~1章~EX 【理奈の想いその2】
あれは今思い出すだけでも頭が痛くなる話。
日に日に私はいつも『あんなことがなかったら家族仲良く幸せでいられたのに』と思ってしまう。
まあ過ぎ去ってしまった時間は取り戻すことはできはしない。
けれども失った引き替えに私には得たものがある。
それは“友達”だ。
あの日の事件がなかったら、きっと蒼衣ちゃんと出会えなかったと思う。
だからと言って、あの事件に感謝など1度もした覚えは1度もない。
ただ、この意見は2つに分かれ、私の脳裏には浮かぶのだ。
それはあの事件を“恨む”べきか…………それとも“水に流すべきか”を。
いずれにせよ、その事件のことは話さなければならない。
私の追憶を――――――。
あれは、私が小学生を卒業してまもない頃の話だ。
私の卒業記念にと両親が家族旅行を提案してきた。
それを持ちかけてきたのは父だった。
私の為にわざわざ1週間の休みをもらってきたらしい。
「それでお父さん話しって?」
「理奈……卒業記念にどこか家族で旅行しに行かないか」
「旅行って私は大丈夫だけど他の皆はどうなの? 璃沙はともかくお父さん達の仕事に訴訟でないの」
心配になったので聞いてみる。
「大丈夫だよ理奈、何も問題ないよ」
私の父と母は忙しい職場には務めていなかった為、普通に休みを取っても問題のない仕事をしていた。
そしてその旅行先というのが、『諏訪湖』だった。
諏訪湖は23世紀以降、殺人者専用の水上訓練場が建てられた。
そのせいで20世紀以前までは見られた景色は見られなくなったという。
しかしこの諏訪湖の訓練場は26世紀に取り壊された。
同時に水は何者かが行ったかは知らないが、吸い取られ大きな穴の空いたエリアとなった。
後に新東京都の支援により諏訪湖町という大規模で大きな町ができた。
だけど世間では通称ここでは諏訪湖と呼んでいる人が多い。
私の地元でも諏訪湖と言うのが普通だった。
ここに1週間家族旅行に行き、楽しもうという父の意味深なプランではあったものの、決してつまらなかったわけではない。
泊まりのホテルは高級なホテルを予約し、食事も家では滅多に出なさそうな食事を出す高級レストランに行った。
よくそこで食べた味はよく覚えてはいなかったのだが、独特な味だった気がする。
そしてその諏訪湖町で過ごした1週間は私にとって、とても思い出深い旅行となった。
しかし、その帰りにまるで神様がイタズラでもしたかのように悲劇が私を襲った。
それが後の私の傷跡になるということは当時の私は全く想像していなかった。