの2人組と戦って…………。


だが牢屋に入れられているということは俺達は敵に負けて捕まったということになるが。


「…………気がついたようですね」


鉄格子から1人の少女が顔を出す、その子はさっき俺達が戦ったあの紺色髪をしたサイドテールのおかっぱ少女だった。


その隣に紫髪の連れとみられる少女がいた。


あれからどれぐらいの時間がたったか知らないが、軽く1日は経っていると思う。


彼女2人は俺達が脱走しないようにするための見張り番か何かだろうか。


「おはようっていう気分にはならないが……俺達はあれから何時間寝込んだんだ?」


「ざっと3日ですよ」


当てが外れただと。3日だと? 1日どころかプラス2日も飛んでもうそんなに飛んでいるのか、信じられないな。


だが3日経ったのにも関わらず目覚めた俺は超人的に感じてしまう。自分が怖いなこれは。


学校で習ったことがある、人間は何も食わず3日〜1週間経過すると……死すなわち餓死に至るらしい。


なのになぜ俺はこうして意識を保ててるんだ、ひょっとすると俺は人間を超えてしまっているかもしれない。


自画自賛するわけで情けない話ではあるが。


「あ、因みに言っておきますけど貴方達が意識を失っている間食べ物を食べさせてあげました」


「ほう気が利くな……ならこれで……!?」


俺がXウェポンを出そうとした時衝撃の頭痛が静電気のように走る。


「いてッ!」


「悪いですけどただの食べ物じゃないんですよ……その食べさせたデスゼリーは腹持ちを極限まで一杯にさせます、ですがその反面Xエナジーの操作・コントロールを暫く間使えなくする食べ物です」


