~1章~EX 【行き別れた双子】
EXは黄美江理奈の過去編のお話になります。
全4部を予定しています
よろしければ見てくれたら嬉しいです。(荒い部分もありますが臨時で推敲していきたいと思いますのでよろしくお願いします)
――――――――――私がノヴァに入ってから間もない頃。
「うーん」
目が覚める。閉じた片目の睫毛をこすりながら片目を開ける。
「もう朝か」
昨日は宿題が多かったせいでなかなか寝付けなかった。
いや、これは寝不足と言った方がいいだろう。
今日は平日の金曜日、今日頑張れば、土日は休みだ。と言っても殺人者の任務があれば、すぐに任務に取り掛からなければならない。
けど入ってから大きな任務は未だに来ておらず、殺人者と戦ってもいない。
一昨日くらい前に政希さんに殺人者を討伐する任務はないかと尋ねてはみたものの、不審な殺人者は現在確認されていない。
なので殺人者を討伐する任務の依頼リストを見ても未だに0、つまり討伐任務は一切ないのだ。
おかげで帰宅後、私には暇な時間がほとんどでずっと基地にある自分の部屋に入り、基本政希さんの夕ご飯ができるまでは、部屋から出ず私はずっと閉じこもっている。
欲を言えば殺人者を討伐する任務を早くやりたいものだ。
「さて、学校行く準備でもしようっと」
【6:30】マダラースコープをつけるとその時間になっていた。
私は部屋の壁際に掛けてあるブレザーとスカートを着て、政希さんのいる1階へと向かった。
〜天堂家〜1階 台所
挨拶を済ませ、台所へ向かうと朝食がテーブルの上に並んでいた。
今日は和食スタイルのメニューだった。
「どうだ 美味いか?」
「ぐっど」
「なら、よかった 口に合わなかったらどうしようかと思っていたよ」
「政希さん、和食は平気ですから問題ないですよ」
「まあ、俺の天下一品の料理だからな」
「そこまで褒めてませんよ、もう」
くだらない政希さんの話しを聞きながら、私達は朝食を済ませ学校へと登校した。
朝食のできは……うん普通に美味しかった。格別な味、ダシのきいたいい味だった。
〜学校〜2-A
学校へ着き、それぞれの教室へと向かう。
廊下の電灯がとても明るい、日光と見間違えるような明るさだ。
これは私が耳にした情報なのだが、月々の電気代はこの学校、実は高くしているらしい。
そもそもこの都市での学校はほぼ機械建築でできた大型学校で、学校にある教材はほぼ電子系。
中でも電気代が1番高いのは電子ボードらしい。
私の席は後ろの窓側にある席だ。いつも教師の話しが長いので、飽きがきたら私はいつもこの窓の外を見ている。
時間は8:30ホームルームは9:00からなので、多少まだ時間がある。
教室には生徒達が着席し、隣の生徒と雑談をしている。
まあ何を話しているのか、私には検討もつかないが。
「あ、そういえば」
私の親友黄美江 理奈に組織に入ったこと言ってなかった。
本当は昨日電話かメールで伝えようとしたんだけれども、すっかり忘れていた。
疲労の強さに圧倒され、負けてしまった。
――――――疲労おそるべし。
プシュ――――。
教室の自動ドアが開き、誰かが1人、小刻みに私の方へと歩いてきた。
――――――――誰かと思えば、あの娘は。
その子は私の方へと向かってくる。というか、この子の席は私のすぐ隣なんだけれど。
「蒼衣ちゃん」
その子は私の名前を呼んできた。私の席の隣に立って。
「おはよう理奈」
そうこの子が私の親友黄美江 理奈だ。
同年代でたった1人の唯一のかけがえのない親友なのだ。
すると理奈は眉をひそめ、少し不安そうな顔であることを切り出した。
「蒼衣ちゃん、昼休みちょっと屋上に来てくれないかな?」
「いいけど、急にどうしたの、何か悩み事?」
理奈は大きく首を振った。
「ここではちょっと話しづらいこと?」
「違う違う、そういう訳じゃないんだけど」
一体どんなことだろうか。相談じゃないのなら何を話したいのだろうか。
「まあまあ蒼衣ちゃん続きは昼休みになってからのお楽しみだよ…………あ、ほら先生もう来たよ」
再び自動ドアが開き、今度は先生が入ってきた。
