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Murder World VI.Generation  作者: 萌えがみ☆
第1章【動き出す運命】
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【はためく青い翼 後編】

早朝の朝――――――。


廃墟の最深部へと来ていた私達の前に人がいた。


黒い軍服を着た男性。年齢は見た感じでは中年に見える。


怖い目つきでこちらを見つめている。私にはそれがとてつもない“殺気”のように感じ取れた。


「どうして……お前がここにいる?」


政希さんが彼に話しかける。


そして私は政希さんの言った“どうして……お前がここにいる?”という言葉が妙に引っかかったのだ。


ひょっとすると、政希さんは彼と面識があるかも知れない。


「政希さん……彼は?」


政希さんは息を呑み、私に耳打ちし、小さな声で話してくれた。


「あいつは…………」


「あいつは、アリスタルフ・モシリスト………… 前の戦いの、ロシア残党の主導者だ」


「そして、あいつは、俺の組織の仲間を殺した張本人だ」


「つまり、あの人は…………政希さんの“(あだ)”ですか?」


「そういうことだ」


政希さんによれば、彼……アリスタルフ・モシリストは、元ロシア残党軍の主導者らしい。


戦いの中、彼の圧倒的な力の前で政希さんを含む仲間達は、次々と倒され……殺されていったという。


アリスタルフは、ロシア残党の勝機が無くなったと同時に行方を晦ましたという。


以降、誰も彼の姿を見た者はおらず、消息を絶っていたと言われていたらしい。


「何をしているのかって? それはちょっとした野暮用さ」


「それにしても、本当に久しいな、元気にしていたか?」


「お前にそんなこと聞かれるとヘドが出てきそうだぜ」


「それは失礼した」


なら、今私達の前に現れているのは、“亡霊” だろうか? いや絶対違う、こんな年になって誰がかんがえる…………。そんなオカルトみたいなこと………………。いくらなんでも冗談が過ぎる。


「そこの青い娘よ、真剣な眼差しで何故私の方を見ているのだ? まるで一匹のオオカミが、獲物を睨み付けるような目つきだぞ?」


「…………」


「もしかして、今君の目の前にいるやつ……つまぁぁありィ! 私が亡霊か人間か……迷っているのではないのか? 私から君を見る限り、そのようにしか思えんな」


御託を次から次へとアリスタルフは私に向かって言った。


どう考えても、喧嘩を売ってるようにしか見えない。


「政希さん、さっさと倒しましょう こんなヤツ」


「“こんなヤツ”か…… 舐められたものだな どうも最近の殺人者(マダラー)はちゃんとした教育をまともに受けていないらしいな」


「アリスタルフ……」


政希さんは歯を食いしばりながら、彼の名前を呼ぶ。


だが、アリスタルフの表情はさっきからまったく変わらない。


“余裕で勝てる”そんな顔にみえた。


「蒼衣、注意しろよ、アイツの…… アイツの“狂気に満ちた恐ろしい力”に」


私は政希さんの言葉に対して頷いた。


「いいだろう あまり今は時間はないが、丁度いい……まとめて相手になってやろう」


アリスタルフはそういいながら、こちらに向かって、手でこいこいと合図をした。


――――――覚悟はできている。 そうだ、コイツの首さえ取ればそれでいい。


……………………よし。


政希さんは隠している手で3を指で作った。きっと攻撃を仕掛けるタイミングのカウントだろう。


私は、なんとなく政希さんが伝えたいことが分かった。


(3秒たったら突っ込むぞ)


きっとそう伝えている。





…………3







…………2






…………1










よし、今だ…………!




「でやァァーーーーッ!!」


「いけ蒼衣ッ!」


私は正面からアリスタルフの頭部を目掛けて、斬り掛かる。


「愚かな……」


「何ッ!?」


アリスタルフはなんの抵抗もしなかった……、そのようにみえた。がしかし、彼の体から――――――。


ガシンッ!


巨大な黒い手が私のストライクの攻撃を受け止めた。


X……ウェポン? これがヤツの…………?