「なんだと? ということは今は能力も武器も使えないってことかよ……どうしてくれるんだよ」


「切れるのは30分後、ですがその鉄格子どんなXウェポンでも破壊できないくらいの強固の壁です、無駄な抵抗は避けておいた方が身のためですよ」


破壊不可能ってことか……。何か手があるといいのだが。


こんなのもう無防備なヤツみたいな感じじゃないか。


「それよりお前ら俺達をどうする気だよ」


「上の者から命令を受けていましてね……3日後に貴方達を処刑するらしいですよ」


「なんだよっ!?それ……身勝手すぎるだろ」


「これは上の者の命令であって私はそれに従っているだけ……まあ幸い荷物ぐらいは一緒に牢屋中に入れておきましたけど」


上の者? 軍の隊長かその司令官かなにかか。いずれにせよこの2人にそいつが指示を出したのは間違いない話だ。


「…………」


後ろを見ると俺達の荷物が釘止めにぶら下げてあった。中身もちゃんとある。 なんか無性に舐められた気分が多少あるが。


にしても親切で親切ないのかよくわからないやつだな。


「それでは失礼します……上の者に呼ばれているので。残りわずかな人生の一時(ひととき)を精々限られた時間の中で過ごすといいです」


その子が一礼すると早々と背中をみせその場を立ち去ろうとする。


「おい、待てよせめて名前ぐらい名乗れよ」


彼女は足を止めてジト目とした無表情な顔をこちらに向けた。


赤い愛らしいその瞳、でも俺にはその顔が自分に嘘をついているような顔にみえた。何か心に靄がかかっている……そんな感じがして。


「…………おや言っていませんでしたっけ? あぁ……貴方はその時もう既に気を失っていましたね……そういえば」


その時の俺の状況を思い出したその子は丁寧に自己紹介をしてきた。


……どうやら俺はその時気を失っていたようだ。


「礼名……柚木礼名(ゆずきれいな)です」


そういうと再び背中を向けて彼女柚木礼名はその場から離れる。立ち去る彼女に一言俺は言った。


「なあ、自分に嘘つくなよ?」


すると彼女は顔を下に向けながら去っていった。


どうもあの柚木礼名には抱えている私情のことがあるらしいな。


あまり人の過去に触れないのが人のためでもあり自分のためでもあるが……ここは男として人肌脱ぎたいところだ。


「…………それでもう1人のそこの君、なんでそこにいるんだよ……一緒についていかないのか?」


「いえ……だってそうすると見張り番いなくなりますよね?」


「あぁ……そうだったな」


忘れていた、セキュリティが厳重と言えども見張り番は怠る訳には流石にいかないか、甘えはきかない…………なるほどな。


「その……よかったらこれどうぞ」


その子は鉄格子でパンを俺に手渡してきた、2等分に分けられるぐらいのサイズをした中くらいのパンだ。


「いいのかよ、俺はお前らの敵なんだぜ? どうなっても俺は知らんぞ」


「お腹空いてますよね……?」


「言われてみれば」


「そのさっき食べさせたデスゼリーは数十分もすれば徐々にお腹が空いてきます……だから」


「優しいな君は」


そうかあの満腹感は一時的なものなのか、長くはそんなに続かずすぐ効力は切れる……まるで食べ物というより薬だな。


でも不思議なものだ、パン1枚くれるこの心優しい少女は一体。 それに今日で初めてだ、パンがこんなにも大切だと思ったことは。まあその話は置いといて。


「あげる代わりにお話でもしません?」


「話? あぁ話ならいくらでも付き合ってやるよ」


「それでは……とご挨拶がまだでしたね……私は恵美、橋本恵美(はしもとえみ)です」


「よろしくな、恵美こんな変な形だけど」


「いえいえ」










そんな恵美を見ていたらどこか死んだ新田美奈子のことを思い出した。


性格は全く違うがその面影が確かにあったのだ、出会った当初の新田にそっくりで。

































「……………………ッ!」


「蒼衣起きたか」


「政希さん、その子は?」


「恵美……橋本恵美だ……今丁度話してたんだ」


恵美って名前なのか。覚えやすくていい名前だけど。


ふと起き上がった、気がつくと意識が戻っていたので私はすぐさまに目を開ける。


それにしてもなんだろうか、この薄暗い空間は。


周りには頑丈な鉄格子が、全くまた困った目に遭ったものだ。


せめてもうちょっとマシな場所にして欲しかったものだが。


私達2人はこの牢屋に身動き取れない状態とでも言うべきか。


周りからは空洞の反響とみられる低音が聞こえてくる。ボーッ……そんな音だそんな音が目覚めた時にいやいやと耳に響いていたのだ。


それは豪雨の音よりも安堵感の得られない不響和音のように聞こえてしまう。


まだしも都内の電車の来る音がまだ可愛く感じられる。


目の前、政希さんと話しているのは――――――。


「あなたは…………」


かすかに覚えている、私の背中を連射撃ちしたあの子だ。


紺色の子とは別のもう1人の子、少し長めの紫髪をしたサイドテールの少女、尊敬な眼差しで目をしかめながら政希さんを見ていた。


「さっきはよくもやってくれたわね」


とりあえず敵とは言え年下だ。あんな行動をとる年下みると中々感情が抑えにくくなるのが私の悪い癖だが。


「まあ蒼衣、許してやれって……上の者の命令だから仕方なかったんだよ」


「すみません東城さん、でも傷は治しておきましたから」


「え?」


そう言われ背中を触ってみる揺すりながら…………凸凹した感覚もない、痛みもだ……何事もなかったように治っていたのだ。


「少しは許してあげる……」


多少許せない気持ちもあるがいつまでも引きずるのはよくないこと。このことはすっかり忘れてあげよう。それに背中も丁寧に治してくれたことだし。


「ありがとうございます東城さん」


「それでこの状況は今正に貴方が政希さんと話していたって状況?」


「そうです、と言っても話し始めたばかりですよ」


「なら私も混ぜてその話に」


ここまで来て引き下がる訳にはいかない。何にせよ意識を失う前あんな話を聞いてしまったのだから。


「勿論ですよ、寧ろ聞いて貰いたかったのです……あの子柚木礼名の話を」

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