学校に掛けられている電子時計をみると9:00になっていた。
理奈の話したいことが少し気になることではあるが、とりあえず今は午前中の授業に集中することにし、目を先生のいる教卓の方へと目を移した。
そして昼休み――――――。
屋上へと続く階段を上る。この階段はそんなに長くないので、上り下りに苦労することはまずない。
ちなみに他の教室へと続く階段はというと、こちらもそんなに長くない階段である。
だが、どちらが長いかと言われると、正確には屋上への階段の方明らかに長い。
そして私は、屋上へと出る自動ドアの前に立った。
すると自動ドアが開いた。私はそのまま理奈が待っている屋上へと出た。
屋上に着いた。
上を見上げると青空が広がっており、周りからは涼しい風の音が聞こえてくる。
そして屋上のすぐそこの低いフェンス越しに、理奈がいた。
私は迷わず、理奈に声をかけた。
「理奈おーい」
声をかけながら、私は手を振り理奈に近づく。
すると理奈はこちらに気付いて、私の方へ顔を向けた。
「あ、蒼衣ちゃん来たね」
「うん」
「ごめんね、こんな中途半端な時間帯に呼び出して」
「いいよいいよ、私はいつだって構わないよ」
「ありがとう」
ほっと一安心して、理奈は安堵の息をつく。
「それでね、蒼衣ちゃん私が話したいことって言うのは……」
「『組織入隊おめでとう』って言いたくもあるけど、ただそれだけじゃないんだ」
「理奈、なんでそのことを」
理奈には、私が新しい組織に入ったということは一切まだ言っていないはず、なのになんでそのこと知っているの…………理奈?
「うん、ちょっと耳にしてね、蒼衣ちゃんが新しい組織に入ったこと」
「そうなんだ……」
誰かに聞いたのか、これも気になるところ。でも私はあえて聞かないことにした。
酷く聞くとなんか嫌がりそうだし。
「でも本題はそこじゃないんだ」
「ひょっとして、勝手に組織に入ったこと、怒ってる?」
「ううん、それに関しては全然怒っていないよ、むしろ喜ばしい限りだよ」
「でも、最初にそれに関して3つのこと質問していい?」
「いいけど、えらい唐突だね」
すると理奈は右手の人差指を上げた。
「じゃあ1つ目ね、そこの組織に入ってから長続きできそうって思った?」
「うん、実際そこのリーダーね口調は厳しいどころか、結構優しいところあるんだ、だからその組織に入って初めて長続きできそうだなって思ったんだ」
「そうか、いい場所見つけられたんだね」
「じゃあ2つ目」
右手の中指を上げ、指で2をつくる。
「辛いことない?」
理奈は多少頭を右の方へと傾げた。
「“辛いこと”……か 『ない』って言えば嘘になるかな、なぜなら私もそのリーダーも辛い思いしているから」
「じゃあ、なんでそんなに辛いのに活動できるの?」
「それはね、私とそのリーダーがお互いに助けあっているからだよ、だからねこれから先どんなことが待ち構えていたとしても、“私達ならきっとどんな困難も乗り越えられる”そう信じているからなんだ」
すると理奈は一瞬黙り込んだ。そして少ししてすぐに、最後の3つ目の指……薬指を上げ、私に3つ目の質問をしてきた。
その3つ目の質問とは――――――――。
「そこにいて、楽しい?」
「うん……とても、おかげで今までの嫌なことが全部嘘だったかのように気持ちが緩和されたよ」
そして理奈の3つ目の理奈の質問が終わった。
「ふう」
理奈は小さな息をついた。
「3つの質問終わったね」
「理奈、この質問がなんの意味が…………」
「蒼衣ちゃん……どうやら蒼衣ちゃんは居場所を見つけられたんだね……本当の居場所を」
「……………………理奈」
「スゥ――――――」
理奈は大きく空の空気を目一杯吸った。
「蒼衣ちゃんなら、話そうかなあの日のことを」
「あの日のこと…………?」
あの日のこととは、一体。 私は理奈の親友ではあるものの、理奈の全てを知っている訳ではないのだ。
人は誰しも言いたくないことの1つぐらい、必ずあるはずだ。
それを私に打ち明けようとしているの。 理奈は…………。
すると理奈は目を半開きにした。けど私が気にしたのは理奈の表情ではなかった。