その腕を力ずくに切ろうとするが、ものすごい馬鹿力でこちらの力が及ばない。


「くっ……なんて力なのッ!?」


「驚いたかね? 少し説明するのを忘れていた」


「私のXウェポンは、霊の力を宿すXウェポンだ 当然物体及び形そのものを持たない」


…………ッ! “形がない”Xウェポン? ひょっとして…………。


「それだけではない」


「ま、まさか!?」


物体を持たないXウェポンは、基本的に重力を感じないXウェポン。体の部位に憑依させ、力を宿らせたりして、襲ってきた相手をカウンターで跳ね返す攻撃が特徴。


しかしこれは単なる序の口。 挨拶代わりの力に過ぎない。


最も恐ろしい特徴…………それは。


普通のXウェポンには備わっていない。特殊な能力。


「君でも分かるだろう“霊のXウェポン”には……自由に形を変えられる能力があるッ!」


「しまったッ!」


巨大な手は、徐々に形を変えていく。私のストライクを浸かるように飲み込みながら。


そしてその手は大剣へと形を変えた。そして――――――。


「いいか小娘よ、“斬撃”っていうのはな、こうするんだよッ!!」


グズァァァァァーーーーーーー!!


「がァあ!!」


右腕の肩口にいきよいよく切り込まれ血が吹き出た。そしてそのまま下に叩きつけられる。


「ぐぎぃ!」


酷い体の痛みが走る。身が張り裂けそうな激痛が。


幸い腕は切断されなかったものの、これじゃ今日はまともに斬撃の1回もできないであろう。


同時にストライクを掴んでいた大剣がストライクを手放した。


おかげで体の自由が戻り、身動きができるようになったが……………………。


「グハッ」


口から吐血が出る。下を見下ろすと地面には大量の血塊が。


切り込まれた肩口の亀裂から一滴……一滴……と血が(したた)る。


すると後ろに回っていた政希さんは、背後から、スタードで狙撃する。


「アリスタルフ! 忘れてないだろうな!? スタードは狙撃もできるって事を!」


しかし、その狙撃はアリスタルフのXウェポンに受け止められ、吸収されてしまう。


「想定内だ」


「チッ」


政希さんは端に滑り込むようにアリスタルフからの攻撃を回避した。


「まるでバケモノだな、お前のそのXウェポン」


「素晴らしい力だと思わないか? そして欲しいと思わないか? この力を」


「要らないな、そんな力俺は要らねえ」


「その力どうせ手に入れるんだったら、俺は努力してその力を手にする……お前が俺だったら、俺はそうするぜ」


「政希さん……」


そして私は力を振り絞って立つ。


「蒼衣……」


「右手が駄目なら、左腕に持ち替えればいい話」


私はストライクを右手から左腕に持ち替えた。


「馬鹿な!? 利き手ではない腕でXウェポンを持ち、戦うなんぞ、どうみても“最後のあがき”だな」


「確かに、あなたからみたら自滅行為かも知れない……でも……ねッ!!」


再び私はアリスタルフに斬り掛かる。今度は横の腹部を目掛けて斬り掛かる。


政希さんが戦うなら、私は戦う。それがどんな大敵(たいてき)でも……決して。


勝率が0%でも私は、その僅かな1%の希望をその確率にかける。


だから、私はその1%の希望をかける! 何故ならその先に、私の望む世界がある……そんな気がしたから。


やってみないと分からない。そう……だからこれは、私の“僅かな確率”のかけ…………!


ストライク……私は信じてる。 貴方を、そしてあなたならその確率が引き起こす“奇跡”を呼び起こせる! きっと!


アリスタルフのXウェポンとストライクで鍔迫り合いとなる。


さっきと同じようにアリスタルフはXウェポンをストライクを飲み込もうとする。


「やり方を変えても……結果は同じだ!」


また力に押される。とてつもない力で。


「ここ……までなの……?」


やはり早々“奇跡”を起こすことは不可能だろうか。


私ごときがこんな“奇跡”起こせるはずがない。


でも1度だけでいい、1度だけで…………。


政希さんと私が助かる“奇跡の力”を…………ッ!


私は守りたい……ッ! そして助けたい……! 政希さんを!