まるで悲しみを何度も経験し、心が折れてしまった人のように理奈の表情はとても暗かった。
……………………。
……………………。
理奈の左腕の袖口から、なにやら光る物が見えた。
それはライトなどの発光する物の光ではない。
金属が反射している光だ。暗くてよく見えないが、一瞬…………尖った何かが見えた…………。
そう、尖った何かが――――――。
「理奈、それ……左手に持っているのは何?」
「あの日のことを話す前に言わないといけないんだ」
「何を?」
「私…………前に蒼衣ちゃんに、『私、殺人者なのに能力1つも持っていないんだ』って言ったよね?」
確かに言っていた。それは去年のこと、理奈は私に殺人者なのに、能力は持っていないと、私に言ってきたのだ。
以来、私は理奈は能力を持たない殺人者と思ってきたが。
基本能力を持たない、殺人者は能力はおろかXウェポン及びXエナジーも扱えないのだが。
「アレ嘘なんだ、ごめん」
「なんだ、そんなことじゃあそれ素直に早く言えばよかったのに」
次第に理奈の表情が曇ってきた。
その表情は私が今まで見たことの無い、理奈の顔だった。
まるで何かに苦しめられているような顔だった。
「言えなかったんだよ、怖くて……」
「どういうこと?」
するとさっき左手の袖口に隠していた物を出してきた――――――。
その物はとは――――――――。
シャキ。シャキシャキ。
「それって………………」
「……………………」
それは、腕が1本切断できそうな、尖った包丁だった。
「理奈なんのつもり、まさか…………」
「大丈夫だよ、蒼衣ちゃんを殺しはしないよ…………ただ見てもらいたいんだ」
「え…………」
次の瞬間、理奈は左手に持った包丁を振り上げ、その振り上げた手を右手の前腕目掛けて勢いよく、振り下ろした。
「やめてっ!!」
無意識に大きな声を出してしまった。同時に身体中から鳥肌が立つ。
理奈の前腕が切断されたのだ。……切ったのは他の誰でもない、理奈自信なのだ。
「そんな……なんで……」
「大丈夫、慣れているから」
「慣れているってどういうこと?」
理奈の切断された右腕の部分から大量の赤黒い血がポタポタと滴っていた。
足元は血の水溜まりが数か所、壁のいたる所に血が飛び散っていた。
「病院行かないと……」
「蒼衣ちゃん、だから心配いらないよ、慣れているから、よく見てごらん私と周りを…………」
「…………」
「…………」
「嘘でしょ……? こんなことって…………」
正直目を疑った。目の前で信じられない現象が起きたのだから。
徐々に飛び散った血、そして切断した腕がなくなっていく。
しかし驚く所はそこじゃなかった。理奈の切断された前腕が――――――――。
「えい…………うッ」
トカゲの尻尾のように再生し始めていた。
だが、体の肉だけじゃない、同時に千切れたブレザーの右肩部分、血がついた部分、何事もなかったかのように再生していった。そして――――――――。
「驚かせてごめんね、蒼衣ちゃん……」
「理奈、今のって?」
「これが私の能力、自分の部位、着ているものならなんでも治せるんだ」
「…………理奈」
「蒼衣ちゃん……」
私は息を呑んだ。
「これから話すことは、この能力がした頃の話しだよ」
「蒼衣ちゃんにはこの私の話しを聞く権利がある、この先どんな恐怖も立ち向かって行ける……そんな蒼衣ちゃんだから………………ね話してあげられる」
「聞いてくれる?」
「わかったよ、理奈……理奈がそこまで言うなら聞かせて…………理奈の話を」
すると理奈は頷いた。
「これが発現したのは、丁度今から5年前……それは、私達姉妹の……ううん、正確には家族最後の思い出……かな、そうこの能力は、私が妹救うために発現した奇跡の力」
「でもその力の代償と引き換えに、私はその後恐ろしい虐待、差別を受けて来たの…………、色んな人達に……そう全てはあの日のこと…………」
黄美江理奈は東城蒼衣の中学時代からのかけがえのない親友です。なのでとても東城蒼衣のことを他の誰よりも大切に思っています。
そして彼女の過去は一体。 他の人に打ち明けられないこととは何か…………次回へ続きます。