すると――――――。







まるで私に応えるようにストライクが反応する。








身体中から力が漲り、体の中のXエナジーが一点に集まるような感じがした。


次の瞬間、体の中のXエナジーの燐光が大量に体から出てきた。


そしてそのXエナジーは、私を包み込んだ。


「こ……これは、もしや」


「ま、まさか……」








「こ、これは……?」


体を見ると、見覚えのない服を着ていた。


青い生地が薄い服。


あれ、こんな服お店で買ったっけ?


そうだ、さっきアリスタルフと鍔迫り合いになって……ん?


なんか体が非常に軽い。無重力にでもいるような感じ。


力がだんだん漲ってくる。溢れかえるぐらいの力だ。


背中を見ると、鳥のような青い翼が2つ付いていた。


試しに力一杯力を出してみよう。


「はぁあああああああ!!」


ドガアアアアアアアアアン!!


アリスタルフを壁へと突き飛ばした。


「こ……これは?」


そうすると、政希さんが私の方へと駆け込んできた。


「蒼衣……」


「政希さん……これは一体」


政希さんは私の肩に手を置いた。


「よくやったぞ……蒼衣」


「えっ」


「それはXエナジーが一点に集合してなる姿! その名も……特殊戦闘形態系(バトル・フォーム)!」


特殊戦闘形態系(バトル・フォーム)……」


「その姿中は空も飛べる、おまけに自分の能力値が2倍だ」


「2…………2倍?」


「体軽いだろ?」


「はい、非常に軽いです」


言われてみれば、本当に軽い。


自分の体とは思えない軽さだ。


元々私は華奢(きゃしゃ)だが、これほど軽くはない。


「それが特殊戦闘形態系(バトル・フォーム)だ、きっとストライクが蒼衣の想いに応えたんだろう」


「いえいえ、政希さんのお陰ですよ」


「俺のって……それってどういうことだ?」


政希さんは照れくさそうな顔でそっぽをむいた。


「いてて……」


アリスタルフが立ち上がった。


力一杯突き飛ばしたはずが、どうも倒すまでには至らなかったようだ。


アリスタルフをみると、さっき斬りつけた大きな切り跡服にしっかりと残っている。


「見くびった……よ まさか特殊戦闘形態系(バトル・フォーム)が発動するなんてな……」


「アリスタルフ!」

「アリスタルフ!」


「“続きやろうか”と言いたいところだが、あいにく時間切れのようだ」


「どういうことだ?」


「…………! 政希さん!! 上!」


私は天井を指さした。


「………………?」


すると上から物音がし、天井が何者かによって破壊される。


爆発デモ起きたかのような大きな音。


すかさず私は天井を見上げ、空に目を通す。


そしてその“音”の正体は――――――。


「…………あれは」

「…………あれは」


戦闘用の人型マダロイドだった。


アリスタルフはそのマダロイドの手に乗り、その場を立ち去ろうとする。


「待て! 逃げるつもりか!?」


するとアリスタルフは――――――。


「最初に言ったはずだ……あまり時間がないと……」


「……? 黒いロシアの国旗? ひょっとして……今お前が所属しているところって!?」


政希さんはアリスタルフの軍服の右肩に付いていた、国旗に目を付けた。


“黒いロシアの国旗”…………? 聞いたことも見たこともない。


それってさっき政希さんの話から出てきた“反ロシア”の国旗か?


「そうだよ、私こそ反ロシアの主導者 アリスタルフ・モシリスト……だ……それじゃあな」


「最後に蒼衣と言ったか…… 君…… 上の名前は?」


「東城……東城蒼衣」


「東城……あぁなるほどな」


「なら、東城蒼衣、その命あずける それまで技量をせいぜい磨きあげることだな……」


「それでは、さらばだ」


するとアリスタルフはマダロイドに乗り込み、その場から姿を消した。


最後の彼の発言から、まるでアリスタルフは私を知っているかのように思えた。


彼が私のどこまで知っているかは検討もつかないけど。


けど、僅かな予想だが、私とアリスタルフは“赤の他人”という関係ではなさそうだ。


「ま…………て」


「蒼衣?」


急に目眩がして意識が遠くなりそうな感覚になった。徐々に視界ぼやけて見える。




「蒼衣……しっかりしろ蒼衣!」


そして――――――次の瞬間、私は意識を失った。

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